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「愛梨ー」

 灼は愛梨に声をかけた。いつもの護衛である。

「あれ? 灼、花耶先輩は?」

「化穢討伐だってさ」

「そっかぁ」

 さすがに戦時中と戦後直後ほどではないが、死徒は人手不足気味。さらに化穢討伐は、最悪の場合魂が消滅する可能性があるため、最低でも四人一組で任務に当たらなくてはならない。その上、花耶は化穢の天敵である祓穢だ。他の死徒よりも任務をまわされる順位は高い。

「だから戻ってくるまではなるだけ人の多い場所にいろって、しつこいぐらい言われた」

 灼は、げんなりした顔で言う。嫌な顔はしつつも、人が多そうな訓練場に向かった。


「灼は何で花耶先輩を嫌ってるフリしてるの?」

 愛梨は小首を傾げた。

 ここ数日間、この二人と行動を共にして、ぼんやりとだが関係性が分かってきた。

 花耶は灼を嫌っておらず、むしろ仲良くしたいと思っていそうだ。しかし嫌がる事はしたくないらしく、どう接すればいいのか、分からないように見えた。

 灼にいたっては、パッと見ただけでは嫌っているように見えるが、実際には何らかの理由で意地を張っているように感じた。


「……」

 さすがに言えないのか、灼は視線を反らした。

「…………」

「…………」

「………………」

「………………。実は……」

 愛梨の無言の圧に耐えられなくなったのか、灼は妖怪に殺された事と花耶に対して言った事を話し始めた。


◆◇◆


「うん。その妖怪の人達を憎む気持ちは分かるけど、妖怪差別はよくない」

「だよな……」

 灼はか細い声でがっくりとうなだれた。


「もしかして、妖怪に対して心を開いたら、友達を裏切るような気がするって思ってない?」

「あぁー……。そうかも?」

 愛梨に指摘されて、初めて気がついたようだ。

 灼は妖怪に殺された。友達は、もしかしたら死ぬよりきつい目に合っているかもしれない。

 意地の根底には、そんな不安があった。それなのに、自分達の人生を壊した妖怪と仲良くするなど、できなかった。


「でも、灼は友達や家族を助けたいんでしょ?」

「うん。黄泉軍に入ったのも、それが目的だし……」

「なら、大事な人達と灼の意地のどっちが大事か、分かるよね?」

「……!」

 心の中に、家族やクラスメート達と恩師、そして友人達の顔が浮かぶ。灼の中で、最も優先したいのは大事な者達の幸せだった。

「戦争ともなると、たくさんの妖怪が襲ってくるだろうし、灼一人で守るのは無理。もしかしたら、妖怪の異能も必要になるかもしれない。なら、意地を張らないで、自分が口走った事とかは謝って、助けを求めた方がいいんじゃないかな?」

 現実に起こる事と可能性を提示した上で、今できる事を言う。

 正直、意地は簡単には捨てられない。しかし、どうしても守りたいものがあって、それには意地と相反する行動をしなければならない。

 自らの意地を守るために、大事な者達を見捨てる事などできない。

「分かったっ!」

 灼は大きく頷いた。

「花耶が帰ってきたら、すぐに謝る! それと、そっけない態度とった他の奴にも!」

 目的を再確認した事で、忠告を受け入れられた。


◆◇◆


「本当に、獄卒がうざい」

 訓練場に向かっている途中で、二度と聞きたくない声が聞こえた。

 物陰からこっそり確認すると、三澤達四人がいた。まだこちらには気がついていないようである。

「愛梨、別んとこから行くぞ」

「うん」

 元来た道を引き返そうとした、その時である。


「あの糞亡者が。生者を依り代として紹介してあげたのに金払わないばかりか恩を仇で返しやがって……!」

 という声が聞こえた。


「「……え?」」

 二人とも、思わず声をあげた。あわてて口をふさぎ、四人を覗き見る。

 どうやら、気がついていないようだ。

(これ、ちょっと前に朝礼で言ってたやつ、だよな……?)

