にじゅう
しばらく経つと、様々なお菓子が運ばれてきた。元々百合が用意していたものだと思われる、マドレーヌやマフィン、マカロンなどの洋菓子の中に混ざるみたらし団子。うん、紅茶のクッキーはいい感じに紛れてるんだけど、みたらし団子だけすごい場違い感が…
「前杏奈がくれたみたらし団子美味しかったからまた食べれて嬉しい!」
みたらしを見た百合が喜びの声をあげる。百合、マジ天使。え?なんでこの子が悪役令嬢なの?
とかまぁ思いつつ返事をする。
「そう言ってもらえると本当に嬉しいな」
「あ、クッキーも発見!この世界にないもの持ってきてくれたんだよね、ありがとう!」
私が持ってきた意図を察した百合が感謝を伝えてくれた。百合は人の筈なのに、はち切れんばかりに尻尾をふる犬の姿が見える気がする。
私が和んでいると、ドアが小さくノックされ、シリルだ、と名乗る声が聞こえた。それに対し百合が入室の許可をすると、扉が開きシリル様がご入室なさった。
百合は少し落ち着き、そして私は緊張で体を震わす。
あぁ、私に語りかける声が聞こえる。私の中から聞こえるそれは、きっと私のものだろう。自身の内に意識を向ける。
「シリル様に嫌われてはダメよ。嫌われてしまったら、監禁エンドに入るのが難しくなると思う。嫌いな人を監禁するなんてこと、ありえ………なくもないかもしれないけど、嫌われ監禁エンドは私たちの目指す溺愛じゃないからね」
私の言葉に心の内で頷いて、近づいてきたシリル様へと挨拶をする、よりも先に百合が紹介してくれた。
「お兄様、こちらは私の友人、あ…ハンナですわ」
百合…杏奈って呼びそうになったね。まぁ、別にいいけどさ。
私はシリル様へと向き直り、今度こそ挨拶をする。
「お初にお目にかかります。ハンナ・フォスタと申します。ユーリ様にはいつもお世話になっております。どうぞ私のことは、ハンナとお呼びくだしゃい」
……噛んだ。思いっきり噛んだ。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいよ〜!
穴があったら今すぐ入りたい。
「同じクラスだから知ってはいたけど話すのは今回がはじめてかな。はじめまして、シリル・リッセンです。いつも妹が世話になってるね。どうか、シリルと呼んでくれ」
シリル様は私が噛んだ事を見事にスルーして挨拶してくれた。ありがとうございます!
でも、そっか、認知はされていたんだね、私。まぁ同じクラスだし、私編入生だし。
次話は2週間後の7/26です。




