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「お、いたいた」
「四人ともー。ちょっといいかい?」
蓮と春介は、食堂で談笑している花耶、灼、愛梨、千絃に声をかけた。
「大丈夫」
千絃が言うと、二人は同じテーブルに座る。
「蓮、頭、平気? 春介も、顎」
花耶が心配そうに訊いた。
先程、二人は格闘訓練で組手をしていた。蓮は春介の踵落としを脳天にくらって気絶したのだ。春介が蕺邸まで蓮を運んだのである。
ちなみに、春介は顎に回し蹴りをくらって口の中を切っていた。
「もう大丈夫だけどよ、くっそ痛かったわ」
「おれは、自前の快癒でなんとかなる程度だよー。大丈夫ー」
この二人は任務の後、ちゃんと仲直りした。今はもう、完全に元通りの関係性だった。
「ところで、何か用があったんじゃないの?」
「おう」
千絃が話しを戻すと、蓮が四人に訊いた。
「今度の休み、TRPGやらねぇか?」
「やるっ!」
即座に灼が反応した。
TRPGとは、あらかじめ用意されたシナリオで、おしゃべりで物語を進めるRPGである。生前、よく友人達と遊んだテーブルゲームだ。
他の三人も、二つ返事で参加する事にした。
「全員参加かぁ。じゃあ、敵をもう少し強くしても大丈夫そうだ」
「春介さんがシナリオを作ったんですか?」
「うん。最近、色々あったからさー。ノリと勢いで遊べるような内容のギャグシナリオを作った」
「「「「「あぁ……」」」」」
戦争や、殺意が沸くほど憎悪している顔見知りが怨霊になったり、仲間が穢憑き化したり等々。
とりあえずバカ笑いして最近のストレスを発散したかったのだ。
◆◇◆
数日後、春介の作ったシナリオで遊んだのだが、中々カオスなノリになった。
ギャグシナリオと聞いて、全力でボケ倒す灼と蓮。それに乗っかるGMの春介。愛梨と千絃は腹を抱えて笑いながらもツッコミで捌く。そんな中、花耶は笑いすぎにより、音もなくダウンした。
気がついた千絃が休憩を要請する頃には、花耶は過呼吸になっていた。
「次に苦しくなったら、僕の腕叩いて知らせてね⁉」
「ふぁぃ……」
◆◇◆
その日の帰り。春介は愛梨を部屋まで送った。
「送ってくださり、ありがとうございます」
愛梨は頭を下げる。
「どういたしましてー。それとこれ」
春介は異空鞄から綺麗な和紙の包装を出し、ポンと与える。包装からして、人外界の店だろう。
「これは?」
「金平糖だよ。この間、おれの話を聞いてくれたからさ。そのお礼」
「いえいえ! あれは私が勝手に聞いた事ですから!」
あわあわと恐縮する愛梨の頭を、春介はぽふぽふ撫でる。
「それでも、だいぶすっきりした。まだ穂花に対して未練は少しあるけど、その内いい思い出になると思う。ありがとう」
「!」
その時に浮かべていた春介の表情は、ふにゃふにゃした笑顔。愛梨が、一番好きな表情だった。
「えへへ……。こちらこそ、嬉しいです。ありがとうございます」
愛梨も、花が綻ぶような笑顔を浮かべた。
十八章に続きます。
また、プロットの見直しと修正の為、来週は投稿をお休みします。
十八章1話は12月3日に投稿したいと思っております。




