ナイルを沿い上る
ブラギム・ジャビは闇の中で、ナイル川のほとりを眺めていた。風が舞い、砂埃が空高くに舞い上がった。暗い闇が彼を包み込んでいた。齢二十七。砂埃以外で体を包むのは絶対の自信。魔法を使う者として一つの頂を得る目前に居る。明後日は、最強を自負する己の力を試す、唯一無二の舞台が用意されている。彼は今言い知れない高揚を感じていた。
魔法走。魔法をもって、走破する競技。ブラギム・ジャビはその選手の一人だった。明後日、世界大会であるアズハル・レースが魔法走発祥の地とも言われるエジプトで行われることになっていた。
「ジャビ――ここに居たのか」
背後から声がかかる。
「カール」
振り返れば、暗い闇色の空。その手前に、チームメイト、カール・スティグタが立っていた。
ジャビが立っていた場所はナイル川に臨んだホテルの屋上だった。屋上の縁から、ナイル川を眺望していたのだ。
「何をしていたんだ?」
「川を眺めていた」
「川? 何故? 緊張しているのか?」
「いや、高揚している。カール、お前は?」
「おれもだよ」
カールはジャビの隣に並び、同じく暗い夜の川を眺めた。並べば、カールの長身が強調される。
「川を見ていると、故郷を思い出す」
ぽつりとジャビは言う。
「ジャングルをか?」
カールが訊ねた。
「ああ、アマゾンの巨大な川を」
「へえ……故郷に帰りたいのか?」
「いや、そんな気持ちは微塵もない。自信に満ち溢れている」
ジャビは強い語調で答えた。
チームメイト、カールとの付き合いは浅い。そもそも、ジャビ自体がアメリカでの魔法走歴が短い。おまけに青年期までを、ジャングルの奥地で過ごしていたため、ナショナルチームメンバーとは浅からぬ溝がある。ジャビは浮世離れしている。周囲にはそう見えるし、事実そうなのであろう。
カールはチームのリーダーであるため、ジャビをしばしば気に掛けている。チームレースである以上、チームの結束は必要だ。別にチームの輪を乱すつもりはない。リーダーのカールには、従順に行動しているつもりだ。
だが、どうでもいいことだ。自負があった。
己の実力を。己の希少を。
一般人と異なる環境で育ち、常識の異なるジャビを、監督が、合衆国が採用したのはまさに希少性と実力がためだろう。
「カール、走らないか、少し」
ジャビはふと、そう誘った。急にこの夜空の下で走りたくなったのだ。魔法走の聖地と呼ばれるエジプトのこの地で。
「ん、何だ? どうした」
「明後日はチームレースだ、俺は自由に走れない」
「そうだ。リーダーであるおれの指示に従ってもらう」
「なら、今夜が、この聖地を自由に走れる最後の機会だとは思わないか?」
「一理あるな。だが、コースを走ることは出来んぞ」
「いいさ、俺もお前も、コースを必要としないだろう?」
「面白い、乗った。サシで走ってみたいと思っていた」
カールの答えを聞き、ジャビはホテル屋上の縁に立つ。
眼下は暗きナイル川が図太く永延と伸びていた。背後は煌びやかな光が躍っている。
カールもジャビに並び縁に立った。
「どこまで行くんだ?」
「海はどうだ? 海まで行き、折り返してこのホテルへ戻る」
「ナイル川に沿ってか? 片道五十キロはあるぞ」
カールは失笑した。
「そうなのか……知らなかった」
実のところジャビは未だに地図の見方が分からない。
「いいさ、走ろう。五十キロ、肩慣らしに丁度いいさ」
カールが言う。
刹那だった。ホテル屋上の縁からカールが落下する。ジャビもカールとほぼ同じタイミングで、落下。強い風がジャビを打つ。激しい重力、風。微量の砂の礫が体に触れた。あるいは気のせいかもしれない。間もなく地上が見えた。
四階建ての建物から落ちたのだ。地上への衝突は刹那だ。
――東より、羽根を、西より、羽を、足には風を
