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誰にも言わないで!  作者: 山吹カオル
7/22

まさか私が

「オレらは何?」

近付いた私にいきなりキレ気味で言うキタガワ。

「…」

いきなり言われて言葉に詰まる私をじっと見つめるけど…

 止めて欲しいな、赤くなる。

「またわけわかんねぇ誘い受けやがって」

「受けてない!」

「バカじゃんお前」

「…」

「キヨトにもお前、速攻で否定してたじゃんオレらの事」

「…だって」

「だって何?」

「…」

 だってまだ付き合ってるわけじゃないじゃん。今朝やっとはじめて一緒に学校に来たとこじゃん。


 

 ムッとしているキタガワにもう一度聞かれる。「オレらは何?」

何って言ったって一昨日やっと、ずっと気にし合ってたっていうのが確認できたとこだよね。好きだって言ってくれたけど、でも自分だって休み時間にやって来た女子に聞かれた時に答えるのを迷ってた。

 キタガワが大きなわざとらしいため息をついた。

「まあオレも」とキタガワが言う。「そんな、わざわざ付き合おうとか言って付き合うのはだせえと思ってるけど」


 キタガワが続ける。「…一緒になんか食ったり、つまんねえ事も喋ったり、観たい映画があったら二人で行ったり、買い物行ったり、勉強したりとかしてるうちに、付き合ってるとか彼女だってわざわざ周りに言わなくても、誰が見ても付き合ってるってわかるような、…そんなんがオレもいいとは思うけど」

一緒だ!私もそう思ってる事を、キタガワが凄く恥ずかしそうに言ってくれて胸がキュンとする。

「な?」とキタガワ。

うん!、と力強くうなずく私。私もそう思う。恥ずかしい。恥ずかしくて嬉しい。

 なんだかすごく幸せ…


 「でも」急に冷たい、強い感じで言うキタガワ。「あんな誘いを受けたらお前普通に断れよ」

「…うん」

「付き合ってるのかって聞かれて速攻否定すんな」

「…うん」

でもそんな事したら付き合ってるって言ってるようなもんじゃないかな?

「まだ今1回一緒に学校来たとこだけど…お前も言ったじゃん。その…ずっとオレの事気になってたって言ったじゃん」

「…うん」

「でもお前、今朝もオレと来た事ごまかしてたよな?嫌なの?オレと来んの?」

「嫌じゃないよ!」慌てて言う。

嫌なわけ無い。すごく嬉しかった。

「じゃあなんでごまかす?」

「…女子に…ばれたくない。キタガワの事好きだって思ってる女子にそういうのがバレるのはちょっと…」

「ちょっと何?」

「嫌っていうか…」めんどくさいっていうか…

「矛盾してねぇ?お前、オレが誰にでも優しくしたら嫌だつったろ」

 う~ん…ちょっとニュアンス違うよね。誰にでも優しくしたら嫌、なんじゃなくて、誰にでも優しいキタガワが嫌、なんだよね。説明しづらいけど。

 って、これ、同じ事かな。

 「…ったく!」と悪態をつくキタガワ。



 「それで?」とまだ怒った感じのキタガワだ。「エザワはどんな感じ?」

「へ?」

「今でもいいなって思ってる感じ?」

「…いや…ていうかなんで今そんな事聞くの?」

「聞きたいから」

本当にエザワ君の事聞くんだ…

「一昨日だってお前なんとなくごまかしたじゃん」

 だって、エザワ君の事いいなって思ってたのも、むかしのキタガワに雰囲気が似てたからだよね。でもそんな事恥ずかしくて言えない。


「あれ?カナちゃ~~~ん」

そこで非常口に近い社会科の担任控室から出て来た女子二人にキタガワが声をかけられる。

「どうしたの~~?」とその女子の一人が明るく声をかけて来る。

バッジの色が2年生だ。

「どうしたの?また告られてんの?モテんねえ」

サバサバした感じの背の高い女子二人だ。二人ともポニーテール。

「女バスの先輩」とキタガワが私にその2年生を紹介する。

キタガワはバスケ部でその2年生の女子は女子バスケ部らしい。

 一応ペコン、と挨拶した私ににこにこと優しい目で笑いかけてくれたと思ったら、「「頑張れ!」」と言ってくれる先輩たち。

 頑張れ?



 「カナちゃん、ライバル多いでしょう?」と先輩。「でも頑張れ!邪魔して悪かったけど、ちゃんと告れ~~」

私がキタガワに告ってるところだと思ったんだな?

 違います、と言う間もなくもう一人の先輩が続けて言った。

「女バスでもカナちゃんのファン多いしね。よく見に来てる子たちもいるけど、でも頑張るんだぞ!一人で呼び出せるなんてすごい勇気あるじゃん!」

「いや、先輩」とキタガワ。「そうじゃなくって今…」

「いい!」と口に人指し指を当てた先輩。「秘密!」

「ちょっ…」

キタガワが言いかけるがもう先輩たちは明るく手を振って行ってしまった。やっぱね無駄にモテやがって…という目でキタガワをつい見てしまうが、「なんでお前否定しねえんだよ?」と言われる。

 自分だって話聞いてもらえなかったくせに。



 「ファンとかそういうの言われんのマジで恥ずかしいから」キタガワが吐き捨てるように言う。「バカみてぇ。普通の高校生だっつの。…女子ってそういうので騒ぐの好きだよな。みんなほんとはそこまでオレの事ちゃんと見てねえよ」

見てるよ。見てるから騒ぐんじゃん。何ソレ、何様目線?

「そんな事ないよ見てるよみんな。だから今朝のバスの事だってすぐ言われたんだと思うし。フルカワさんだってキタガワの事好きなんだよ。あの資料集借りにきてた子とかも」

「だからそういうのもだよ、ただそういうのが好きなんだろ」

「…どういう事?そんな…キタガワの事が好きだから騒いでるんでしょ?勇気あると思うよ。アウェーなとこ来て教科書とか借りるって」

「そういうのもほんとはいちいちめんどくせえんだって」

じゃあ貸すな!今まで簡単に貸してたから来るんじゃん!

「中には騒がないでも見てるだけでキタガワの事好きな子だっているんだよ」

「…」

 私も結局見てたけどね。むかしと違う!と思って見てたけど、それは本当はむかし自分が好きだったキタガワと変わらないでいて欲しいっていう事だったんだよね…他の女子に調子よくしちゃ嫌だって事だったんだよね。



 「いや、もう1回言うけど!オレがそんな風な女子に優しくすんのはお前嫌なんだろ?嫌だつったじゃん」

「…嫌だけど」

「だけど?」

「それは嫌だけど…でもね、…あの…土曜日の事とか、…その…私との事、誰にも言わないで!」

「は?」

「いや、ごめん。そんな事キタガワ、自分からはわざわざ人に言ったりしないとは思うんだけど。ごめん。言わないでいて、私のとの事誰にも」

まさか私がキタガワに誰にも言うなって言う事になるとは。

 私をじっと睨むキタガワが聞く。「なんでだよ?」

「だってキタガワが目立ってるからだよ。キタガワを好きな子が多いから。そんな子たちに睨まれたくない」






 



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