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追放ソロ探索者俺、塔、登ります  作者: つくたん
終われ、世界
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世界ハ平和ニナリマシタ

世界ハ平和ニナリマシタ。

悪人ハ成敗サレ、悪業ハ排除サレ、忌々シイモノハ全部ナクナリマシタ。


アァ、我々ノ勝利デス!

断罪ノ刃ハ大罪人ノ首ヲ跳ネ飛バシタノデス!


世界ニハ平和ガ訪レ、人々ハ幸福ヲ噛ミシメテイマス。

美シク、理路整然トシタ世界ヲ生キテイマス。

ダカラ、モウ、不都合ナコトハナイノデスヨ。


ネェ、ドウシテ泣イテイルノ?


***


世界は平和になりました。

悪人は成敗され、悪業は排除され、忌々しいものは全部なくなりました。


断罪の刃でもって大罪人の首を跳ね飛ばし、我々の勝利が刻まれました。

世界は今日も美しく残っていて、システムは理路整然と続いています。

人々は今日も頂上を目指し、塔を登るでしょう。


世界が成り立ったその日から、何も変わることなく。


そこまでを記録として記し、記録と記憶を収集する魔女はゆっくりと本を閉じた。


「それからどうしたのかですって?」


馬鹿なことを問うものだ。

もう『物語の主人公(ファウンデーション)』は変わってしまったのだ。これ以上、主人公でも何でもない人間の物語を紡いで何になる。それとも、端役ごときに冗長な物語を続けるつもりか。


「もう話の主人公は変わってしまったのよ?」


今のファウンデーションから別のファウンデーションへ。67代目から68代目へ。

主人公が変わる。だとしたら、これから紡がれるのは、68代目を主人公とした物語。

それならばもう67代目の物語は終わりだ。これ以上は語られることなく、強制終了を迎える。

68代目の物語は別のところでやるべきだろう。だからこの物語には終止符が打たれる。

いたって当然の話ではないか。異を唱える理由がどこにある。


「だから数話前に言ったじゃない、こんな終わり方は絶対にクレームが来るって」


冷酷に残酷に、これまで積み重ねてきたすべてを打ち捨てて。

何も解説されることなく、何も説明されることなく、何も回収されることなく、何も報われることなく。

祈りも願いも決意も悲嘆も希望も絶望も嘲笑も、なんら価値も理由もなく。


こんな終わり方冗談じゃないと叫んでも、終わるものは終わるのだ。

そして、今しがた終わったのだ。打ち切りに足掻く余地もなく。

予定されていた筋書きをなぞれもしない、ただの通過点としてこの物語は終結する。


残った諸々は精算されてまた繰り返される。また神々の望むように、永遠に無限輪廻を繰り返す。

その輪廻に夜明けはあるのだろうか。昴は去り、煌夜は終わり、それからこの先は。


「次は何がどうなるのかしらね?」


さぁ、新しい物語を始めよう。


大丈夫、この物語に価値も理由もなくたって、意味はあるんだから。

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