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「つー! まー! んー! なー! いー‼ 反省文書くの、あー! きぃー! たぁー‼」

 地獄の独房。ある獄卒が、中で反省文を書いていた。

「飽きても黙って書け! 自業自得だろうが!」

 独房の前に椅子を置いて座っている監視の獄卒が叱咤する。反省文の獄卒はぶーぶー不満で言い返した。

「そうは言いますけどぉ、ぶっちゃけ神様達も軟弱なのです! ちょっとからかっただけで胃潰瘍になってぇ~」

 この獄卒は、ある神をからかってからかってからかい倒した末に、ストレス性の胃潰瘍にさせたのだった。

 その罰として、このように独房で大量の反省文を書かされているのである。

 本来ならば、短期間だが地獄の拷問を受けるはずなのだ。実際、毎回形式的に一日だけ、拷問を受けさせた。しかし、ある問題が発生した。

 同じ拷問を受けている罪人と、拷問を担当している獄卒をおちょくり倒して、精神的に病ませたのだった。

 罪人だけが被害に遭うのなら放置したが、さすがに何の罪のない獄卒まで玩具にされるのならば、別の刑罰を与えなくてはならなかった。


「人間や妖怪よりも遥かに頑丈なはずの神様を胃潰瘍にさせた時点で『ちょっと』の範囲から外れてるんだよ! というかお前、これで今月何回目だ?」

「たった十回だけなのです」

「帰ったら『たった』と『だけ』の意味を辞書で調べろ」

 最高記録ではないが、いつもより多い気がする。やはり、戦争のストレスもあるのだろう。

「お前、ほどほどにしないと獄卒クビになるぞ」

「……クビにしちゃっても、いいんですかねぇ~? 常夜暮らしや生前の世界暮らしも、楽しそうですけどぉ~」

「前言撤回。お前みたいな者は野放しにできない」

 反省文の獄卒の事情を知っているからか、監視は諦めた。

 彼は、生まれつき拷問や殺人欲求のある人間だった。しかし殺したら色々面倒な事が身に降りかかるとして、生前の内は十八年間も我慢していたそうだ。その我慢が原因で、魂にかなり大きな傷がつき、屍霊になったのである。

 地獄で働いているのも、『地獄に堕ちるような人権を持つ資格のないゴミカス共さん達なら、虐め殺してもお咎めなしなのです!』という理由である。趣味と実益を両立した仕事ができるという意味では、彼にとって地獄はまさに天国だろう。

 地獄からしても、反省文の獄卒は、特に粗暴で悪質な罪人を任せるのにちょうどいい人材である。

 物理的に痛めつけるだけではなく、心もぽっきりと折った上で念入りに鬼おろし、磨り潰し、粉状になった残骸でさらに砂遊びをするような性格だ。彼に当たった罪人は、全員例外なく、ほとんどは五日と経たずに過去に犯した罪をただひたすらに後悔する廃人と成り果ていた。


 その事を評価されて、『殺して食べた相手を天国で奴隷にしてやる』と口走った殺人鬼の担当になって欲しいと外国の地獄からスカウトされた事もある。

 その殺人鬼は割りと根性があったらしく、扱いやすい廃人になるまで六日ほどかかったそうだ。

 しかし同時に現場でやらかし、送り返された上にその国を出禁にされた。

 神が菓子折りを持って謝罪に行ったので、幸い国際問題にはならなかった。

 ちなみに、反省文の獄卒は『割りと頑丈な玩具だったので、めっちゃ楽しめたのです!』と、輝かんばかりのキラキラした笑顔で言っていた。


「第一ぃ~、俺こんな紙ペラ数百枚の文章書いただけじゃあ反省しないのです。書く意味、なくないですかぁ~?」

「反省するかどうかは関係ない。ただ、少しでも加害者に苦痛を与えるのが目的だ」

「神様達、いい性格してるのです!」

 この獄卒には、普通の拷問は通用しない。過去に色々試した結果、独房で大量の反省文を書かせるのが一番効果的だったのだ。


(反省文、全然終わらないのです! 鍵は十秒で破れますけど、見張りが邪魔~)

 そこで獄卒は、一計を案じる事にした。

「あ! 今、あっちで物音がしたのです!」

「音?」

 見張りの獄卒は首を傾げる。

「はいなのです。何か、走って遠ざかるような音だったので脱獄かもしれないのです! 一応、見に行った方がよくないですかぁ~?」

「……本当だろうな?」

 見張りは疑いの目を向けているが、反省文の獄卒はこう言った。

「本当なのです! 俺が耳いいの、分かってるじゃないですかぁ~」

「ま、まぁ……。確かにそうだが……」

「早くしないと、逃げちゃうのです!」

 そう聞いて、見張りの獄卒は焦る。

 地獄に堕ちるような罪人が脱獄をしたら、一般人亡者や生者に害をもたらす可能性はある。

 反省文の獄卒を見張らなければならないが、独房には鍵がついている。もし何もなければ、走って戻ればいい。

 そう考えた。

「分かった! お前は大人しく反省文を書いとけよ!」

「りょーかいなのです!」

 こうして、見張りは去っていった。


 反省文の獄卒は、目の前の用紙に言伝てを書き、独房の鍵を九秒で破って、脱走した。


◆◇◆


「嘘だろ⁉」

 見張りの獄卒が戻ると、独房はもぬけの殻。鍵も開いていた。

 反省文用の用紙には、言伝てが書かれてあった。


『つまんないから、弟子ちゃんとこに遊びに行ってくるのです!

 反省文の代筆、よろぴくぅー(∧ω<)ゞ⌒☆』


「あんの、クソガキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼‼」

 獄卒の怒声が響き渡った。

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