伊予情勢
親泰と親直に内政面を任せることが出来た元親は、来る対外進出に向け、他国の情勢に目を向けるのでありました。その結果得た結論の1つが
(……土佐を出なければ誰も攻めてこない……。)
と言うものでありました。瀬戸内や日本海と言った物流の大動脈に位置しているわけでも無ければ、ダイレクトで畿内へ辿り着くことも出来ない。それでいて土佐の国自体。必ずしも都会と言うわけでは無い。平野が少なく、海からの大水に弱い。それなりに拓けた町は存在しているのではありますが、その町々を行き来するには複雑怪奇な地形が災いし容易では無い。治めるのに苦労する割には得るものが少ない……。そんなところに兵を送り込めるだけの余裕と理由が他国には存在しない。もし私が逆の立場であったらなら、たぶん土佐は後回しにする……。このまま引き籠るほうが賢い選択肢なのかも?……だよな……。こんな切り取り勝手好き放題の時代に、じっくりと腰を落ち着けて治水事業にあたれるような国……。ほかにないよな……。そんな思いにさせられる程、土佐を除く四国各国は激動の時代を迎えておりまして。ここ土佐から他国に進出しようとした場合。考えることの出来るルートは2つ。1つは北の伊予。もう1つが東の阿波。このどちらかになる。この両国を平定すれば土佐は他国から脅かされる心配の無い安全地帯となる。是が非でも手に入れたい場所なのではあるが。
まずは北の伊予。ここは当初、瀬戸内に勢力を張る川野家が治めていたのでありましたが、備前の浮田家の進出により川野家は滅亡。そのまま浮田家の治世が続いている状況。いづれ戦火を交えることになるのでありますが、気になるのはその後でありまして、伊予の周囲には浮田家の本拠地とも言うべき備前を始め、四国の讃岐。瀬戸内海を挟んで安芸に周防。豊後水道を越えた豊後と境を接している。今、伊予を攻めた場合。自動的に備前との関係が悪化するのは仕方ないとして、問題となるのが残りの4国。その内の1つ讃岐については、讃岐自体がそれ程大きな国では無いことに加え、讃岐に位置する勢力はどちらかと言うと紀伊水道志向であるため積極的に伊予情勢に関与して来ることは無い。むしろ気にしなければならないのが豊後の大伴と安芸・周防の藻利の両家。共に対外進出志向が強く、瀬戸内情勢に積極的に関与してくるところがある。ただこれまで藻利は中国地方制覇に傾注し、大伴は本拠地である九州での騒乱に忙殺されているため渡海することは無かったのでありましたが、全軍を持って伊予に乱入して来るとなると。厄介な敵となる……。勝利を修めた後のことを念頭に置きながら。で無いと、折角の戦果を失うばかりか。安全なハズの土佐をも奪われることになりかねない……。しっかりとした備えが必要となる……。
一方の阿波のほうは?と言いますと