『だって意味は無いもの。』#1
主人公は毎回、定まっていません。
『「ここは何処、貴方は誰?」君の言葉に目を見張るーーーーー、』
彼女は、手に持った本を床に投げつけた。
「あー、暇で暇で仕方がないわ。本当に誰か来ないかしら。…ねぇ?そこの貴方。」
私は、少し戸惑いつつも、おそるおそる彼女の前に座った。
「…ええ、そうですね。ミセス・フィー嬢。」
彼女はちょっと笑うと、言った。
「彼ー、来ないの。迷子になってるのかな。」
私は立ち上がって窓の外を見るー、、
「…、そうかも知れませんね。」
そう言うと、彼女は口を開けて笑った。意味が分からない。私は今日、女王の命を受けて来たのだ。雑談している時間は無い。
「あのー、「意味は無いわ。」」
遮られた言葉に目を見張る。
「…は?」
「だから、意味は無いんですの。今の言葉に。」
…お戯れが過ぎる。これだから侯爵夫人は好きでない。軽く息を吸い、私は言ったー、
「“本日正午より、『裁判』が行われる。侯爵夫人ー、ミセス・フィーも来るように。”女王からのご伝言です。」
「はぁー、面倒くさいったら無いわ。私どうしても行かなくてはならないの?」
彼女は溜息と共に不満を吐き出した。
「ええ、勿論です。」
頷くと、彼女は少し考え込んだ後ー、私に言った。
「ふーん、そ。じゃあ、私にチェスで勝って頂戴ー、そしたら行ってあげるから。」
私は頭を抱え彼女を見た。なんて事を言うんだ、このご夫人は!!よりにもよって女王の大嫌いなチェスを選ぶとは。
「お断りします。」
「わかったわー。」
彼女は大して興味無さそうに呟いた。
「あ、そういえばねぇ、今思い出したんだけど。」
私は息をつきつつ頷く。
「あのねぇ、第一回目の裁判で出たあの手紙、私が出したものなんですの。」
私は息を飲んだ。
「ねぇ従者殿。」
「はい。」
「私ねー、気づいたわ。」
「っは、何に。」
このご夫人はさっきから唐突過ぎて混乱しそうだ。
「女王様のタルト食べちゃったのね、私だわ、きっと。」
…、自白なら分かるが、きっと、とはどういうことだろうか。
「フィー嬢、どういうことですか。」
「だって、きっと誰かがたべたのでしょう?という事は、私が食べた事にもなるのよ。」
意味が分からない。本当に混乱する。
「証拠がございませんでしょう、確証が無いのなら貴女では無いのでは?」
彼女は髪をかき上げた。
「そ、証拠が無いの。だったら私、っていう可能性もあるわ。」
私は息を飲んだ。本当に本当に何を言っているんだ、このご夫人は。
「なんですか、貴女が食べたんですか?食べてないんですか?」
と、私の隣に寝そべっていた、口の端がつりあがったような猫が言う、
「こいつは頭が可笑しいんだ。全く、そんな事を言いだしたら自分が自分である証明も無くなっちまう。」
猫の言う事も気になりはしたが、とりあえず夫人に言った。
「ともかく、貴女が犯人でもそうでなくとも良いんです。本日正午、城までいらっしゃって下さい。」
スピンオフを挟んで、続きます。