【ベーシック】箱の中身はなんじゃろな【海】
「そんな訳でね、前回の配信からそんなに日にち開いていないけど山ミミック確保できたからやるね。はぁい皆の衆、ジョージの酒飲みチャンネルの時間だ」
「ハァイ!」
『1日しか開いてないんですがそれは……嬉しいけど』
『確保おめー』
『あっさり言ってるけど約1週間かかってるんだよな。よく追いかけ続けたよ』
「それはまぁ食欲の勝利というか……」
食欲もそうだけど半分は意地もあったりするが、あえて言う必要はないだろう。おそらく視聴者たちにもばれているだろうし。
いやしかし長かった……これほどまでに時間がかかった食材は類を見ない。しかも原因が運だから如何ともし難い。まぁそれも山ミミックを確保したことで終幕となった。あとは調理――は済んでいるので食べるだけだ!
『で、テーブルの上には何もないわけだけど』
『もしかして嘘ついた?』
「嘘なんてつかないつかない。俺が今まで視聴者たちに嘘ついたことあるか?」
『絶対ある』
『確信はないけど絶対ごまかしたり微妙に嘘混ぜてるところある』
「ハイエルフウソツカナイ!」
「妖精女王もウソツカナイ!」
いかんいかん……視聴者たちめ俺が節々に嘘混ぜていることに何となく察しがついているな?こっそり配信内の食材にマンドラゴラ混ぜたりハイエルフのスペックだとか……まぁ確信はしていないみたいだからオーロラと一緒に満面の笑みで誤魔化しておこう。
さて、話はミミック料理に戻す。机の上にはパソコンや配信機材を除くとそれぞれの食器があるくらいで、ミミックは影も形もない。もちろんこれには理由がある。
「今回の料理って結構ミミックの見た目そのまま残しているからデカいんだよ。だから1回お披露目で全体像を見せてから一部は裏で解体してそれを食べるって感じ」
『ミミックって大体両手で抱えるほどあるもんな』
『え、あれをそのまま……?』
「んじゃ、1つずつ持ってくるからちょっと待っててな。あ、オーロラ机にキッチンペーパー敷いといてー」
「ハーイ!」
そんな流れでまず持ってきたのは――白くてデカい塊。結構重さがあるので、机に置いた瞬間、ゴトンとちょっと大きな音が出てしまったが、まぁご愛敬。そんなデカい塊を見た視聴者たちは……混乱するよね。出てきたのは見るからにミミックではないものなんだから。
『何これは』
『やはりミミックは嘘だったのでは……?』
「嘘じゃないってば。ほら、見てろよー?――てい」
そんな我ながら気の抜けた掛け声で振り下ろしたのは手刀打ち――いわゆるチョップだ。それを白い物体に当てると、直撃した地点を起点に罅が入る。その罅が少しずつ広がっていくに連れ、白い物もボロボロと剝がれていく。白い物が剥がれた後には茶色い何かがのぞき見え、やがてすべて剥がれ落ちた先に現れたものとは――!
『ミミッ――クかこれ?』
『なにこのやる気のないデザイン』
『デザイナー呼んで来い。説教してやる!』
「あ、そっちに注目するんだ。気持ちわかるけども」
俺としては白い物体からミミックが出てきたことに驚いてほしかったのだが、どうやらミミックのデザインの方に気持ちが行ってしまったようだ。宝箱というにはあまりにもな見た目だから仕方ないところではあるのだろうが。
『塩釜焼き?』
「正解ー、ベーシックミミックの塩釜焼きだ。いやぁこのサイズの塩釜包ませて焼くの大変だったよ」
『どれくらいの塩使ったんだよ……』
「まぁ、うん。聞かぬが仏ということで」
塩釜焼きとは塩や卵白を混ぜた塩釜と呼ばれるもので食材を包んで加熱調理する方法だ。有名なのがお祝い事に出される鯛の塩釜焼きだろうな。いやぁベーシックミミックは宝箱部分も食用と聞いてからこの調理法を試したかったのだが……まぁサイズよ。労力で言うならこれが一番かかったな。
包むのもそうだが、加熱がね……キッチンのオーブンレンジに入るわけもなかったので頑張って庭で作りました。
『へぇ手が込んでるんだなぁ』
『食えるんか……宝箱部分……』
『そもそもミミック食おうとするやつが稀』
『そりゃ見えてる地雷を踏みに行くやつはおらんわな』
『あの、ミミックとかの衝撃でみんな忘れてるけどジョージ今素手のワンパンで塩釜砕いた?普通木槌とか肉叩きで砕くのでは?』
『あ』
『あ』
『あ』
「……いやほら、一番手っ取り早いからね?――あ、もしかして衛生面!?安心しろ事前に手は洗ってるから!杞憂民もニッコリだね!んじゃ次行こうな!」
そうして俺は逃げるようにベーシックミミックの塩釜焼きを持って次の料理を持ってくるべくキッチンへ向かった。あ、オーロラ今度は鍋敷きよろしく。
はい、ゴトンと案の定音を立てて鍋敷きの上に置いたのはやはりミミック。今度は塩釜でものっぺりデザインのものでもなく一般的な宝箱のデザインそのままだったためか、どこか安心したようなコメントが流れる。
そして俺は蓋部分に手をかけ――
「はい、それじゃ御開帳!」
「カイチョー!」
『おおおおおおおおおお!』
『あー鍋か!』
そう、第二のミミック料理は海ミミックで作ったミミック鍋だ。海ミミックの宝箱部分は食べることはできないが、丈夫で熱伝導率も高いのでこんな使い方ができる。ちなみに中身は、海ミミックの可食部とミミックアンコウなどの具材を入れた海鮮鍋だ。まぁ海ミミックの可食部はほぼカニだからカニ鍋といっても差支えはないな。
『こっちは普通においしそう』
『なんでこれを先に持ってこなかったんだ』
「気分」
『さ、さいで……』
『熱せられてるはずなのに素手……』
『慣れるんだ』
『アッハイ』
山ミミックお披露目は次回




