沼
苦心の末、韮間ダンジョンのミミック確保が完了した。ベーシックダンジョンミミックの確保が完了するとどうなる?知らんのか。海ダンジョンミミック捜索が始まる。
なんてネタを声には出さずに頭の中で繰り広げる。これも全部滅多に出現しないミミックが悪いんだ、そうに違いない。
「ミミック選んだジョージのセイでは?」
「否定できない」
相模浜ダンジョン2日目――さすがに泊まり込みはせずに連日で潜っているのだが……いやぁ出ない出ない。幸い相模浜ダンジョンでは美味しいモンスターには事欠かないからそこらのモンスターを狩っているだけでプラスになる。
だからと言っていつまでもいたいという訳ではないのだが。
まぁ腐ったところでしょうがないので、目を皿のようにして探したり強いモンスターに挑んだりする。ここらで強いモンスターとなると剣王イカとか追跡ガツオとかか。また"戦艦"のような個体が現れてくれれば幾分か宝箱ひいてはミミックが出やすくなるというものなんだけどな。
「あ、ジョージジャーキー浮いてる」
「ホントだ、大葉が浮いてら」
会話が嚙み合っていないように見えるだろうが、間違っていないんだよな。オーロラが自身の好物であるジャーキーだと指差す先には俺の好物である大葉が海中にふわふわと浮いている光景が見える。
こいつは以前にも狩ったことがあるミミックはミミックでもミミックアンコウと呼ばれる全く別のモンスターだ。ちょうどクジラとクジラウオみたいな感じか?
ミミックアンコウの疑似餌は見たものの好物を写し取る能力があり、それに寄って来た獲物を喰らうという生態がある。
そこらのモンスターであればそれなりに引っかかるのだろうが、人間からしたらいきなり海中にカレーライスが現れたりなど違和感マシマシな光景が広がったりするので騙されるものは少ない。全くいないとしてるのはたまーに宝石が見えて襲われる人がいるみたいなのだ。いや、宝石でも違和感持てよ。
「ドウする?ヤッチャウ?」
「やっちゃうやっちゃう。海ミミックの料理に使いたいからな」
哀れ、ミミックアンコウの攻略方法は熟知している。特に描写が必要なほど苦戦することなく、あっさりと戦闘を終わらせることができた。せめて美味しく食べてやるからな……!!
ところで、名前にミミックが入っているということで本家本元のミミックさんが出現したりなんて……はい、しないですよね。ンな美味い話はないですよね。わかっていましたよ。
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「出たぁ、ようやく出たぁ!」
「ツギ、トナカヤマあるよ?」
「言わないでオーロラぁ!」
最初のミミックアンコウ討伐してから3時間が経過したころ、ようやくモンスターの気配を感じる宝箱を発見することができた。自宅から相模浜ダンジョンへの移動時間を考えるとそろそろ帰らなきゃいけないぐらいの時刻だったのだが……ようやく来てくれた。
あ、最初のってどういう意味かって?4体ほど見つけましたよミミックアンコウ。2体目以降は処理しきれないだろうから卸すつもりだけどね。にしても物欲センサー働いてるんじゃないかと思えるくらいミミックアンコウ出たよな……
まぁ済んだことはもういいだろう。今大事なのは海ダンジョンミミックだ。
海ダンジョンミミック、通称海ミミックは宝箱を含めて肉体のベーシックミミックと異なり、宝箱を住処としているモンスターだ。近い生態だとヤドカリとかタコとかかな?実際海ミミックの外見はその2つを掛け合わせたような見た目をしている。
「ジョージ、ワタシが仕掛けてもイイ?」
「おぉ、いいぞ」
開封係にオーロラが立候補。特にやめさせる理由はないので、任せることにした。魔法で少し大きめな氷弾を作り出すとポイっと海ミミックにぶつける。あの、オーロラさん?結構激し目な音しましたけど?ミミックの宝箱は頑丈とはいえ、もうちょっと抑えてもろて。
ただ、刺激を与えることには成功したようだ。宝箱がガタガタと震えだすと勢いよく蓋が開きそこから先端にカニのような爪がついた8本の触手がうねり出てきた。それに続いてタコのような頭部がヌッと現れて自宅に激しいノックをした犯人であるオーロラを睨みつけ――一心不乱に触手をぶんぶん振り回し始めた。
「キャー!」
なんてオーロラは言っているが、その声自体は緊張感のない楽し気なものとなっている。でもあの触手カニの甲羅のような装甲ついておきながらしなやかに曲がるから当たったらめっちゃ痛いらしいんだよな。それを振り回す猛攻を笑いながら躱すとは……さすがオーロラ、やりおる。
まぁ海ミミックの体力も無尽蔵という訳ではない。むしろ怒りに身を任せた攻撃なんてすぐに限界が……あぁ来たようだ。肩で息をするかのようにタコっぽい頭が膨らんだり縮んだりして少々面白い。
えーっと、確かタコ同様に目の間に脳があるからそこを刺せばいいんだっけか。でも、殻に覆われているからそんじょそこらの針は通らない――と。はい。
「"海ミミック〆て"」
「オテガル」
困ったときのヤドリギ先生。一度願って投げてしまえばこの通り、特に海ミミックを損傷させることなく最小限の一撃で海ミミックを〆てくれました。……やっぱり最高だよヤドリギの矢……!
こうして念願の海ミミックを狩ることができた俺たちはルンルン気分で帰路についた。
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戸中山ダンジョン5日目――の夜、自宅での配信にて
「悪いやっぱ辛えわ」
『言えたじゃねぇか』
『聞けてよかった』
ちなみにベーシックミミックと海ミミックはしっかり冷凍保存してるので大丈夫です




