表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編:なろうラジオ大賞用

エロスからの賢者

作者: 笛路




「ふははは。まさかこんな事で『賢者』が手に入るとは!」




 この世界はスキルで全てが決まる。

 十六歳の成人の儀式で職業が振り当てられるが、その時の所持スキルによって職業が決まってしまう。なのでみんな十六歳までに良いスキルを取得しようと必死に勉強や修行をするのだ。


 スキルの取得の仕方は色々ある。必死に走り込めば『俊敏』や『健脚』を、何かしら細工や製作をすれば『器用』や『匠』を、勉学に励めば『博識』や『叡智』を取得出来る。そしてそれを更に磨きスキルのレベルを上げる。

 そういった通常のスキルとは別にイレギュラーなスキルがある。何かに突出した能力があると取得できるのだが――――。




 俺はさっきまで風呂屋で女風呂をのぞこうと頑張っていた。


 健全な十五歳の少年なら当然興味は出るだろう? そこはパラダイスだろうと、そこには女神アフロディテやエロスがいるだろうと! 想像しては鼻の穴を拡張させても仕方ないと思わないか?


 まず、建物の裏手に女風呂の窓がある。そこを覗く為には二メートル近い梯子がいる。しかし、そんなものを使えばモロバレだ。いくら裏手とは言え人通りが無い訳ではない。ご近所様から非難されるのは間違いない。最悪村八分だ。ではどうするか――――。


 一、かくれんぼを極め『隠遁』を手に入れる。

 二、走り回り『俊敏』を手に入れる。

 三、飛びまくり『跳躍』を手に入れる。

 四、腕立てをして『豪腕』を手に入れる。


 この四つを取得する事により計画は完璧に遂行されるだろう。




 さぁ、実行の時だ。

 隠遁で存在を薄め、俊敏で素早く風呂屋の裏手に移動する、そして跳躍で飛び窓に手を掛け、剛腕で窓にぶら下がる。


 ――――成功した!

 俺は女風呂の窓にぶら下がった! 隠遁も完璧に俺の存在を薄めてくれている。待ちに待ったこの瞬間、後は窓を開けるだけだ!


 ――――ガッ。ガチャガチャ。


 鍵が……閉まっている。


 その瞬間、俺は悟った。

 所詮ガキの考えだ。そもそも、コレを考え付いたのは俺だけだろうか? そう思った瞬間、スキル『賢者』を取得した。

 そしてその賢者で更に悟った。

 そもそも俺は、家のばーちゃんの付き添いで風呂屋に来た。ヨボヨボなので付き添いが必要なのだ。ここで待ち合わせた友達と長風呂を楽しんでいる。だからこそこの計画が遂行出来たのだが。


「そもそも成功してもばーちゃん達しかいねぇじゃねぇか!」




 今回取得したスキル『賢者』で次は完璧に計画しよう。

 次は必ず成功させる!




※のぞきは犯罪です。ダメ絶対!


そもそも成功しない。

そして隠遁だけで出来る事に一生気付かない……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