↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のものは僕のもの  作者: ユメオニ
PR
14/23

その14

「つくし山公園とかは?」

僕の家と葉月さんの家の中間的な位置にある公園の名前をあげた。両親がいないとはいえ、女の子を家に呼ぶなんて、恥ずかしくてできなかった。

「いいけど」

30分後、つくし山公園で待ち合わせた。その日はこの冬一番の寒さとニュースで言っていただけあって、とても寒かった。やっぱり家で渡せば良かったかと少し後悔した。葉月さんはベージュっぽい色のダッフルコートを着て、赤いマフラーをしていた。頬が少し赤らんでいた。

僕が水色のブックカバーの本を渡すと、葉月さんはありがとう、と小さな声で言い、ぺらぺらと捲った。

「……私の本だ」

「うん、ごめん……」

「何で謝るの?」

「分からない。でも、多分、僕のせいだ」

「何故?」

葉月さんの黒目がちな瞳が、いつも以上に深く、黒く輝いていた。

上手く答えられなかった。君のことを考えていたせいだ、なんてことが言えるはずもなかった。でも、そういうことだ、僕はずっと彼女のことを考えていた。冬休みに入って、葉月さんに会えないことを寂しく感じていた。こたつの中でうつらうつらと、葉月さんのことを考えていたのだ。

僕は何も言葉を発さなかったが、彼女の頬はさっきよりも大分赤みを増していた。もしかすると僕の考えていることが彼女の心に届いてしまったのかもしれない。本が何キロも離れた家を行き来したのだから、思っていることが彼女の心に瞬間移動しても何も不思議はない。

「その本、面白い?」

沈黙が気まずかったので、尋ねた。

「私は好き。でも結構ベタベタの恋愛小説だから、男の子にはどうかな……。安城くんも本とか読む?」

それから僕らは、公園のベンチに座って30分ほど本について話した。学校以外の場所で、葉月さんと、葉月さんじゃなくても学校の誰かとそんなに長い時間ちゃんと喋ったのは初めてのことだった。

それは、とても楽しめる時間だった。少なくとも僕は、その日がこの冬一番の寒さであることを忘れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。