落下しながら目を瞑り、イメージを膨らませ、詩の一節のように囁く。ジャビはジャングルの奥地、隆起した丘の上に立っている。東より鳥の羽根が舞い落ちて来る。茶色の羽根だ。西には鳥、ベニコンゴウインコが枝に止まり、ジャビを見下ろしている。ジャビは手を伸ばす。遥か遠くにあるそれらはジャビの手に収まる。
生きた羽と死んだ羽根を背中に抱え。左翼は赤く健康的な艶を放ち、右翼はやや茶色の交じったくたびれた白色で、半分死んで、半分生きている。半死半生の化け物、ジャビの生まれ故郷の部族の間にだけ伝わる半死半生の化け物を惹起させる。その名をクヂリと言った。
ジャビは今クヂリと同化する。精神一致。
赤と茶の羽と羽根と大きく羽ばたかせ、低空から上昇する。上昇しつつひたすら北を目指す。蛇行するナイル川に沿って行けば、やがて海が見えるだろう。
■
ジャビは南アメリカのジャングル奥地に居を構えるグボルテ族で生まれ、そこで生涯を終える予定だった。外の世界については、ジャビは漠然と知っていた。だが、外とは即ち死の世界だった。異能な人々、自然と決別した、人をやめた、悪魔たる生き物。それらが住む世界だと、長老から教えられた。外との接触は厳禁だ。それが一族――村の掟だった。村の掟を破れば、追放が待っていた。
「お父さんは海を見たの?」
「一度だけな」
十二歳、ジャビが海という存在を初めて知った時だ。
父親は村の野伏だった。野伏は、偵察や遠征を行う職業だ。部族を守るため危険にさらされる職業でもある。
村の男の子たちは皆、戦士か野伏に憧れた。次点で魔術師だ。いずれも村を守り導く重要な職業で、一握りの村人しかなれない。ジャビはその中でも野伏になりたかった。村から外へ、掟を破らずに出ることのできる唯一の職業だったからだ。
だからジャビは野伏である父を尊敬していた。
「海はな、青いんだ」
「青い?」
「そうだ」
「空や川と違うの?」
「空よりも、なお青い。濃く毒々しい色だ。川とも違う。広さが違う。とてもではないが、泳いで渡れはしない」
「父さんでも?」
「ああ、無理だ。誰にもできないさ。野伏でも魔術師でも」
そんな場所があるのか。是非この目で見てみたかった。外の世界には悪魔が跋扈し危険だ。だから力が必要だった。圧倒的な、悪魔にも対抗できる力があればいい。
ジャビは既にその時、魔術師としての才覚を発露しつつあった。父親には魔術師になればいい、と言われていたが、目標は父親と同じ野伏だった。――ジャビは鍛錬を怠らない。
■
「エジプトは砂漠が広がっていると思っていたんだが」
ジャビは言う。すぐ真上には、カールが飛んでいた。
「へえ、エジプトが砂漠だってよく知っていたな」
カールが笑った。チームメイトがジャビの無知を笑うのはいつものことだ。だが、別段そのことに、ジャビは嫌悪感を覚えない。彼らも本気で嘲笑っているわけではなかった。
「勉強したからな」
ジャビは答えながら、体内調節を行う。魔力放出は適切だった。五十キロ飛べば海につく。往復で百キロ。問題ない。明日が大会当日というならまだしも、本番は明後日だ。
眼下には、商業施設や住宅地が密集している。砂漠の風景などは広がっていない。森林さえもある。
「まあ、エジプトは曲がりなりにも魔法国家だ。明後日は気を付けろ。やはり本命はエジプトチームだ。現代アラビア語系統なら、ドクターが分析しているが、あいつらここぞというときに古代アラビア語や古代詩韻律を織り込んでくる」
カールが言った。ドクターとはチームメイトの一人で、チームをサポートする役割を持つ人物のあだ名だった。
本命はエジプト……か。
魔法はイメージの凝固により行使される。魔法行使の手続きには、最低限詠唱が必要であった。詠唱がイメージの方向性を決定する。例えば水と発音しながら炎のイメージを作り出すことは難しい。水と発音すれば脳裏に水が想起され、魔法は形を得、顕現する。それ故同じ言語話者が相手であれば、詠唱内容から魔法の内容も推測でき、対策を立て得る。
