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 灼と花耶が振り返ると、背筋が凍るほどの気迫を放つ老人がいた。

 思わず二人は、互いを庇えるように身構える。

 しかし、攻撃がくる事はなかった。先程の一撃は、怒りで体力を振り絞った物だったのだろう。

 蛍原の体が、ぐらりと傾ぐ。

 花耶は咄嗟に支えたが、重い。灼も加わり、ゆっくりと地面に横にした。

「止血……」

 花耶は異空鞄から包帯を出し、手当てをしなおした。


「……っ」

 灼は複雑な気持ちになり、蛍原から目を背け、清道の魂を回収する。

(確かにオレは、そこのジジイと妖怪達に殺された。許せるかって言われたら、絶対に無理。でも)

 清道の魂を握る手に、力が入る。

(元々、こいつの親がジジイの孫を誘拐して、目玉を盗った。こいつも罪悪感はなくて、むしろ自慢してた。おまけに、親がしでかした事と同じ事をやってたっぽい)

 戦闘の最中、『政府に認可されてからは、ちゃんと説明をした上で希望者にのみ移植しております』と言っていた。つまり、その前は説明すらなく妖怪の体の一部を人間に移植していたと言う事だ。

 自分が妖怪を恨んだように、人間を恨んでも仕方ない事をされたのだ。

 以前、花耶に『妖怪はみんなクズじゃない。優しい人いる。人間と同じ』と言われた。

 灼は今まで、ごく少数の優しい例外がいるだけで、ほぼ全ての妖怪は人殺しに躊躇も罪悪感も沸かない残虐なサイコパスだと思っていた。

 しかし、本当は躊躇も罪悪感も沸かなくなるほど酷い目に遭ったからではないだろうか。

 花耶の言うように、妖怪も人間も同じだったのではないだろうか。


 灼の価値観は、大きく揺らいだ。


◆◇◆


 その後、医療隊士が駆けつけて蛍原に快癒を施した。

 蛍原は一命を取り止めたが、手遅れ寸前だったとの事。後遺症は確実に残り、もう戦える体ではなくなった。

十二章に続きます。

また、プロットの見直しと修正の為、来週は投稿をお休みします。

十二章1話は12月18日に投稿したいと思っております。



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