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誰にも言わないで!  作者: 山吹カオル
9/22

見に行きたい

 「カナエとそんなに中学や小学は仲良かったの?」とフルカワさん。「でもそんなに話もしない感じだったじゃん中田さんとカナエ。急にここ何日かでカナエが中田さんの事ちょっと構ってる感じするよね?」

私の心を見透かそうとするようなフルカワさんの目とキツめの口調。

「カナエ、なんか感じ悪いもん今日うちらに」と続けるフルカワさん。「何かあったでしょクラス会で。気になるから教えてくんない?朝一緒に来たの、本当に忘れ物があったから?」

「…」



 そこへキタガワも戻ってきた。

 フルカワさんと一緒にいる私を見て、助けてくれるのかと思ったが、しらっと自分の席に戻ろうとするキタガワにフルカワさんが聞いた。

「ねえカナエ、中田さんとほんとはずっと仲良かったの?」

ふん?という顔をフルカワさんではなくて私に向けるキタガワ。そしてフルカワさんに聞く。

「中田は何て言ってる?」

「え?」とフルカワさん。

そういう答えが帰って来るとは思っていなかったんだろう。

「中田さんにもまだ聞いただけ」とフルカワさん。「何にも教えてくれないんだも~~ん」

「へ~。あ、そう」

そのままキタガワも答えずに自分の席についてしまった。



 「ほらね」と私に言うフルカワさんの目を反らす私。「今日感じ悪い」

いや確かに私もさっき感じ悪くエザワ君の事聞かれたけど。

「もう!…」と小さい声でフルカワさんは言っていたが、その後はもう私にも何も聞かずフルカワさんも席に戻ってくれた。





 6時間目が終わって担任の水本がやって来た。帰る前の10分程のショートホームルームだ。

 あれ…今水本先生、メッチャ私の事見て来るんだけど…バッと目を反らしてしまう私。チラッとキタガワを見るとキタガワも私を見たが優しくない顔だ。…イヤだな…と思って前を向くとまた水本と目が合い、先生はニッコリと爽やかに笑った。

 「きゃ」「え、ヤだ」「へ?何」と何人かの女子がとたんに色めきだち、教室の端の一番後ろの席の私の方をパッと振り返る。

 …なんだろう水本…弱み握ってる感を出してきてるような…

 それでも水本は明日の連絡事項を淡々と読み上げると、とっとと教室から出て行った。


 隣のカイハラさんに聞かれる。「水本先生と何かあったの?」

 水本先生と何かあったの?

 カイハラさんの質問を心の中で繰り返す私。ものすごくキラキラした目で私を見るカイハラさん。

「いや、別になんにもないよ」

キタガワといるところを変に絡まれただけ、とは正直に言えない。

「なんか今中田さんの方を見て笑ったぽかったから」

ふふっ?という感じでカイハラさんが小首をかしげて聞くので、気のせいだよと慌てて言った。

「そう?先生さ、とぼけた感じ出してるけど、結構カッコいいよね!」

ニッコリと可愛く笑うカイハラさん。

「…うんまあ」

ちょっと胡散臭い感じもするけどね。

「え?カッコ良くない?私結構好きな感じなんだけどな」

カイハラさんが言うので、つい「うん」と言ってしまうと、「ね~~~」とニッコリ笑ってくれた。



 

 朝練はなかったが放課後は普通にキタガワは部活があるので、帰りは一緒には帰らない。

 もし部活がなくて一緒に帰ろうと言ってくれたとしても、教室から一緒に出るような事はもうしなかったと思う。

 私の通うやまぶき高校は大学への進学を希望する子が多い高校なので、土日は試合前でなければ基本部活動は休みで、朝練習も朝礼のある今日の月曜も休みだったし、水曜は学校の方針で全部の部の午後練がない。しかも2年生になったら受験に向けて朝補習が始まるので朝練習に参加するのはほぼ1年生だけなのだ。

 私は美術部なのだけれど、それはもともと運動があまり得意じゃないというのもあるが、美術部は月曜日に顧問の美術の教師が近くの養護施設の子どもたちの指導に出かけるから午後の部活がなく、文科系の部は基本朝練もないから、それを理由に、あまり絵もうまくもないのに入部したのだった。

 朝私と一緒に来てくれたから、キタガワは帰りもバスだ。乗り遅れないように、ちゃんと帰れたらいいけど。



 …1回、キタガワがバスケするところを、ちょっとだけ見てみたいな。中学の時には何回か見た事あったけど、あの頃より背も随分伸びてるから結構カッコいいかも…って何言ってんだ私。先週の金曜までは、小学の頃はカッコ良かったのに、なんでこんな風になっちゃったんだろうって今のキタガワの事見てたくせに。

 女バスの先輩がキタガワの部活を見に来る子もいるって言っていたから、そういう子たちに紛れてちょっとだけ私も見に行っても別に構わないかもしれないけど、キタガワ本人に見に行ったのがバレたら結構恥ずかしいかも。オレを見に来たんだな、って思われるのが恥ずかしい。そういうのってキタガワもきっと恥ずかしいよね。止めよう、そんな事すんの。

 …でも他の子たちは見に行ってんのか…

 

 何かモヤっとする!

 体育も、男子と女子は体育館や校庭を一緒に使う事はあっても授業は別々だ。でも今度授業でバスケやる事もあるだろうし、その時にはこっそり見てみようっと。


 

 帰り支度をしながらキタガワを見たら、キタガワも私を見た。

 『ん』、て感じでちょっとうなずいて見せるから、私も『うん、部活に行って頑張っておいで』、と心の中で思いながらちょっとうなずく。

 そのまま教室を出て行くキタガワ。私も帰ろうと廊下に出るとキタガワが隣のクラスの女子に「バイバ~イ!」と手を振られている。「お~」とちょっと手を上げるキタガワ。そして少し向こうでまた別の女子に手を振られる。「お~」とキタガワ。

 

 んん~~…と、またちょっとモヤっと来かかったとたんに、こっちをキタガワが振り向いた。

 あ、私も手ぇ振ってみようかな…

 ん~~…出来ないよね!やっぱ私は急にそんな事出来ないよ…


 またモヤ~~としかかった時に「中田!」と呼び止められた。

 振り返るとタダ君だ。

「中田、来週の委員会の話だけどさっき高森から渡された…」

言いながらタダ君が、委員会の顧問の高森先生から渡されたというプリントを私に渡してくれる。タダ君と私は今一緒に美化委員をしているのだ。



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