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誰にも言わないで!  作者: 山吹カオル
6/22

聞きたい事がある

 「あ、それ何?」私はユウミちゃんのお弁当の中身を指して言う。「美味しそう~~」

「ナカちゃ~~~ん」とユウミちゃん。

頬笑みながらちょっと睨んで見せるユウミちゃんだ。

「今話そらしたよね?やっぱ好きな子来てたんだ~~」

アイちゃんまで言い出した。

「どうなの?それか誰かに、」アイちゃんももちろん突っ込んで来る。「『小学の時からずっと好きだった~~』とか言われたの?」

 ダメだ。ここで絶対キタガワを見ちゃダメだ。二人に気付かれる。二人には自分からちゃんと教えたい。今ここで中途半端な感じでバレるのは嫌だ。

 

 それでも顔が赤くなっているのが自分でもわかる。

「うわ~~また赤くなった!」とユウミちゃん。「やっぱそうなの?すごいな。いいな~うちらもないかな~クラス会」

「え~そんな事言ってユウミちゃん、」とアイちゃんが言う。「昨日のタカムラ君と結構良い感じだったけどな」

「あ~~タカムラ君ね。話うまいよね。女の子慣れしてる感じがしたからな…うまい事私に合わせててくれただけだと思うよ」

困ったように言うユウミちゃん。

「ん~、そっか」アイちゃんがちょっと納得する。



 「うちらもね」とアイちゃん。「写真送ったでしょ?彼氏とその友達とユウミちゃんとで遊園地は止めたけど映画行って…」

 そうなのだ、昨日二人から写真が送られてきていた。楽しそうなグループデートの写真。

 実は私も誘われていたのだが、キタガワがそれを邪魔するようにクラス会の話を持ちかけて来て、結局それはキタガワの嘘でクラス会の場所だと教えられた小学校の校庭に行ったらキタガワしかいなくて、それでお互い小学からずっと気にし合っていた事を告白し合ったんだけど…私が行けなくなったから遊園地は止めて映画館にしたんだよね…悪い事したかも。

 …私とキタガワも、これから映画とか遊園地とか二人で行く事ってあるのかな。あるよね。誘ってくれるよね?

 …行きたいな…これから二人でいろんなとこ一緒に行けたら…



 「ナカちゃんの事をいいなって言ってた子ね、」とアイちゃん。「すんごい残念そうにしてたけど。一人だけあぶれた~~って言って」

そう言ってアイちゃんがふふっと笑うのが可愛い。

アイちゃんは続ける。「なんかその子も良い子だったよ。カッコいいって言うより、ちょっと可愛い系かな、ね?」

ね?と言われたユウミちゃんも「そうだねえ」と答える。

「写真見たでしょ。あ~でも見切れてたかな。今度はやっぱ遊園地って言ってるんだけど、でもナカちゃん、クラス会でそんな感じになってんだったらもう誘えないね。あの子きっとがっかりしちゃうな」

「え、」とユウミちゃん。「ナカちゃんもその好きだって言ってきた子の事好きだったの?」

その通り過ぎるけど…

「わ~ほんと顔赤いよ」とアイちゃん。「ナカちゃん可愛い!」

止めてアイちゃん!もう絶対キタガワに聞こえてる!



 「じゃあその子と付き合う事になったんだ!」ユウミちゃんが勢い込んで言う。

「…いや、まだそんな感じでは…」モゴモゴと答える私。

「「え、なんで」」声をそろえて聞く二人。

「…いや、まだそういう話には…なってないっていうか…」

キタガワに聞こえないように極力小さい声で答える私だ。「まだお互いいいなって思ってたのがわかったばっかだから」

「「え、なんで!?」」また声をそろえ勢い込んで聞く二人だ。


 「何それ」とあきれた声のユウミちゃん。「え、どういう事?どっちも好きなのに付き合わないの?なにそれ。何そのはっきりしない子」

「いや、そんな事は…」

モソモソと否定してみるが二人の目が冷たい。

「ふ~ん。なら、いいよね?」とアイちゃんも言う。「また今度みんなで遊ぼうって言ってるからさ、ナカちゃんも今度は来てよ?ナカちゃんの事気に入ってる子も今度は絶対連れてきてって言ってたし。付き合ってないんだったらみんなで遊びに行くくらい…」



 「中田」

キタガワが静かに振り返って私を呼んだ。

「中田」

今度は真っ直ぐに目を合わせて私をもう一度呼ぶ。

「…何?」

やっぱ今の話聞こえてたよね…

「エザワの事で聞きたい事あんだけど」

「え!?」

エザワ君の事!?

 大きな声を出してしまって慌てて口を押さえるが遅い。

「エザワの事」ともう一度言うキタガワ。「弁当終わったらちょっと非常口の前んとこ来て。先行っとくから」

 アイちゃんの彼氏の友達と遊びに行く約束させられそうな事を、また何か言われると思ったのにエザワ君の事?


 そこへフルカワさん達がやって来た。

「カナエ~~~」と言いながら近付いてきたフルカワさん達3人の女子を、「ちょっと出るから」と言って、それ以上話も聞かずにキタガワは教室をスタスタと出ていってしまう。冷たく取り残されて唖然とするフルカワさん達。

 いつもならフルカワさんに適当に合わせて、そのままハシモト達と一緒にだらだら話をしたりして昼休みを過ごすのに。



 「ナカちゃん?」とユウミちゃん。「エザワって子、誰?」

アイちゃんも聞く。「今キタガワが言ってたそのエザワ君て子が、ナカちゃんの事好きだって言ってきたの?」

「いや、そうじゃないんだけど…」

もうずっと歯切れ悪いな私。そもそもクラス会がクラス会じゃなかったからどうしようもないけど。



 「もっとちゃんと聞きたいな!」と困った顔のアイちゃんだ。「ナカちゃんが中学の時に気になってたって言ってた子とはまた別な子なの?」

いや、それはその子です。が、「いや、まぁ…」と私は歯切れの悪い答えを繰り返す。

「エザワ君て何モノ?」とユウミちゃん。

「…エザワ君は中学の時に私がちょっと好きだった子で…」

「それをなんでキタガワが?キタガワの友達?」とアイちゃん。

「いや、そういうわけじゃなくて…」

「「今朝キタガワと一緒に来てたのは?」」矢継ぎ早に聞く二人だ。

アイちゃんが言う。「キタガワがナカちゃんちにクラス会の忘れ物を届けたかららしいってヨシダさんとかが他の子に教えてたけど」

嫌だな。みんなで情報共有し過ぎだよね。しかも私が慌ててフルカワさんについたウソの情報。

「それは…クラス会でいろいろあって…」

しどろもどろに答えながら、残りの弁当をなんとか手早く食べ終える。

そして最終的に「今度ちゃんと全部話すから!」と言って先に教室を出たキタガワを追って、階のはずれにある非常口へ向かった。




 

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