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早めに書き終わったので、前回の後書き、活動報告の通りに本日投稿します。

次話から日曜日投稿に戻ります。

日付を間違えてしまい、申し訳ありません。

 朝礼で、こんな報せが雪音から発表された。

「だいたい一ヶ月後、妖怪が人間界に攻め入る事がほぼ確定しました」

 第一討伐隊士達に緊張が走る。

 一部の、昔から黄泉軍に所属している隊士達は緊張というより、緊迫しているようにも見えた。おそらく、第二次世界大戦の事を思い出したのだろう。

「戦場は日本全土。その間、まともな休日も取れない可能性もあります。本日より、本格的に訓練内容が強化されます。皆さん、しっかりと訓練に励み、休日は今の内にしっかりと休んでください」

 その後、仕事の割り振りをして朝礼を終了した。


◆◇◆


「お前ら、休日は休むのもいいけど予定とかはできるだけ前倒しにした方がいいぞ」

 花耶達は御崎に言われた。

「なんでですか?」

「一ヶ月はあくまで目安で、早まる可能性もある。それに、休日はないどころかブラック企業並の労働時間だから」

 春介の質問に答え、御崎は自身が死徒として体験した唯一の戦争、第二次世界大戦の話をした。

 六人は、ドン引きした。

「に、二十時間越え労働……」

「しかも、飯も移動しながら……」

「まぁ、第二次世界大戦は特に忙しかったらしいからな。さすがに、座って飯食う時間くらいはあるだろ」

 御崎は灼と愛梨にフォローするが、千絃は異議申し立てした。

「それでも、お給金以外はブラック企業よりひどいじゃないですか!」

 確かに、給料だけはしっかりと出る。しかし、ブラック企業よりましなのはそれだけだった。

 戦時中は休日なしの二十時間越え労働。仮眠は一時間だけ交代で取れるものの、食事ですらゆっくりできない。それほど仕事量は何倍にも増え、安全なはずの現世見廻ですら流れ弾で命を落とす危険もある。


