に
主人公の名前は ハンナ です。
その夜、夢を見た。
この国では、この世界ではない場所の夢。
日本、という場所で女性が働いている。
……そうだ、この人は、この女の人は、私だ。
私は死んで、ハンナに生まれ変わったんだ。死因は過労。死ぬ時の願いは、来世では働きたくない、だ。
様々な記憶が流れ込み、私が全てを思い出した時、気がつくと真っ白な部屋にいた。
「ここは…どこ?」
思わずこぼれ出た疑問に答える声が1つ。
「ここは、あなたの精神世界」
声が聞こえたと同時に現れる姿。
それは私だった。
正しく言うなら、前世の私。
くたびれたスーツを着た、土気色の顔をした、黒髪の、死んだ時の私。
私が再び言う。
「ここは、あなたと私の精神世界」
あなたと私…つまり2人の『私』の精神世界。
私は続ける
「ここは、乙女ゲームの世界」
私はそこで言葉を切った。今度は私が続ける。
「ひまわり〜狂おしい程の愛を君に〜」
さっき流れ込んだ記憶の中にあったこの乙女ゲームの名前。それを口にする。
「「私はヒロインだ」」
そして、2人で一緒に言う。私の正体を。
私が言う。
「私はもう、働きたくない」
私は過労で死んでしまった。私が続ける。
「私が目指すのは、監禁ルート」
それは、BADエンドで……働かずに済むルート。
でも、
「私は働きたい。お父様の仕事を手伝いたい」
私の言い分はわかる。けど、私はお父様と一緒に働きたい。
私の言葉に私が返す。
「それができるのは、14歳になるまで。後、1年だけ。来年には、乙女ゲームが始まってしまう」
本当にゲームは始まるの?
ここは本当にゲームの世界なの?
その疑問をぶつける前に私が言う。
「あぁ、もう目覚めの時間だわ。私はあなたの中にいる。でも、この精神世界でしか、夢の中でしか話すことは出来ないの。だから、また呼ぶね」
私はキレイに笑う。そして、この白い世界が光に包まれ、私は目を閉じた。次に目を開けた時、そこは私の部屋だった。
分かりにくかったかもしれませんが、点がついてる〈私〉は前世で、ついてない〈私〉が今世です。