 灼の心臓が、ドクドクと脈を打つ。愛梨は、冷や汗をかきながらもボイスレコーダーを起動させた。

 ……二人とも、この時には逃げる事を完全に失念していた。

「だいたい、なんで私達の副業が非難されるの?」

「そうだぉ。生前に未練残した亡者を手助けしてるのにぃ」

「むしろ感謝してほしいわ」

「第一、殺人だの強姦だのしたのは亡者の責任じゃない」

「生者を紹介しただけの私達が、なんで責められるわけ?」

「生者なんて、どうせいつか死ぬんだから生気なくなって死んでも同じじゃない」

 など、どうやら生者依り代事件の首謀者が彼女らで、それについて調べている獄卒に対しての悪態のようだ。

「う、そ、だ、ろ」

 声を潜めながら、噛み締めるように呟く灼。色々な事に驚きすぎて、この一言しか出てこなかった。


「でもどうする? このままだと捕まる可能性あるわよ」

「他の奴も、なんか私達への態度が変だし」

「ったく。バカなりに騙されときゃいいのに。」

 仲間であるはずの第三討伐隊士達への疑心と陰口の中、石井が口を開いた。

「雅楽代にぜ~んぶ! 押しつけちゃうってどぉかなぁ~?」

 詳しい作戦も続けて話す。

「殺して魂だけ取っちゃえば、全身が再生して蘇生するのに二年もかかるでしょぉ? その間に、崩壊する怨夢に置いてきちゃえばぁ、消滅して口封じできるしぃ、私達は「雅楽代ちゃんに脅されてやるしかなかった」って言えば同情して無罪にしてくれると思うんだけどなぁ~?」

「「「それだ!」」」

 三人は口々に賛同した。

「あんた頭いいじゃない!」

「主犯は雅楽代、私達は脅された可哀想な被害者。悪くはないわね」

「今までずっと世話してきたんだもん。罪を被って消えるくらい、お礼としては当然だよねっ!」

 反対する者はいないようだ。


「――‼」

 ガクッと、愛梨は座り込んだ。その顔は顔面蒼白している。

(こ、殺される! いや、消される‼)

