天使の寄り道
ひだまり童話館「ひらひらな話」参加作品です。
あるところにジュンとジェンという天使がいました。天使は人間へ幸せを届ける役目を担っています。
実は天使にも人間と同じような会社があるのです。そこから人間界へと派遣されていくのでした。
ジュンとジェンもその会社の一員。いつも人間のために働いていました。ジュンとジェンは名前が似ていることもあり、仲良く仕事をしていました。
天使たちは、大きな壺に水を張り、そこから人間を眺めていました。それで人間を助けに行くのでした。でも、人間を助けるのは容易ではありません。天使たちは修行を積んでいくのです。
人間の会社と同じように、新人が入り、主任、係長、課長となっていきます。それぞれの役職に応じた仕事を割り振られるのです。
例えば課長だと、天使をまとめる役目。係長は人間の生死に関わること。主任は大人同士の人間関係に関すること。その他の天使は子どものケンカに関すること。そのような区別がつけられていました。それで天使の会社は、順調に回っていました。
「ジュン、ジェン!」
二人はいきなり課長に呼ばれました。
「子どもたちのケンカでいじめられている子がいるらしい。一人だと無理だろうから、二人で行け!」
「はい!」
ジュンとジェンは仲良く人間界へと降りていきました。
すると、子どもたちはケンカをしているというよりは、一人の子どもを無視しているようです。
ジュンとジェンは困りました。今まではケンカの仲裁をする程度だったからです。でも大切な任務です。ジュンとジェンは顔を見合わせ、頷き合いました。
ジュンとジェンはこの子どもがどうしていじめられているのかを調べました。すると、ラインで返信をしなかったからだとわかりました。
ジュンとジェンは、その子どもにそっと囁きました。
《皆にラインで謝ってごらん》
その子は、はっとしました。そしてスマホを取り出すと、皆にラインを送ったのです。それを見た他の子どもたち。クラスはざわざわとしました。でも、ガキ大将の男の子が、「誤解してごめんな」と言ったのです。他の皆も、いじめられていた子の所へ集まりました。もうこれで大丈夫でしょう。
ジュンとジェンはほっとして、笑い合いました。
そして、ちょっと寄り道……。ジュンは「あんまん」が、ジェンは「肉まん」が好きなのです。二人は小さな子どもに姿を変えて、コンビニへ買いにいきました。でもこれは内緒。上司に知られたら怒られるからです。
満腹になった二人は天使の会社へ戻りました。
すると、課長が二人を呼びました。
「お前たち、寄り道をしたな?」
何故ばれているのでしょう。それは、二人を心配した課長が、水の壺から見ていたのです。
「この平社員! きちんと仕事しろ! 全くお前たちは、二人で平平社員だな。」
二人は顔を見合わせ、笑ってしまいました。平社員×2。たしかにひらひらです。
「何を笑ってる!? 次の仕事へ行け!」
課長の雷が落ちました。
二人は慌てて自分の席へ戻り、今日の報告書を書いたのでした。