一日目はこんなところで
須藤さんが放ったであろう火柱が納まるのを見届けた後、俺たちはワイルドオークジェネラルを含むすべてのワイルドオークを回収し終わった。
そして残ったのはワイルドオークジェネラルが両手で振り回していたウォーハンマー。すでにオーラは掻き消えているからゴーストウェポンとしての命は尽きている。
「ふむ」
「フム?」
ふと興味を持ちウォーハンマーの柄を片手で掴み、持ち上げてみる。中々ずっしりとした重みを感じるが振り回せないほどではない。オーロラに少し離れるように伝えてから試しに一振り。ふむふむ、吽形よりも長く取り扱いは少し難しいかもしれないが、悪くないかもしれない。
思えば俺の攻撃手段はトネリコの弓での射撃。吽形での斬撃と打撃に関しては用意がなかったな。いや、並大抵のモンスターであればこの拳でイケるのだが。実際に普通のオークジェネラルの鎧を手刀でぶち抜いたことあったし。
それでも手は可能な限り傷つけない方がいい。めちゃくちゃ固い鉱物のようなモンスターが現れる可能性だってあるからね。それを見越すのであればこのウォーハンマーはいい機会なのかもしれない。メイン武器とまではいかないが、サブ武器にして手元に置いておくか。まずは冒険者組合に預けなきゃいけないとは思うけど。
あっ、ヤドリギの矢については番外ね。ヤドリギはやらせれば刺斬打全部やれるだろうからな。比べるだけ無駄というやつだ。本当に助かってます。
ウォーハンマーの処遇について決まったところでスマホを取り出し今の時刻を確認する。10時過ぎか……潜ってから2時間くらい経過していたのか。であれば今日はあと1時間くらい探索すりゃ十分だろうな。
「あとちょっと頑張ろうかオーロラ。これを終えたら宿泊の場所聞いて街に繰り出して北海道グルメだ!」
「オー!」
気合いの掛け声をあげるオーロラを微笑ましく思っていると、何か視界に……あっ、撮影ドローンだ。そういやダンジョン入場前に起動させていたの忘れていた。ってか本当に邪魔にならない程度についてきて撮影するんだな、流石高性能だわな。
一瞬カメラに向かって手を振りそうになったが、これを見るのがダンジョン省の人間だと思い出し、止めた。うん、恥ずかしい。
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「はい、ゴーストウェポンにワイルドオーク、それにスノーウルフですね。ありがとうございます。それではこちら一度回収させていただきます。引き取り希望は食用に適した肉とウォーハンマーのゴーストウェポンで間違いないですか?」
「はい、それで問題ないです」
「かしこまりました。それでは撮影ドローンも預からせていただきます。またダンジョンに潜る際にお渡しさせていただきますね」
一時間後、今日分の探索を終えた俺たちは早速、今日の獲物と撮影ドローンを提出した。無論ゴーストウェポンが首無しのワイルドオークジェネラルを動かしたことについても報告済みだ。
スノーウルフは雪のような白毛をした狼型のモンスターで群れを成す。その体の特徴を生かし、奴らは雪の中に潜み、巧みなチームワークで獲物に襲い掛かるなんとも厄介なモンスターだ。
そんな奴らの死体を回収しているということは当然俺たちも襲われた訳だが――丁度良かったのでウォーハンマーの試運転に付き合ってもらった。だけどすぐにそれが失敗だということに気づいた。
いや、戦えはしたんだよ。飛び掛かってきたスノーウルフを横薙ぎの一撃でゴルフボールよろしくナイスショットできたのは爽快だった。初めの数匹はそれで行けたんだけど如何せん長柄だけあって振った後にそれなりに隙ができる。途中からスノーウルフは仲間が吹き飛ばされた隙を狙って俺の脇腹に噛みつこうとしてたんだよね。
その牙が俺に届く前にオーロラの魔法で妨害されたから俺自身は全くの無傷なんだけど。うん、動きの速い群れに対して使うべきではなかったな。単体のモンスターか、ワイルドオークみたく群れでも少し遅めの奴らでやるべきでした。途中から普通に吽形使いました。
さて、それじゃ提出も終わったことだし泊まる予定の宿泊施設は……すんませーん職員さーん。あ、タクシー手配してくれるんですか?あ、泊まるのこのホテル?え、結構いいところじゃないですか。いいんですか?あ、ホテル併設のビュッフェは無料だけど外で食べる分にはそっちは自費になると。はいはい。OKです。
という訳でタクシーを待っていると、1人掛けの椅子で少々ぐったりしている様子の須藤さんが目に入った。何やってんのと近づいて聞いてみたらタクシーを待っているのだとか。あぁ須藤さんも探索切り上げたのね。そんなに疲れる探索だったのか?
「大変でした……というのも氷烏の群れに目を付けられちゃって」
「ほう」
「素早くチクチクと鬱陶しかったんで、ついちょっと強めの技使っちゃったら疲れちゃいまして」
「アララー」
なるほど、それであの火柱か。……あれでちょっと強めの技なんだな。
聞くところによるとその火柱のせいで過剰に燃やしてしまい、一部素材が使えなかったり食べられなくなってしまい、その後悔もあるのだとか。気持ちは分かる。
「まぁまぁそういうこともあるって。今日は北海道グルメ喰らって飲めばいいさ」
「はい……そうします……ジンギスカンとか食べます……」
そうしなそうしな。俺達もそうするつもりなんだし――お、タクシー来たみたいだな。あ、須藤さんのタクシーも来たんだな。それじゃ、また明日頑張りましょうねということで。
こうしてそれぞれのタクシーに乗り込んだ俺たちは各自が泊まるホテルへと向かって行った。
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「「「あれ?」」」
同じホテルでした。




