じゅういち(悪役令嬢視点)
私が前世の記憶を取り戻したのは10歳の時だった。それまでもこの世界ではない所の記憶があったのだけれど、10歳を迎えた頃にはっきりとそれが何かわかった。そして私は気づいた。ここが、乙女ゲーム「ひまわり〜狂おしい程の愛を君に〜」の世界であることに。私はこの乙女ゲームが大好きで、何度も繰り返してやっていた。おかげで何を選ぶとどのルートに入るのかまで覚えている。私がヒロインだったら役に立ったのかもしれないけど、私は悪役令嬢だった。ヒロインをいじめる役。まぁ別にいじめないけどね。
このゲームの私の推しは王太子だ。そして私、ユリア・リッセンは王太子の婚約者。ここは天国か?とまぁ思うよね。
その後私や王太子は成長し、学校に入学した。来年からヒロインが編入してくる、乙女ゲームの始まりの場所。ヒロインは誰狙いなのだろう。王太子は、ヨハネス様は選ばないで欲しい。ヒロインと悪役令嬢じゃ勝ち目がないもの。今の私とヨハネス様の関係はそれほど悪くはないと思うのだけれど、それもどうなるのか分からないし…。ヒロイン、来ないで欲しいな。
そして、入学ししてから3ヶ月たった頃、ヒロインが編入してきた。え?おかしいでしょ。ゲームが始まるまでまだあるはず。まさか、ヒロインも転生者?
そう思った私はヒロインに話しかけ空き教室へと向かった。
教室につきヒロイン、ハンナさんと向かい合ってすわる。
「改めまして、ユリア・リッセンです。」
「あ、ハンナ・フォスタです。」
まどろっこしい言い回しはあまり好きではないので単刀直入に聞く。
「ハンナさん、あなたはヨハネス様をどう思っていますか」
ヒロインが王太子ルートで編入してきた事は知っている。つまりヒロイン、ハンナさんは王太子ヨハネス様狙いでここに来た、ということだ。
「どう、とは?」
「とぼけないで下さいまし。あなたヨハネス様のことが好きなのでしょう」
ヨハネス様のルートで来たのだもの。そうに決まっているわ。
「あ、あの。失礼ながらヨハネス様、とは?」
は?
「何を言っていますの?あなたは王太子であるヨハネス様を狙っているのでしょう!でなければ王城で魔力を測定するはずがありませんわ」
私の叫びに、ハンナさんは驚いていた、
「そっか、王太子ってそんな名前だったんだ。
…ユリア様。1つお聞きしたいことがあります」
前半は少し小さな声で言っていましたが、聞こえていますからね。まさか本当に名前を知らなかったの?いえ、今は先に質問に答えるべきですね。私が返事をすると、ハンナさんが質問の内容を告げる。
「ひまわりってご存知ですか?」
それは、この乙女ゲームの名前で、この世界には存在しない花の名前。それを知っているということはつまり
「やはりハンナさんも転生者なのですね。」