 脳裏に、崩壊する怨夢で置いてかれた時がよぎる。

「あのクソ女共……‼」

 灼は、曲がり角の壁にかけている手に力が入った。

 怨嗟がこもって、意外と声が出てしまっていたのだろう。


「……誰」

「「‼」」

 奴らに気がつかれてしまった。

「ヤベェ‼ 逃げるぞ‼」

「ま、待って! 腰が抜けて……」

 灼は愛梨を小脇に抱え、全力で駆け出す。


「ギャア⁉」

 しかし、突然灼の足に激痛が走った。

「灼⁉」

 愛梨は悲鳴を鳴げるが、転ぶ灼に巻き込まれて肩を強打した。

 涙目になりつつ、灼の足に目を向ける。

「‼」

 灼の足には、氷でできた細い矢が刺さっていた。

「ごめんね! ちょっとだけ我慢してて!」

 と言い、詠唱する。

「《痛覚軽減》《筋力強化》」

 痛みを和らげる効果の妖術を患部にかけ、さらに自身の腕の筋力も強化して矢を引き抜く。

「《快癒》」

 傷口も塞ぐが、処置の間に三澤達が来てしまった。

「あんたら……‼ 立ち聞きしてたわね⁉」

 三澤の怒り狂うオークのような形相に、二人は竦み上がった。

「ち、ちが……! オレらは知ら……!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……‼」

 涙ながらにこの場を切り抜けようとする灼と、必死に許しを請う愛梨の顔面に、三澤と関の渾身の蹴りが入って、一瞬で意識を持ってかれた。

「……あら?」

 菊竹が、愛梨の傍らで光るヘアピンに気がついた。転んだ際、愛梨の羽織の内ポケットから転がり落ちたのだろう。

「なかなか綺麗じゃない。こいつには似合わないわ」

 足で軽く愛梨の頭を小突きながら、自分の髪に着けた。


◆◇◆


 化穢討伐任務を終え、蕺邸から出てきた花耶は、愛梨の通信鏡に無線をかけようとしていた。

「……出ない」

 しかし、いくらかけても繋がらなかった。

 花耶は、別室から三人が出てくるのを待って、話しかける。

「愛梨と連絡がつかない?」

 千絃がいぶかしげに聞き返す。花耶はこくこく頷いた。

「……。ダメだ。煤竹とも連絡つかないや」

 春介が灼に通信鏡をかけるが、かからなかった。

「とりあえず、支部内を探すぞ!」

 蓮が言うと、四人はそれぞれ移動した。

「あ、花耶。念の為、視界共有かけるよ」

「ん」


◆◇◆


 花耶は鏡の通路あたりを探した。時間は、昼勤の現世見廻から死徒達が帰ってきてからしばらく経っている為、人はまばらだ。

「!」


 その中で、ある鳥居から出てきた四人組が視界に入った。しかも、一人が見た事のある物を身につけていた。

「すみません」

 花耶はその人物――菊竹に声をかけた。

「はい?」

 四人が振り向く。少ないとはいえ、まだ周りに人がいるのを考慮してだろう。人のよさそうな表情を浮かべた。

「ヘアピン。なぜ、持って、いるんですか?」

 と、訊く。

「ああ、これかしら?」

 菊竹はヘアピンに手をかざしながら答えた。

「雑貨屋で買ったのよ。白翡翠を使ってるから、そこそこ高かったわ。自分へのご褒美なの♪」

 それに対し、花耶は目つきを鋭くして言った。

「……それ、手作りです。飾り、レジンで、作りました。白翡翠では、ないです」

「「「「‼」」」」

 四人の顔が、引き攣った。

 ヘアピンは、花耶の手作りである。今、菊竹が髪につけている物は、雨上がりに現世見廻で見かけたスズランをモチーフにして、特に出来がよかった作品だ。ただ自分にはあまり似合わなかったので、より似合いそうな愛梨に御守りとして贈った物である。

 二、三人ほどに聞こえてたのだろう。不審そうな視線が四人に刺さる。

「愛梨に、あげた、ヘアピン。なぜ、持って、いるんですか?」

 追い詰めるように質問する花耶。


「煤竹さんと、愛梨に、連絡、つきません。何か、知りませんか」

 疑問形にこそなっているものの、花耶にはこの四人が何かしたという確信があった。

「えぇ⁉ その二人、いなくなったの?」

「ごめん。私達も知らないんだ」

「あの二人ぃ、だいじょぉぶかなぁ~? めいめい、しんぱぁ~い」

「あ! でも私、雅楽代さんの行くところに心当たりがあるわ!」

 三澤が、たった今思いついたかのように言った。

「でもそこ、自殺の名所なのよ~。すぐに行かないとまずいかも」

 花耶に困り顔を向ける。しかし、目は困っている様子はない。


「ついてきてくれるわよね!」

 ついてこい。さもないと、あの二人を危険な目に遭わす。

 花耶には、そう聞こえた。

「…………」

 花耶は無言で頷いた。


◆◇◆


 花耶は警戒しながらも、山の中を四人に着いてきた。

 周りは鬱蒼と生い茂った木々。寝床に戻ってきたのか、頭上ではカラス達がガァッガァッと鳴いている。

(危ないから、手出し、しないで)

 ハンドサインで、花耶は木の上にいる友達に伝えた。

(愛梨、灼、無事かな……?)

 心配で仕方ない。

 愛梨は快癒が使える、灼は花耶より丈夫。しかし、この四人に何かされていないだろうか。最悪、殺されているかもしれない。

 そんな悪い予感が頭の中を巡っている内に、その場所に着いた。

 開けた空間の片隅に、小さな古い山小屋が建っている。

(あの中に、二人が……?)

