一番それじゃないと思ってました
「オヤブーン」
「親分いるかー?」
というわけで魔女2人を連れてやってきました、我が家のお庭にあるマンドラゴラ畑。――しかし、一度は言い分を理解して連れてきておいてなんだが、素材側においしい酒を造るヒントを聞くというのは結構謎だな?
お目当ての親分はというと……あ、いたいた。植木鉢から這い出、寝転び日向ぼっこしながらクライナー飲んでやがる。いやぁ、なんという堂に入った飲みっぷり。一昔前の休日のお父さんかよ。
「酒飲みばかりいますね、この家」
「否定はしないけど酒飲みしかいないことはないから」
ロゼはまだ赤ちゃんだし、カルーアは魚だしぴょんちゃんに憑依したとしても結局は人形なので飲食するための口はないから酒は飲まない。……もしかして魚状態のときに飲んでたりするのだろうか。今度聞いてみるか。
閑話休題、早速話を聞くためにいい気分で飲んだくれている親分を抱え上げ、女々さんの元へと連行する。連れられたことでようやく魔女2人が庭に来ていたことに気づいたようで親分は片腕をあげて「ピギッ」とあいさつをする。それに対して女々さんは深々と頭を下げて挨拶を返した。
「お久しぶりです、親分さん。今日は先日いただいたマンドラゴラで作ったお酒について親分さんに助言をいただきたく」
「ピギ?」
「こちらです」
収納魔法から取り出したのはすでにカップに注がれていたマンドラゴラ酒。女々さんはそれを俺の腕の中でおとなしくしている親分に手渡す。
自分が厳選したマンドラゴラを使って製造されたマンドラゴラ酒を前に、親分はというと――まずジッと見る。上から見たり下から見たり、日光にかざしてみたり顔を近づけてスンスンと――いや待て?お前「∵」な顔なのに鼻あるのか?嗅覚あるのか?
そうして小一時間マンドラゴラ酒を観察し、最後にマンドラゴラ酒を一口。また一口。やがて全部飲み干し親分は腕を組み、じっと考えているようなポーズをとる。
それを女々さんは固唾を飲んで見守る。見た目の若さがそうさせるのだろうが、その様はまさに受験の結果発表を待つ学生のようだ。
どれくらいの時間が経っただろうか、俺としてはそろそろ親分を地面に降ろしたいのだがそんな雰囲気ではなさそう。オーロラは飽きて大葉の収穫し始めてくれてるし、ロゼと麻鬼要はボール遊びに勤しみ始めた。
「ピッ!!!」
「あ、長考終わった?オーロラ、カムヒア」
「ハーイ!」
どうやら考えがまとまったようだ。俺だと大まかな内容はわかっても細かいところまでは翻訳することはできないからオーロラを呼ぶ。え?あぁ、はいはい収穫した大葉ね、ありがとう。決めた、こいつはウインナーの大葉巻きに使おう。
「んじゃ親分、マンドラゴラ酒はどうだった?」
「ピギッ?」
「ナンデこのお酒にシタノ?だって」
「――え?」
オーロラの言葉――正確にはオーロラが翻訳した親分の言葉に女々さんは目を瞬かせて声を上げる。
親分曰く、確かにこのマンドラゴラ酒は美味しいが、この酒のタイプだとどうしても薬効寄りになってしまい味が犠牲になってしまう。
「そ、そんな……一番作り慣れている日本酒で作ったのがそもそもの間違い……!?」
「ゎ、おばあちゃんのあんな絶望した顔、晩酌最後の一杯になったときくらいしか見たことない」
「割と絶望してんのな」
というか、酒の種類で薬効寄りになるとかあるのかよ。本当に意味わからんな、マンドラゴラ。
だが、親分の証言だと日本酒ではない酒であればマンドラゴラの味を十分に発揮できる酒があるとも取れる。親分にそのことを確認してみるとすごいあっさりと頷いて肯定してくれた。
「あ、んじゃそのお酒教えて――」
「待ってください木原さん!」
あげればと言おうとしたところ、女々さんからの静止の声が飛ぶ。
「せめて、せめて私に当てさせてください……!クイズ形式で……!」
「あ、答えを聞かずに他の酒を製造するとかじゃないんですね」
「費用や時間は無限ではないので……」
うん、それはそう。
いくら魔女の力を持つ蔵人でも無から酒を生み出せるわけがない。マンドラゴラをはじめとする材料が必要だし、酒はものによっては多大な時間を要する。すぐに正解にたどり着けば問題ないかもしれないが、一つ一つ作って答え合わせをしたのではキリがない。
「ワイン!」
「ピ」
「チガウって」
「焼酎!」
「ピ」
「チガウ」
「ウイスキー!」
「ピ」
「あ、すみませんオーロラさん。この『ピ』は違うの『ピ』ですよね。もう大丈夫です、別のこと言っていただけたら教えてください」
「イイヨー!」
「ラム酒!」
「ピ」
「なんだこれ」
「おばあちゃん、熱中してますね」
熱中しているのはいいが、ことごとく外しているの面白いな。本人はいたって真剣だから笑うわけにもいかないが。ただまぁ、女々さんは蔵人ということからあらゆる酒について熟知しているだろう。ゆえにしらみつぶしに回答していけばいずれ答えにたどり着くんじゃないかな。
「紹興酒!」
「ピ」
「テキーラ!」
「ピ」
「ええっと……ビール!」
「ピギッ!」
「ん?」
「え?」
「あら?」
「ぴぁ?」
「セイカイだって!」
【速報】マンドラゴラでビール作れる




