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・・・・・・(4)ロリコン疑惑

 ウィズが施設出身と言うことは知っていた。

 でも、それがどこかといった知識はなかった。

 もともとは、カトリック寺院で細々とやっていた孤児院だったそうだ。

 現在の、被虐待児童の一時預かり施設になるまでには、ウィズのような傷ついた子供たちを、必死で保護してきたシスターや職員たちの努力があったのだろう。

 時代に対応して、設立せざるを得なかったのだ。


 今回、かなこちゃんは母親が死亡し、父親は逃走中。

 保護者不在の状態だ。

 父親には余罪もあるかもしれず、この段階でかなこちゃんの保護者をつのるのは難しい。

 もともと親戚付き合いを全くしてない夫婦で、近所とのつながりもほとんどゼロ。


 加えて、かなこちゃんは難しい子供だった。

 幼稚園に行っておらず、小学校も不登校で、友だちと遊んだ経験がない。

 親のしつけもなされてないので、常識のない行動をする。

 たちまち施設内でもブーイングを浴びたらしい。

 

 「せめて、おしゃべりしてくれたらいいんですけれどね」

 駐車場に向かって歩きながら、シスター松岡は嘆いた。

 「あれ?でも、あの晩は、僕と会話しましたよ。

  ねえ、かなちゃん?」

 ウィズが言って、かなこちゃんの顔をのぞきこんだ。


 「あんたのその顔って、整形?」

 突然、かなこちゃんがウィズに言った。

 「まあ、かなこちゃん!」

 老尼僧がとがめる口調になるのを、ウィズは手で制して、

 「生まれつきこの顔だけど、かなちゃんの顔は、整形?」

 と切り返した。

 「ばっかみたい。あんた、馬鹿?」

 「うん、よく言われるねえ」と、ウィズ。

 「ヘンな顔!寄らないでよ、馬鹿がうつるじゃない」

 「じゃあ、かなちゃんはぼくに利口をうつしてよ」

 「リコーってなにかわかんない」

 「かなちゃんみたいに、頭がいいことだよ」 

 かなこちゃんは、複雑な表情をして、ウィズの顔を見上げた。

 ウィズはかなこちゃんに手を差し出した。

 かなこちゃんはその手を握って、もう一度ウィズの顔をまじまじと見上げた。


 車に乗る時、ひと悶着あった。

 かなこちゃんが、ウィズの手を離すのを嫌がったからだ。

 「お兄ちゃんは運転しなくちゃならないのよ、わがままを言わないで」

 シスターが説得しようとしても、大声でわめいて話にならない。

 ところが、ウィズがかなこちゃんの耳に何かささやくと、ぴたりと騒ぐのをやめた。

 そしておとなしく、後部座席に乗り込んだ。

 「まあ、この子がこんなになつくなんて!

  いったい、どんな魔法を使ってるの?」

 シスターが何度も何度も、そう言って不思議がった。



 まあ、そういういきさつがあった後だから、かなこちゃんを預かる話が持ち上がっても、少しも不思議ではなかった。

 次の日、シスターは3人に増殖して「ウィザード」を訪ねて来た。


 「次の土・日に、イタリアからお客さまを招いて、大きな祭典を行うんですよ。

  今、教会のほうがその準備に忙しくて、施設の方に人員を割けないんです。

  それに、なんだかかなこちゃんには、刑事さんがついてるみたいで‥‥」

 教会の平和集会で、警官にうろうろされたくない事情もあるのだろう。


 さすがに喜和子ママは考え込んだ。

 「危険があるようだと困りますねえ。

  うちも客商売だし、もしも逃走中のお父さんが、かなこちゃんに会いに来たりしたら」

 「それはないでしょ」

 ウィズはあっさり否定した。

 なぜか分からないが、彼がそう言うのなら、ないはずだ。

  