 と、思っている後ろで、菊竹が霊棍を薙刀に変えた。


「!」

 頭目掛けて振り下ろされる刃を避けつつ、花耶は屈んで足を蹴り払う。

「⁉」

 転ぶ菊竹から離れつつ、霊棍を鎖苦無に変えた。

(二人、保護、しないと)

 まず関が短剣で斬りかかる。

 苦無でいなす間に三澤が大太刀を振り下ろしてくる。

 花耶は短剣から離れるように躱し、三澤の脇腹に回し蹴り。

「ゴッ⁉」

 関も巻き込んでよろける。


 その隙に山小屋へ駆けた。

「この! 避けんな‼」

 猫を被る余裕がなくなったのか、石井は鬼のような形相でボウガンを使い、氷の矢を連射してくる。

 花耶は避けながら接近。走りすぎながら弦を断ち切る。

「!」

 ドアには錠がかかっている。花耶は途中で方向転換。窓から中へ侵入しようとする。


「させるかぁ‼」

「‼」

 関の投げた短剣が飛んでくる。花耶は飛び退いた。

 着地点に石井が接敵。ボウガン本体を鈍器のように振ってくる。

 どうにか抜け出そうと躱していたら、三澤と菊竹に囲まれた。

 薙刀と大太刀、そしてボウガン。

 攻撃範囲こそ広いが、三人の間隔もその分開けている。

 誰か一人の武器さえなんとかできれば、隙をついて抜けられそうだ。

「どいて!」

「キャ⁉」

 花耶はそう言いながら、石井の手元を蹴りあげる。

 石井のボウガンは頭上に跳ね上げられた。

 怯んでいる隙にすり抜ける。


 だが、この時には最悪な状況になっていた。

「来るな‼」

「‼」

 花耶は、立ち止まざるをえなかった。

「それ以上近づいたら、こいつらの首にブッ刺すよ!」

 関は、ナイフを両手に一本ずつ持っている。おそらく、霊棍が使えない時用の補助武器だろう。

 その切っ先には、愛梨と灼の首があった。

 小屋の外に運び出された二人は暴行を受けたのか、ボロボロで意識がないようだった。しかし呼吸はしている。まだ生きていた。額には、黄色い札が貼られている。おそらく、それで眠らされているのだろう。

 札に書かれている文字こそ読めなかったが、座学で見たことがあった。中国にある死徒の組織、護霊会で発明された呪符だ。額に貼られた対象は、眠りに落ちる効果がある。

「ナイス!」

「よくやったわ!」

「えらぁ~い!」

 三人が口々に誉める。


「二人を、放して……!」

 花耶は懇願する。しかしやつらは気味の悪い笑みを浮かべて言った。

「はぁ?」

「あんた、私のこと蹴ったんだぉ~?」

「しかも、人の評判を貶めて」

「それで命令するとか、何様?」

 三人は花耶を取り囲む。

「……ごめん、なさい……」

 唇を噛むように呟き、頭を下げる。

「お願い……。二人を、放して、ください……」

「そうねぇ。そこまで言うなら、放してあげようかしら」

 三澤が言う。

 その表情は、嫌いな奴を玩具にできると言いたげな、反吐が出るほどの醜悪な笑顔だった。


「まず、霊棍を投げ捨てなさい。できるだけ遠くに」

 花耶は言われた通りに、鎖苦無を霊棍に戻して投げた。霊棍は、繁みの中に消えた。


「次に、土下座して「私のような醜い奇形女が、あなた方のような天女のように美しい女性に大変ひどい事をしてしまい、申し訳ありません。戦乙女のように勇敢で女神のように慈悲深い皆様、どうか私のような糞ドブスをお許しください」と言いなさい」