国力と求心力を急速に落としつつあるとはいえ、魔法においては相変わらず最先端をいくアラビア諸島主要言語のアラビア語や、アメリカ合衆国の経済・軍事力を牽引とし、国際言語としての地位を確立しつつある英語などは、魔法を扱う人間ならば当然の教養だった。そのため、魔法競技において英語話者やアラビア語話者は、古語や詩的修辞技法、臨時造語などを織り交ぜ、生粋の言語話者に対抗するわけだ。
「――俺には関係ない」
ジャビは言った。
そもそも、関係がなかった。アラビア語なんぞ端から知らぬ。英語でさえ、ここ一、二年で自由に喋れるようになったに過ぎない。詩の修辞技法・古代語なんぞ知らない。
だから関係ない。予測や予想、対策など不要だ。ただ自分の力を信じてゴールへ向かって飛べばいいのだ。
――風を強く蹴り
速度を更に上げた。吹き付ける風の中に微量の砂埃が混じっているのを、ジャビは感じた。カールは遥か後ろであろう。圧倒的な魔力、圧倒的な速さをもってジャビはカールを引き離している。
ジャビの魔法言語は、当然グボルテ族の言語に起因した。グボルテ族は、多く見積もってせいぜい数百名程度の人間しかいない。魔法走でこの言語を操れるのは、即ちジャビしかいない。誰かに対策されることなどないのだ。
「それに、カール、俺は思うのだ! 対策? 予測? そんなことして何になる? 圧倒的なスピードを前に、その予測や対策なんてものは、逡巡にしかならない! そんなことをする間に、ただ一人で! 独走で! 俺がゴールする!」
夜の闇。地上から五十メートル。ジャビはそう叫んだ。地上の誰か一人くらいは、ジャビの声に気づいたかもしれない。
■
ジャングルの奥地。鬱蒼と茂る木々。空はいつだってその木々に阻まれていた。
木に登るのは、グボルテ族では必須の能力だった。
だが空を飛ぶとなると話は別だ。飛行魔法は、魔法を取り扱う職の魔術師でさえ習得・使用が禁じられていた。飛行魔法が許されているのは、唯一野伏だけであった。そもそも村人は飛行という概念すら知らなかったはずだ。野伏の父親を持つジャビでさえ、彼自身が野伏になるまで知らなかった。
思い出す。あの時の感動は凄まじく鮮烈に、ジャビの脳裏に刻まれていた。
鬱蒼としたジャングルを抜け、飛び出す。天井に映えわたる蒼天の空。川を下り見た、大海の光景。そして、悪魔の世界。彼が住むジャングルの地から遠く離れた場所で、ジャビは世界の広さと、グボルテの狭さを知ったのだ。そして海。毒の青。海の存在を知覚したのが、その十五の時だった。
一度その存在を知ると、海を目指さずにはいられない。あの海という存在に飛び込みたい。ジャビは思った。川でも湖でもない遥か彼方へ走る群青世界。水平線という、グボルテでは拝めない至大なる景色。
悪魔はそこで泳ぐという。
なにを。我とても野伏。ジャングルに住むグボルテ族は元来が木に馴れ川に馴れている。俺は、野伏。だから悪魔に負けることはない。俺は強い、速い、だから――
「ジャビ、奴らに絶対関わるな」
父は冷淡に言った。悪魔と関わってはいけない。関われば即ち追放。村の掟だ。そしてジャビは追放された。
■
時刻は〇時ちょうどだった。チームメンバーと食事を終えたのが十一時半を過ぎていた。そこからそのままホテルの屋上に上がって、夜中のナイル川を眺望し、酒で火照った体を覚ましたのだ。カールと話したのは数分に満たない。逆算すれば、走り始めて既に十五分ほどが経過したことになる。
何キロ走ったのか。距離はわからない。海まで五十キロ、とカールは言っていた。
あと三、四十分もすれば到着するはずだ。夜風が気持ちよかった。眼下の光景は騒々しい。エジプト――静かな夜、砂、幻想的……そういったものを想像していたが、全くそんなことはなかった。川の傍は緑にあふれている。それに建物。煌々と光が見える地域もあった。未だにジャビは砂漠らしい砂漠を見たことがない。
