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魔法と建国と吸血鬼  作者: タニシ
8/8

鶴の恩返し6

遅くなってすみません!

「ベイル温泉街に来たんだし、まずは温泉に入りましょう!」


「待ってくださいお師匠様~!」


「では、念のためわたくしはハク様達について行きます」


そう言ってハク、テス、クックはどっかに行ってしまった。


「……ルイスはどこか行きたい場所はある?」


お嬢様は欠伸を殺しながらそう言った。


「とりあえずどこかで休みましょう、お嬢様、眠そうですよ」


「そりゃぁ普段この時間は寝てるんだもん。眠いのは辺り前よ」


「じゃぁ、僕たちも行きますか」


そう言って二人で歩き出す。



「……すいません、大人と子供一人で一泊おねがいします」


受け付けのふくよかなおばさんに声を掛ける。


「いらっしゃい! ……お? ずいぶんな別品さんを連れてるじゃないかあんた! 妹、娘、彼女とかかい?」


「……あー、まぁ娘みたいな感じで……いでっ!!」


「私はこいつの全てよ!! 故に妻であり母であり娘であり姉であり妹でもあるわ!」


「あんた、えらく好かれてるじゃないか! よし、このお嬢ちゃんに免じて半額にしてあげる! 大人一人銅貨五枚、お嬢ちゃんの分はいらないわ!」


お嬢さまのとんでもない発言を真に受けよく分からないことを言ってくる受付のおばさん。


「そんなわけにはいきません。ちゃんと払いますよ!」


「こういうところは甘えればいいんだよ! そのかわり、次くるときは友達連れてきなよ!」


おばさんは鍵を渡すとおしりをたたいたあと、耳元で、


「少しくらいなら騒いでも問題ないよ!」


「彼女連れて実家に帰省した時の親か!」


がっはっは! と豪快に笑って仕事に戻って行った。

鍵には204と番号が書かれていたのでそこに向かう。


「あのおばさんになんて言われたの?」


「……お嬢様は知らなくていいんです。それよりなんですかあの説明は」


「………やっぱ私みたいな幼児体系じゃいやだよね……」


明らかにしゅん、とした。そういうのやめてほしい。僕が悪くなくてもバツが悪くなる。


「……そうじゃなくて、いつから家族になったんですか」


「そりゃあなたが生まれる前よ」


「そーですか」


これ以上は無駄だと思い適当に切り上げようとしたとき、ちょうどよく部屋に着く。

扉を開け中に入ると、大人一人銅貨25枚はとっていいくらいの広さと眺めを有した素晴らしい部屋に就いた。


「…………これもある意味ぼったくられたといっても過言ではないのではないですか?」


「…………そうね。あとで何か渡してあげようかしら」


「そうですね」


「そろそろ私は寝るわ、お休み」


お嬢さまはベッドに倒れこんだ。

僕も寝ようとしたが、部屋の大きさの割にベッドが一つしかないことに気づいた。


「あの、僕は一体どこで寝ればいいんでしょうか?」


「……どこって、私の隣が開いてるでしょ」


眠そうな声でそう言った。


「私はもうあなたから離れないって決めたの」


「……それってどんな時もですか?」


「当たり前でしょ。お風呂もトイレも寝るときも……死ぬときも」


「トイレは一人でさせて!! なにナチュラルに覗こうとしてんですか!」


「別にいいじゃない。それより突っ立ってないでこっちにいらっしゃい」


ベッドは一つしかなく、別段嫌な訳ではないので隣に失礼する。


「~~♪ ~~~~♪」


お嬢様はいつになくご機嫌だった。


「…………ねぇ、私あなたのこと離さないわ」


ふいに歌うのをやめそんなことを言った。


「さっきトイレまでついてくるって聞きましたけど」


「ううん、そういうのじゃなくて。あなたのそばを離れないであなたを守り続ける。だからお願い……もう死なないで」


一回死んだように話すお嬢様になにか言ってやろうかと思ったが、その前に寝てしまったのでやめた。

隣からスゥースゥーと、規則正しい寝息が聞こえる。まるでそれが子守歌のようで、さっきまで眠くなかったのに、睡魔が忍び寄る。数分後には眠ってしまった。



明くる日、という表現は陽が暮れかけてからおきているのだからおかしいが、とりあえず起きた。

もうすっかり慣れてしまったが、やはりこの時間に起きるのは相当の違和感がある。

隣ではまだお嬢様がスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。本当なら外を歩きたいが、そんなことをして先日みたいなことがあったら今度こそ監禁されるかもしれないのでやめておく。

仕方なくお嬢様が起きるのを待つことにした。何かすることがないか部屋を見渡してみたが、広いわりに殺風景だった。そしてやることがなくなった僕はベッドに潜りこんだ。



陽が沈みきったころ、目が覚めた。


「ルイス~~!」


ベッドにいなかったお嬢様は、どこからか飛びついてきた。


「……ちょっと離れてください」


「いやよ! 離したらどこかに行きそうだもん」


そう言って一層強く抱き着く。まったく、あのツンデレの可愛いお嬢様はどこに行ったのやら。いや今も十分可愛いけれども。


「そりゃ誰かさんの服の素材を取りに行かないといけないから離れますよ。この部屋をですけど」


「……そうね、じゃ、行きましょ」


コアラのように抱き着いてきて歩きにくいルイスだった。






次回も遅くなると思いますがご了承ください

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