幸せのおすそ分け
ミミック三英傑から作られたミミック料理の酒飲み配信翌日、俺は複数のタッパーに各ミミック料理を詰め込んでいた。というのも配信内で発言した「余ったら知り合いにおすそ分け」という言葉に反応してアクションを仕掛けてきた人たちにおすそ分けするためだ。
そのアクションを仕掛けてきた人たちというのは須藤さん、女々さん、ヤマダといった一癖も二癖もある酒飲み面々だ。女々さんはロゼが見たことある封筒を持ってきていたことから何となく察しはついていたが、他2人は配信後に気づいた。
にしても須藤さんは控えめに1通のメッセージだけだったのにヤマダは複数回送り付けてきていたのは……ヤマダらしいといえばそこまでなんだろうけど。
まぁこちらとしては満足するくらいには食べたし(満腹とは言ってない)、おすそ分けするのはやぶさかではない。それにちゃんと要求してきた面々からはちゃんとお返しもくれるって言ってるし。ついで武道さんにもあげるか。こっちは今までのお礼ということで。
「よし、こんなもんか。じゃあポストに入れてくる」
「イッテラッシャーイ!」
「ぴぁー」
さて、まずは女々さんの分だ。女々さんの手紙には封筒と一緒にタッパーをレジ袋にでも入れて俺んちの郵便ポストに入れておくなり傍に置いておけば封筒が鳥に変化して運んでくれるそうだ。……地味に見えて本当に便利だな。
女々さんからのお返しは毎度おなじ魔女の一撃――ではない。いや、女々さんが出し渋ったのではなく、もしまだ魔女の一撃があるようであれば他の酒でも結構です。との提案があったので、女々さんが出している他のお酒について調べたところ"ティータイム"という焼酎を発見。焼酎なのにカタカナ表記という面白さからそれをチョイスさせてもらった。……いや、焼酎なのにティータイムとはこれ如何に。
で、ポストにタッパーは……やっぱり1つだけならまだしも2つ以上となると入らんか。じゃあタッパー入り袋はポストの下に置いて……封筒はポストに入れて、と。人目があると魔法は発動しないそうなので、一旦自宅に戻って扉閉めれば……扉の奥からなんか羽ばたく音が。改めて扉を開けて確認してみればレジ袋が消えている。これでOKだな。
次はヤマダと須藤さん。こちらは2人まとめて須藤さんが受け取る形で構わないと須藤さんから言質をもらっているので、お言葉に甘えてそうさせてもらう。で、受け渡しなんだけど戸中山ダンジョンの例の隠しエリアで行われることに。なんかあそこ密会場所みたいになってないか?まぁ下手に外で会うよかリスクが低いとは俺も思うのでいいのだが。
そうだ。戸中山ダンジョンということであれば、武道さんにもついでに渡せるし丁度いいじゃん。……あれ?なんだろう、今月分はもう会っているはずなのにユグドラシルの顔がよぎる。あぁもう!思い出しちゃったものは仕方ない、ユグドラシルにもおすそ分けするかぁ。
こういう時のためタッパー多く買っておいてよかったよ。さて、引き続き詰め込み作業を……あれ、減ってない?――そこの腹ペコモンスターお2人?なんで部屋の隅っこにいるのかな?外に行っている間にカルーアが動かしたのかぴょんちゃん人形がまるで俺に何かを伝えるかのように2人の方角向いていますが?
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「はい、それじゃこれ例のブツ」
「ありがとうございます!すみません、唐突にお願いしちゃって……」
そういう訳で戸中山ダンジョン。すでに隠しエリアの近くまで来ていた須藤さんを誘って隠しエリア内に入るや否や早速お渡しの儀へ。どうも須藤さん自身もいつかはミミックを――と思っていたそうだが、なかなか縁がなく、そこで俺が食べていることを知って藁にも縋る思いでお願いしたそうだ。
「いやいや、ワイバーンの卵の時いろいろ教えてもらったし」
「いえいえ、それを言ったら私もいろいろ教えてもらってますし……あっ、これお返しという訳じゃないですけど。配信中にスライムで作った水まんじゅうです」
「これはこれはどうも」
須藤さんから渡されたのは、少し小柄なプラスチック容器。その中には透明なカップに入った水まんじゅうが6個も入っていた。水まんじゅうの生地は透明感のある水色をしており、その中には丸いあんこがずっしりと鎮座しており、めちゃくちゃ小さいスライムのように見えなくもない。実際にスライムを使って作っているわけなのだろうが。
「大吟醸とか合いますよ……?」
「ほほう、検討しよう」
「アリガトー!」
いやはやこれはありがたい。甘味はあまり作ろうとしないからなぁ。かといって嫌いという訳でもなく、むしろ好き寄りだからこういうのは本当にうれしい。オーロラも喜んでいるようだ。
んじゃ、受け渡しも済んだことだしここいらで解散――とはならなかった。
「実は今回、ミミック料理をいただきたいというのが第一優先事項だったんですけど、もう一つ、木原さんにお伺いというかお伝えしたいことがありまして……」
「うん?」
「うちの座長――じゃない社長が、もし木原さんの都合とか気分とかお時間とかほんと諸々合えばお会いしたいそうで」
「ほぉ」
座長を言い直しての社長……聞いたことがある。須藤さんが曙りゅーたんとして所属するExStremerには"演血影雅"という名のVtuberがいる。どうにもサーカスの座長をイメージしたキャラクターだそうで、通称はそのまま"座長"と呼ばれているらしい。
ファンの間ではまことしやかに座長=会社の社長なのでは?と噂されているそうだが……須藤さんの口ぶりからして本当だったりするのだろうか。そんな人が俺に会いたいとは何故。
「ええっと、本当に断っても問題ないので!ただ……うーん……その……」
「どしたの須藤さん」
「ドシター?」
「すいません、木原さんが了承しても拒否しても伝えてほしいと言われたことがありまして……その、社長亜人なんです……」
なんか急に爆弾投下されたんですけど。
詰め込み時にユグドラシルを思い浮かべた件。
ユグドラシルの名誉のために追記しておくと、ユグドラシルは本当に何もしてません。単にジョージの良心が揺らいだだけです。




