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関東のどこか。
突然、各所に出現した怨夢への入り口が消えてしまった。
「な、何⁉ 何が起きたのよ⁉」
「まだ討伐隊が中にいるぞ⁉」
「うちの隊員の魂もまだ中にいるんだぞ‼」
「怨夢が崩壊したのか⁉」
「でも、その様子はなかったよ⁉」
「じゃあ何で入り口が消えたんだ‼」
「知らないわよ‼」
周囲にいた医療隊と諜報隊が騒ぐ。
「誰か、内部の討伐隊と連絡取れる者はいるか⁉」
諜報隊の誰か、冷静な者が周囲に訊く。
「こ、こっちは繋がらない!」
「私の方は連絡取れました!」
連絡は取れた。少なくとも、怨夢は崩壊していないようだ。
◆◇◆
「な、何だよ⁉ 何がどうなってるんだ⁉」
関東内に発生した怨夢の中。
ある討伐隊士達は、周囲を見回して状況を飲み込もうとしていた。
「俺ら、ちゃんと怨夢から出たよな?」
「ああ。確かに入り口から出た」
怨夢は生死の境にできるものの、入り口は生前の世界にできる。怨夢から出たら、普通は生前の世界に出るはずである。
しかし彼らは、どういうわけか別の怨夢に入ってしまったのだった。
◆◇◆
「宮町です! 怨夢発見! 場所は瑞昭寺!」
とある諜報隊士は、現世見廻中に怨夢を発見した。さっそく自分が所属する隊の隊長に通信鏡で連絡しておく。
幾人かの諜報隊士が集まったところで、入り口に入った。
「公園か? ずいぶん広いな」
怨夢は、今までに見た事のないほどの広さだった。
「おい。あそこにも入り口がある」
鉄棒を指差す。鉄棒をくぐった先は、別の景色だった。
「別の怨夢のか?」
そう思い、一部の諜報隊士が鉄棒を潜る。
そこは、別のだだっ広い公園だった。
「……俺、嫌な予感がするんだが」
「奇遇だな。俺もだ」
彼らの嫌な予感は当たった。
たった一つをとっても広大。これが複数出現した。
これが疲労による幻覚や、ただの夢だったらどんなに良かった事か。
◆◇◆
「なんだと⁉」
ある諜報隊隊長はある報告を受け、驚愕した。
その報告は、先程発生した超特大怨夢の中で小さな別の怨夢を発見。中から出てきた討伐隊士の話によると、超特大怨夢よりも前に発生した怨夢らしい。
この事から、ある事が推察できる。
それは、超特大怨夢が小さな怨夢を取り込んだ事。超特大怨夢の大きさ的に、取り込まれたのは一つや二つではない。おそらく、関東に出現した怨夢のほとんどだろう。
そして、その中には化穢や穢憑きがいる。自分が把握しているだけでも、十体は化穢がいる。超特大怨夢の中には、確実にそれ以上は存在しているだろう。
同じ怨夢の中に、十体以上の化穢がいるという事になる。
その後、さらに追加でもう一つ、人外界に怨夢の入り口を発見したと、部下から報告が入った。
◆◇◆
「!」
花耶の肩に黒トンボが止まった。
「任務か?」
「ん」
花耶が頷いた時、周りがわずかに暗くなった。
人によっては、ほとんど気づかないか、気にも止めない程度だろう。
現世見廻を先輩と交代してもらおうと、通信鏡を開いた時だった。
「⁉」
「うぉわ⁉ 何あれ⁉」
空を覆い尽くすのではないかと不安になるほど、大量の黒トンボが飛んでいた。




