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我こそは黒歴史を歩んだ者なり

 黒歴史。

 人は希に、なかったことにしたいほど恥ずかしい過去を持つことがある。

 俺、如月俊介(きさらぎしゅんすけ)はその黒歴史を持っている。


 俺の黒歴史。それは所謂厨二病だった頃の話だ。


 俺には特別な力が眠っている。


 この世界は神々が創りし世界である。


 星ができたのは神々が争った時の副産物である。


 等といったことを思い込んでいた時期が俺にもあったのだ。

 ここまでなら、俺の黒歴史はかなりイタイ話で終わる。ここまでにしていれば、俺の厨二時代はただの記憶でいられた。


 だが、俺はその厨二時代の”設定”を全て、一冊のノートに綴ってしまったのだ。


 ”黒歴史ノート”


 誰かに見られでもすれば確実に自殺できる。

 恥ずかしさが天元突破してしまうレベルだ。

 捨てればいいなんて思うかもしれないがそれでも、俺は黒歴史ノートを手放せずにいた。


 そのノートは腐っても俺の精神の成長のあかしであり、こんなこともしていたなぁなんて妙にほっこりする自分がいるからだ。


 いわばお守りのような感じに昇華してしまったノートさんなのだ。


 捨てるに捨てれなくなったノートを勉強机の引き出しの裏に貼り付けて隠し、俺は今日も高校生活をそこそこエンジョイしていた。


 朝早く登校し、友達としゃべり、学校一の美少女たる菊野鏡花(きくのきょうか)さんを心の中で拝み、授業を受け、昼休みに弁当を食べるついでに菊野さんを心の中で拝み、放課後になって最後に菊乃さんを心の中で拝んでから校門を出ようとした。


 すると突如、辺りが真っ黒な雲に覆われたのだ。




 黒歴史ノートはじめ


 空が黒き雲に覆われし時、久しく忘れていた神々の存在を思い出す。


 長き休戦の協定が過ぎさり、神々は全てを掌握する座を賭けた戦いを再開する。


 休戦の間に生まれた星、地球を舞台として。


 そして人類は知る。


 その強大な神の存在を。その圧倒的な力を。


 神々の力は混沌を呼び、黒く染まった空からは魔物が生まれ降り注ぐ。


 混沌を呼んだ神々の力は、人類を強くした。


 適正を持つ人の子は神々の力の影響を受け、超常の力を呼び覚ました。


 覚醒した人の子は神々のことを思い出し、戦いを止めさせんと超常の力を振るおうと誓う。


 ふと、俺は思いだす。


 我こそが、黒く染まった空に顕現する5柱の神々を打倒せし力を持つと。


 これは、神々の戦いに終止符を打つ、戦いの記録。

 その一部始終をこのノートに綴らん。





 黒い雲に覆われた空に現れたのは5つの光。


 その光に共鳴するように淡く光る人々。


 そして空からは異形の怪物たちが降り注いでいた。


 そんな光景の中、俺に走ったのはとある記憶。その記憶は激しい戦いの記憶だった。

 そして5つの神の化物じみた大戦の記憶だった。

 そんな中俺はそいつらの戦いに横槍を入れ無理やり休戦の協定を結ばせたのだ。

 そこまで思い出したときに俺は悟った。


 「おい、嘘だろ。これ、これ・・・」


 無理もない。既に混沌と化した世界で少年は確かな使命と向き合わなければならないのだから。



 ・・・と普通なら思うだろう。だが、少年はこの”設定”に覚えがあった。

 神々の戦いを終わらせ再び世に平穏を取り戻す少年の物語。


 という設定。

 これまでの人生で力を蓄え神々が動き出したその時、真の力に目覚める少年の物語。

 

 という設定。


 「これ、俺の黒歴史じゃねぇかぁぁぁあああああ!!!」


 人には知られたくない恥ずかしい記憶の一つや二つあるだろう。


 今、少年のそれは世に解き放たれたのだ。


 「ありきたりな俺TUEEEEとか発揮しちゃってどうすんだよ!!つかあれ絶対黒歴史だよね!!?俺の黒歴史の塊だよね!!!?なんでこんなことになったあああ!!?」


 周りがパニックの中、少年は叫んでいた。 

 何もかもが見覚えのあるシチュエーション。対処法もすぐに浮かび、どう魔物なるやつらを対処すればいいかもすぐに浮かんできた。


 「ハハハ。おっかしいなぁ」


 きっと少年がネットスレを立てるならこう立てるだろう。


 ”俺の黒歴史が現実になって愧死しそうな件”

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