もっとも見晴らしはよく、気分はいい。画一ばった合衆国には無い風景だ。南米ジャングルにもない景色だ。
ジャビは蛇行するナイル川に沿って飛行を続ける。
ふと右手側に気配を感じた。
振り返ると闇のその先には、カールが飛んでいる。いつの間に……追いつかれた。
「飛ばしすぎだぞ、本番さながらじゃないか」
カールが言う。
「いい練習だろう?」
ジャビは内心の驚きを隠しながら笑った。事実そう思っている。何もない空をひたすら飛び続ける。終着地は海口だ。
「そうかい、じゃあおれも本気を出すぜ」
カールが言う。強風が吹き付けた。カールは高度を下げる。そのまま、地上に降り、地に足をつけ走り出した。地上が俄に騒然となったように見えた。
馬鹿な。飛行の俺に、強化で競おうというのか。
魔法走には幾多ものスタイルがあるが強化型と飛行型がメジャーなスタイルだった。地べたに足を付け魔法で脚力を強化する強化型。宙に浮き空を飛ぶ飛行型。強化型は消費魔力を抑えられる一方速度は心許ない。飛行型は消費魔力が大きくはなるが、速度面で強化型を上回る。
カールは万能タイプだった。チームのリーダーでありながらチームを補助する役回りが、彼の得意とするところだった。飛行も強化も、上手に熟す。一際光るものはないながら、リーダーとして彼は十分チームに貢献している。
対してジャビは飛行一本槍の男であった。ただその一点。彼が野伏として、十五の時から飛び続けた累積。それが頼りで誇りだった。だから地に降りたカールに負ける道理はない。
俺が先に海につくさ。ジャビは嘲った。
潮の匂いはまだしない。海はまだ先だ。
■
村を、一族を追放されたとき、彼はひたすら北を目指した。その先に海があるのだ。海。そこへ行けば何とかなる。そんな気がしていた。追手の野伏がジャビの後ろに迫っていた。
ジャビは悪魔と接触を持ってしまった。彼らが作る「何か」に惹かれた。彼はたとえ悪魔に襲われたとしても返り討ちにする自信があった。だが……本当の脅威は身内にあったのだ。
長老が下した判断は追放。そして、その追放とは、村から追い出すという意味ではなかった。
「クヂリの神から審判が下った。お前は死ぬ」
父は言った。実の父親だ。
野伏はそういった役割も持っている。追放者の抹殺。
父親は半死半生の神クヂリの名を出し、幾人かの野伏で取り囲み、死刑宣告を、息子に言い渡したのだ。これが追放。
いやだ。死ぬか。
泣きながら、ジャビは逃げ出した。
すかさず野伏達が追う。
もう背後に、居る。父親がこの俺を殺そうとしている。いや、神だ。クヂリが俺を殺そうとしている。死にたくない。
海の向こうだ。
――悪魔達は海を泳ぐんだ。
かつて父親はそう教えた。海だ。海こそ死の象徴ではないか。海に逃げれば。あるいは……。
だから海を目指したのだ。そして、チグリとジャビが同化したのもその時が初めてだった。
詠唱開始。ジャビは魔法を行使する。イメージ増幅、凝固、チグリと同化。そして、空を疾走。生死を分かち海を目指す。
■
今も海を目指している。だが、必死さはない。余裕だ。地に降りたカールごときでは、俺に追いつけまい。
そう思っていた。だが背後に重圧を感じ、ジャビは振り返った。カールだった。まさか。
彼は涼しい顔をして、あっという間にジャビを抜き去る。慌ててジャビは魔力出力を上げ、速度を上げ、カールを追う。
「伊達に、リーダーをやっているわけではないということか」
ジャビが叫ぶ。
「まあな。ちょっと火が付いたぜ、悪いけど、勝たせてもらう。先に海に行くのはおれだ」
カールも吠えた。
まさか。そんなこと許されるわけがない。ジャビはこの十二年間ただひたすら飛び続けたのだ。誰にも負けない。負けるはずがない。サシで勝負して負けるなど……!