 「でも今回、僕が全部面倒を見るのは勘弁してほしいな。

  あとで、絶対なんかクレームがつく気がする」

 「でも、きっと吹雪さんのいうことしかきかないわよ?」と、喜和子ママ。

 「じゃあ断って」ウィズはきっぱり言った。

 「冷たくない?」あたしは、思わず言ってしまった。

 「人手がいるなら、あたしやまどかも手伝いに来るから。

  ね、ウィズの後輩じゃないの。協力してあげましょうよ!」

 魔術師は不満げに、大きな大きなため息をついて見せた。


 結局、金曜の夜から月曜の朝まで3泊2日、かなこちゃんを如月家で預かることになった。

 喜和子ママは、「ウィザード」の扉に休業の紙を貼った。

 ウィズも、HPの掲示板に3日間休業する旨を書き込んだ。


 金曜の夕方。

 あたしは予備校が終わると、「ウィザード」に駆けつけた。

 店の前で、ちょうど3人のシスターたちが出てくるのと出合った。

 3人とも、何故だか当惑したような暗い表情を浮かべていた。

 「かなこちゃんをお願いしますね。

  あの、できればあなたもご一緒に‥‥」

 園長であるシスター松岡、意味不明のことを言いかけて、もごもご口ごもる。

 なんかヘンな感じ。


 「あ。そうだ、シスターたちならご存知じゃないかしら。

  『あやめちゃん』と言う子、昔ホームにいませんでしたか?」

 あたしは思いついて聞いてみた。

 ウィズの、忘れてしまった記憶の中に入っていた名前だ。


 「あやめちゃんのこと、誰にも言わないから、助けて!」

 炎の中で、小さなウィズは泣き叫んでいたのだ。


 「そういう子は記憶にありませんけどねえ」

 シスター松岡は首をかしげた。

 「それにしても、どうして皆さんでその子を探してらっしゃるの?」

 「皆さん?」

 「確か、おとといクリニックの方にも同じことを聞かれましたよ。

  ほら、おキレイな女の先生に」

 朝香センセ?


 どうして、朝香センセがあやめちゃんを探すんだろう?

 もしかしたらウィズのセラピーもセンセがしてるとか、そういうことだろうか?

 朝香センセも、ウィズの心の扉の中から、あやめちゃんの名前を探し出したんだろうか?


 

 店に入って、シスターたちの当惑顔の意味がわかった。

 かなこちゃんとウィズは、大変なことになっていた。

 ウィズは、店の隅の、お気に入りのボックス席に座っていた。

 かなこちゃんは、そのウィズのひざの上に上がりこんでいた。

 それも、向かい合わせになって。

 かなこちゃんはウィズのひざにまたがって、ベットリ体を預けている。


 4年生の子にしては、かなこちゃんは発育がいい。

 バストも服の上から分かるくらいにふくらんでいる。

 お尻にも足にも、女の子らしくお肉がついている。

 そんな体形で、太ももをむき出して男性の上にまたがってる恰好は、なんというか、ものすごくエロい!


 「ただいま、喜和子ママ。どうなのよ、あれって」

 「お帰りなさい、美久ちゃん。なんだか大変そうでしょ?」

 「ウィズがやりたがらなかった理由がわかったわね」


 かなこちゃんとウィズは、片時も離れずずっとおしゃべりをしていた。

 そばで聞いていたら、他愛ないことだ。

 「かなちゃんの誕生日は、いつ?」

 「ほんとにプレゼントもらえるの?」

 「待って待って。またお返事するの忘れてるだろう?」

 「ホームでもくれる?」

 「だめだめ、お返事してからだよ。さあ、誕生日はいつ?」


 6時を回ったころ、店のドアを通れるか心配になるような体形の青年が訪ねてきた。

 2階に住む、オタリーマンの白井さんだ。

 「こないだジンよりテキーラって言ってたから、買って来たんだ。

  店が休みなら、部屋で飲まないか?」

 言いながらウィズに近づき、かなこちゃんとの合体ポーズを見て固まってしまった。


 「うっわ‥‥あっぶねー‥‥」

 さすがに水をさす気になれなかったのだろう、あたしのとこへやってきて、

 「吹雪くんって、やっぱアレなのかい?

  なんかさ、ぼくはずっと疑ってたんだけど」

 「アレって‥‥」

 「ロリなの?」

 「えええ?違いますよお」

 ひそひそ声になってしまう。

 「いやいや、化粧がダメってあたりから、もうあやしいじゃない。

  高校卒業したくらいから対象外ってことでしょ?

  守備範囲、下すぎるなあと思ってたんだ。

  あの様子見て納得したな、ぼくは!」

 納得するなよ!このオタク!

 

 喜和子ママが食事を用意してくれたので、あたしも一緒にさせてもらった。

 かなこちゃんは、食べている間はウィズのひざから下りてくれたが、終わるとまた上がりこんだ。


 8時に、所沢刑事が陣中見舞いに現れた。

 「‥‥おおっと。大丈夫か、あれは」

 こちらもドン引き。

 「まさかトカレフ、童女に欲情したりせんだろうな?」

 あたしに聞かないでください。


 続いて、ケーキを手土産に、朝香センセが入ってきた。

 「あははは、なんか‥‥。すごいわねえ、あははは」

 笑い事ですか。

 ひとしきり笑いものにしたあと。

 センセはあたしの横にやってきて、背中をぱん、と叩いた。


 「ダメじゃない、早くツバつけとかないから、ああいうのが入ってきちゃうでしょう?

  今日は、あたしはあなたの応援に来たのよ。

  ほら、ライバルがいる時に点火しとけばしっかりした種火ができるし」

 何をやらしたいんだろう、この人は。


 「そうだ。朝香センセ、『あやめちゃん』ってご存知なんですか?」

 あたしは聞いてみた。

 「シスター松岡に質問なさったと伺ったんですけど」

 「誰に質問したって?」

 「シスター松岡。

  かなこちゃんのいる施設の園長先生です」

 「あたしが質問したの?」

 「違うんですか?」

 「なんて質問したの?」

 「‥‥いいです、もう」

 どうやら間違いのようだ。

このへんからエロなのかマジなのかわかんなくなって来るんですが、必要な場面なので頑張って書きます!

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