 花耶は勢いよく膝を落とし、正座した。手を膝の前に置き、額が地面につくまで頭を垂れる。

「私の、ような――」

「頭が高ぁ~い」

 みしっと、額が地面に軽くめり込む。石井が、後頭部に足を乗せて体重をかけていた。

「ほら、最初から言い直しなさい」

 菊竹に促され、口を開く。

「私の、ような、醜い、奇形女が――」

「声が小せぇんだよ‼ このゴミ二つがどうなってもいいわけ⁉」

 関が灼の首にナイフを当てる。ほんのわずかだが、血が首筋を伝った。

「‼ 私の、ような、醜い、奇形女が、あなた方の、ような、天女の、ように、美しい、女性に、大変、ひどい事、してしまい、申し訳、ありません! 戦乙女のように、勇敢で、女神のように、慈悲深い、皆様! どうか、私のような、糞ドブスを、お許し、ください!」

 めったに出さないような声量で、できる限り早く言う。

 友達と後輩が死ぬかも知れないのだ。自らのプライドなど、安物の消耗品のように捨てた。


「じゃあこれで最後よ」

 三澤の言う事に、花耶はほっと胸を撫で下ろした。

 これで、二人が開放される――と、思っていた。

「二十四時間、その体勢を維持しなさい、ね!」

 三澤は、花耶の腹を蹴りあげた。

「ガッ……ッ⁉」

 花耶は一メートルほど吹っ飛ばされる。

「あー。残念ねー」

 三澤は花耶の脇腹を踏み締めて言い放った。


「言う事きけなかったから、あの二人も口封じ決定~」


 自分の体温が、零下まで下がったような気がした。

 石井と菊竹も近寄り、蹴る、踏みつける。

 すぐに殺す気はないのか、武器を使ってこなかった。

 その理由は、愉しそうに嗤っているのを見れば分かる。

「――っ‼」

 痛みに耐えながら、思考を巡らせる。

(呪符……)

 最低でも灼のを剥がせれば、二人が逃げ切れる。

(縄……)

 問題は縄だ。二人とも、両腕両足を縛られている。鬼である灼なら、自力で引きちぎれるだろうが、タイムロスが気になる。

(……短剣!)

 地面に刺さっている短剣が視界に入った。

 呪符を剥がしながら短剣で縄を切り、二人の逃げる時間をそのまま稼ぐ。

(あと、あの人……)

 あとはどうやって関を人質から離すかだが、すぐにチャンスがきた。

「私もまぜてよ! この奇形チビ、ムカつくし!」

 関が、暴行に加わろうとした。

 この四人の包囲網を、簡単に抜けられないと思っての事だろう。


 足首目掛け、ナイフが振り下ろされる。

 ザクッ。

「⁉」

 しかし、それが刺さったのは地面だった。

 四人の包囲から抜け出した花耶は、飛びつくように短剣の柄を握り、駆け出しながら地面から抜く。

 足の骨がミシッと軋むが、気にしていられない。

 二人にたどり着くと、灼の札を掴み、縄を素早く切った。

「!」

 呪符がすんなりと剥がれ、灼が覚醒する。

「逃げて――」

 言いきるが早いか否か。


 花耶の頭が、消えた。


 ゴトリと、近くで重いものが転がる音がする。


 花耶の体が倒れ、血飛沫によってふさがれていた光景が目に映った。


 血塗れの大太刀を持った、三澤の姿があった。


「ひ、ぃ……っ!」

 気管が絞られたかのように、うまく息ができない。

 それでも灼は、愛梨を抱き寄せ、傷口を見ないように花耶の体をかき抱き、へたり込んだ体勢でも後ずさる。

「あーあ。もう少し寝てればよかったのに」

 そう言いながら、三澤は大太刀を振りかぶる。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああ‼」

 泣き叫ぶ灼。


「《痺雷針》」


 その時、ある男の詠唱が響き、四本の雷の矢が犯罪者四人に命中した。

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