だが、一向にカールを抜き去ることはできない。
ふと時計を見る。既に飛び始めて四十分近く経過しているようだった。潮の匂い。暗い闇の先に広がる海。ゴールは間もなく――強風が吹きつける。
ああ、そうか。強風。この風のせいだ。風を避けるため、カールは地上に降りたのだ。そして、地上で力と魔力をセーブしながら走った。ゴール目前の今、全力で飛び、抜きにかかったのだ。対して自分は風にあおられ魔力を浪費している。そんな初歩的なミス。酔いのせいか。カールは依然前を飛ぶ。
抜けない。糞。糞。糞。ジャビは吠えた。村を追放されて、辛くも逃げ延びてから、十二年。この十二年を思った。辛い十二年だった。不法入国し、刑務所に入れられ、言語が通じず、生きていく手段もなかった。その苦痛を耐え忍び、郷愁の想いを殺し、空を飛び続けて、生きてきた。
たとえ、公式戦でなくとも負けられない。ジャビは残りの魔力全てを絞り切り、詠唱を。あの、魔法を行使――
――東より、 目を瞑り、想像を膨脹させ、目を開き
――羽根を、 東を見、茶色い羽根を想起、砂が消え
――西より、 西を見、枝の鳥を惹起、エジプトは滅し
――羽を、 そして背中には羽と羽根、密林を創出
――足には風を 足は風と同化、イメージは完了する。
生きた羽と死んだ羽根を背中に抱え。左翼は赤く健康的な艶を放ち、右翼はやや茶色の交じったくたびれた白色で、半分死んで、半分生きている。半死半生の化け物、クヂリ。
死んでいるような気分。それと同時に、本当に自分は生きているのだという強烈な生の実感。
風に対して感覚を失し、自身が風となったのだという確信。
カール。そんなものはいない。激しい水音。口の中に潮の味が広がる。海口。ジャビは海に突っ込んだのだ。
そのまま砂中へ深く沈む。
海は浅く、ジャビは立ち上がった。海水を吐き出す。
「シャレにならない速さだな、嫌になるぜ」
カールの声が隣からする。どちらが先に到着したのか……。
「全く、一応アメリカを背負うリーダーなんだけどな。新参に負けるとプライドが傷つく」
カールも海へ入り、ぐったりと座り込んだ。
そうか、俺が勝ったのか。ジャビは彼の言葉を聞き、ようやくそう理解した。
勝ったことがわかるととたん笑いがこみ上げてくる。
「なんだよ、笑うなよ。本番もその調子で頼むぜ」
「ああ、ああ、もちろんだ」
ジャビは笑った。爽快さと満足が彼を包み込んでいた。
カールに勝ったということはもちろん嬉しい。だがそれ以上の何か。それがジャビを満足にさせている。それが何かは分からない。死を想起するような、激しいやり取り……闘いが満足の原因か? ともかく、明日はアズハル・レース。世界大会。俺は十分闘える、と胸の内で呟いた。
<終わり>
https://ncode.syosetu.com/n9414cv/「魔法走――九人の走者――」
と同じ世界観の話。読んでいなくても大丈夫なように書いたつもりです。