 そして、死んだら待っているのは蘇生術という拷問。

「しんだらそせいじゅつ……」

「けっそんしてもそせいじゅつ……」

「なんかいも、そせいじゅつ……」

 春介、蓮、花耶は戦慄していた。

「三人とも、どうしたの?」

「あー。蓮と春介は、死んだ直後に一週間くらい地獄堕ちてんだよ。極寒地獄に喧嘩で」

 心配そうにしている千絃に、御崎が教える。

「ぅえ⁉」

「一週間もあんなところにですか⁉」

 灼と愛梨は、地獄に行った事がある。灼は無罪になったものの、裁判を受けに。愛梨は元先輩達がしでかした犯罪の参考人として聴取を受けに。

 遠目ではあったが、灼熱地獄や毒棘地獄などを見た。惨い光景だった。

 軽い罪で一週間ですんだとはいえ、トラウマになってもおかしくない。実際、何回か死んだのだろう。でないと、蘇生術という単語を聞いただけでガチ震いするほど怯えない。


「って言うか、喧嘩でそんなとこ堕ちるんすか?」

「普通じゃ堕ちないんだけどさぁ、俺が止めに入ったら蹴りと拳が誤爆してあばら砕かれた」

「「「ひぇ」」」

 灼、愛梨、千絃は短い悲鳴をあげた。

 亡者としては軽傷に入るが、痛覚は生者と同じ。死ぬほど痛かっただろう。

 死んだ直後で黄泉軍には入っていないらしいので、公務執行妨害といったところだろうか。極寒地獄だったのは「頭を冷やしてこい」と遠回しに叱っているつもりだろう。

 ……頭を冷やすどころか、凍死しているが。

「あの時は、本当にすみませんでした」

「すみませんっした」

 春介と蓮は頭を下げて謝罪した。

「いいよいいよ。何年も前だし、詫びにハーゲンダッツ全種類奢ってもらったし」

 すでに和解済みのようだ。


「でも、花耶が蘇生術を知ってるのは意外だなぁ」

「そう言えば……。何で?」

「お前、地獄に堕ちた事あるのか?」

「んん」

 千絃と蓮の質問に、花耶は首を横に振った。

「私の、師匠、獄卒」

「そう言えば、黄泉軍に入るのを反対する僕を黙らせるために、特訓をしてたんだっけ?」

 千絃は眉根を寄せる。おそらく、地獄にクレームを入れたくなるような感じの嫌な予感がしたのだろう。

 花耶は、目をそらした。

 修行したとは前に話したが、どれくらい厳しい修行だったのか、内容まではあえて話していない。

「言いなさい。花耶」

 千絃の、威圧感たっぷりの声に耐えられなくなったのだろう。花耶は、重い口を開いた。

「修行で、爆死したり、圧死したり、毒で死んだり、溶けたり、手足、なくしたり、して、蘇生術……」

「どんな猟奇的殺人鬼に弟子入りしたんだよ」

 蓮がツッコミを入れる。

 物理的に粉骨砕身の修行を受けたようだ。

 千絃は、地獄にクレーム入れるとともにその気違いな猟奇的殺人鬼に出会った瞬間、脳幹に痺雷針を四、五発かましてやると心に誓った。


「でも、蘇生術ってそんなにキツいんすか?」

「「「きっっっっつい」」」

 灼が訊くと、春介、蓮、御崎の三人はどよんとした表情で言った。花耶は何も言わなかったが、目が死んでいた。

「全身に一本一本隙間なく、錆びて表面がザラザラしてるぶっとい釘を打ちつけられた上で、また引っこ抜いた後で、傷口にカラシとか塩とか粉唐辛子を念入りに摩り込まれるような痛みがほぼ同時に襲ってくるぜ」

「カチカチ山の、火傷に唐辛子味噌を塗りたくられた狸を疑似体験できるんじゃないかなぁ。あれ」

「股間を鉄バットでフルスイングされる方が数十倍はマシだな。あれは」

 それを聞いた、蘇生術未経験トリオは真っ青になった。

「こ、こかんのすうじうばい……」

 灼は思い出した。悪戯や投稿動画用のアクロバット技が失敗した時に、魂にまで刻み込まれた、会心の一撃を。

「「ぴぇええええ……っ‼」」

 千絃と愛梨にいたっては、恐怖のあまり花耶を抱き潰さんばかりにサンドして弱々しい悲鳴をあげた。

「それだけじゃあねぇ」

「まだあるんすか」

 すでにお腹いっぱいだが、蓮は続ける。

「痛みがやっと引いたと思ったら、全身の血管をミミズが這いずり回るみてぇな不快感がくるぜ」

「――ッ!」

 激痛描写で満腹になったものが、吐き気という形で込み上げてくる愛梨だった。


「……花耶」

「ん?」

 小首をかしげる花耶の肩を、千絃はがっしりと掴んだ。

 その表情は、鬼気迫るものがあった。それほど蘇生術はヤバい、もう二度と味わわせてはならないと思ったのだろう。

「いつも言ってるけど、戦時中は特に、絶対、何があっても、無茶だけはしないでね⁉」

「ん。分かった」

「危なかったら全力で逃げるんだよ⁉」

「ん。分かった」

「約束だよ⁉」

「ん。分かった」

「誰かの盾になるのも駄目だからね⁉」

「善処する」

 最後は守れる自信がないので、努力するとだけ言っておいた。


「まぁ何にせよ、蘇生術受けたくなかったらいつも以上に気をつける事。それと、戦時中はまともな休みもないから今の内にしっかり休む事。休み優先だけど、予定とかはできる限り前倒しで済ますこと。先輩からのアドバイスだ」

「「「「「「はい」」」」」」

 六人はしっかりと頷いた。

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