鏡に貼られたおふだを剥がすと未来が見える
私が生まれた実家の屋根裏部屋には不思議な鏡があった。
誰も貼って無いのに何時の間にか鏡におふだが貼られていて、そのおふだを剥がすと剥がした人の未来が見える鏡。
私の両親は女の子が欲しいと願ったけど年子で生まれた上の2人は男の子、でも悲観はしてなかった。
結婚前に鏡のおふだを剥がしたら、スカイブルーとマリンブルーのランドセルと一緒にピンクのランドセルが映っていたから。
3番目に生まれたのが女の子の私。
私も幼稚園児の頃、何気なくおふだを剥がし鏡を覗いた事がある。
でも鏡に映っていたのは、黄色い花の間から見える赤い屋根の家だけだった。
意味が分からずそれっきり鏡に興味は無くなる。
お兄ちゃんたちはおふだを剥がして鏡を覗いては一喜一憂していたけど。
小学校に入学してから少子化の影響で行われた町の2つの小学校の合同体育祭で、同じ学年のポーカーフェイの男の子と仲良くなった。
後で聞いたら、私にデレデレ顔を見られたく無くてポーカーフェイスに徹していたんだって。
通っていた小学校は違ったけど、彼とは一緒に遊んだり図書館で勉強したりするようになる。
テストの選択問題が分からない時はどうするのって聞いたら、私と同じくえんぴつを転がして選ぶと返事され同じダァーって2人で笑い転げた。
中学生になると町に1つしか無い中学校に通うようになる。
同じ学校に通えるようになった私たちは学校の帰りに待ち合わせして、バス停の近くの公園でバスが来る時間まで、夜空の星座を見上げながら缶コーヒーを飲みお喋りするのが日課になった。
隣街の高校に一緒に合格して高校生になった私たち。
高校生になって初めての夏休みに隣街の大きな神社で行われている夏祭りに行く。
その帰り何時も利用しているバス停の2つ程手前のバス停でバスを下り、とりどめのない話しをしながら人気の無い川沿いの道を歩く。
2人一緒に立ち止まり顔を見合わせた私たちは、夜空に瞬く沢山の星に見られながら初めてのキスをした。
初めてのキスをしてから八年、私と彼は結婚してひまわり畑に囲まれた土地に家を建てる。
赤い屋根の一軒家。
彼と一緒にスーパーに買い物に出かけた帰り道、遠くに見える黄色いひまわりに囲まれて見える赤い屋根の我が家。
我が家を見て思い出す、幼稚園児のときに見た鏡の中の風景はこれだったのだなと。