弟
私。元親が
(自ら推し進めた新田開発の失敗を覆い隠すべく始めたことではありますが。)
自らつるはしを担ぎ土佐国内の治水事業に孤軍奮闘の日々を過ごしてきたのでありましたが、ここに来て漸く我が長谷部家を担うべく新たに3名の人材が無事元服の時を迎えることになりまして……。その内、純然たる家臣として登場することになったのが久剛親信の弟・久剛親直。この親直は兄・親信のような武勇の人と言うよりはむしろ内務に才を発揮するタイプ。期待のホープなのでありますが、どうも兄弟の仲が良くないらしく……。親信曰く
「もし私に何かあったとしましても、けっして後任に親直を用いてはなりませぬ。」
と……。治水事業において全く持って成果を挙げることが出来ていないことを根に持っての発言なのか。定かでないが、当面は親信の門外漢である河川改修事業をお願いする運びとなりました。仕事ぶりを見る限りでありますが
(……親信は何故あそこまで弟のことを悪く言うのであろうか……。)
なのではありますが……。
残る2人は私の弟。親信とは異なり、兄弟喧嘩を引きずるタイプでは無い故。今後、彼らに重要任務を託すことになる優秀な人物なのでありますが、1人は次兄の生良親貞にもう一人は三男の香部親泰。私と苗字が異なるのは共に他家の養子に入っているから。勿論請われての婿入りでありまして、けっして勢力拡大のため乗っ取りを図るために送り込まれた刺客と言うわけでは勿論ござらぬ。全て平和裏の内。父上がそれなりの地ならしを施してはいたと思われるのではありますが。
(日本は根回しが大事でありますからね……。)
今はすっかり我が長谷部家の一員として両家と良好な関係を築いているのでありますが。この2人の弟は、それぞれ異なる個性を持っておりまして……。どのように違うのか?と言いますと。
まず次兄の親貞につきましては、どちらかと言いますと武勇に長けたタイプ。だからと言って内務に支障を来すわけではありませんが。忠誠度に問題無く、一国を任せるに打ってつけの人物なのではありますが、彼を国主にしてしまいますと
(……行動出来る範囲が限定されることになってしまう……。)
そのため、いくさの際。副将格として活躍して頂こうと考えているところであります。
一方、三男の親泰はどうか?と言いますと。手前味噌で言うのも何ですが、一言で表現させて頂きますと
(優秀。)
もちろん長兄である私には及びませぬが、
(父・国親よりも優秀。)
しかも
(義理堅い。)
来る勢力拡大の折には分国を託す人材として飛躍してくれることを期待しているところであります。
彼らを合わせて総勢7名となった我が長谷部家。
(……これでやっと自分の仕事をすることが出来る……。)
と元親が視線を送った先にあったのは……。