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落下
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革製の飛行服に着替えたユニアはバルコニーに出た。湯上りの身体に風が心地よかった。
頭上で錆びた大きなプロペラがのんびりと回っている。パンを咥えながらぶかっとした上着の袖をまくる。目の前の空はソーダ瓶みたいに透き通っていた。
ずっと下の暗い空を見下ろすと巨大な暗斑が見える。暗斑は空に現れる一層暗い部分だった。その中は薄い空気と氷の雲の颶風の中心だった。瞳孔の様に暗く見え、ゆっくりとその縁が動いている事で回っているのが分かる。
ユニアはふうっとため息をする。背中の反重力装置は意識するまでもなく起動し、身体に穴が空いた感覚がする。左手につけた機器の指針を確認すると、ユニアは柵を蹴り出して空に飛び降りた。
耳のそばを風が切っていき、血液が息を潜め体温が下がる。力を抜いた身体は重力に捉えられ加速しながら沈んでいく。