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誰にも言わないで!  作者: 山吹カオル
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資料集

 キタガワ、彼女出来たのかって聞かれて迷ってたな…

 それにしても女子たちのすごい問い詰め方。『どこが良くてオーケーしたの』とか…もう本気で朝一緒に来たのが私だとバレたくない。

 キタガワだって困ってた。だって私たち、お互いどう思ってたかをやっと認識出来たばっかりだし。今朝初めて一緒に来ただけだし。ここ2年くらいは実際そんなに喋った事もなかったし。


 

 もしキタガワが私の事を話してしまって、キタガワが目立つばっかりに私の動向まで女子の皆さんにいろいろ言われるのは怖い。

 そういうの、よくあるじゃんマンガとかで。「え、あの子?」みたいな。「あんな子カナエと釣り合わな~~い」みたいな。「私の方が断然可愛いのに絶対許せない~~」みたいな。体育館の裏とかに呼ばれて数人に問い詰められるとか。「似合わないんだから早く別れなさいよっ!」みたいに言われたり…

 …いや、でも私たちまだ付き合ってないんだった…


 客観的に見たら自分でも、私なんてあまりぱっとしない、目立たないし特に際立って良いところもないとは思うけれど、それでも親しくもない他人に私の事をああだこうだ言われたくない。キタガワと付き合うばっかりに…ってまだ付き合ってないんだよ。付き合ってもいないうちからなんでこんな心配してるんだろう私。

 …なんか嫌だなイライラしてきた。



 それでも休み時間や授業中のちょっとした合間にも、今日はもう何回もキタガワと目が合った。それは私がキタガワをいつもより見てしまうからだ。それでキタガワも見てくれるせい。

 別に何か合図するわけでもなく、お互い目が合っても素のままなのだけれど、それが逆に自分たちだけが分かり合ってる、みたいな感じで嬉しい。嬉しくて恥ずかしい。

 キタガワとお互いの気持ちがわかったつい先週の金曜日まで、女子に調子良い感じのキタガワが嫌で、私が好きだったむかしのキタガワとの違いを確認するためにキタガワをチラ見していた私。何度も止めようと思っても、やっぱり見てしまっていたのはずっとキタガワの事が気になっていたからだ。

 あんなに苦々しい気持ちで見ていたくせに現金な話だ。お互い気にし合っていたってわかったとたんに、好きだな~~って気持ちで見てしまう。

 あ~~でもダメだあんまり見ちゃ。さすがに好きだって言ってくれたキタガワも、あんまり過ぎると気持ち悪がり始めそう。




 「クラス会どうだった?」

トイレから帰って自分の席に戻る途中でふいに聞かれた。

「小学の時のやったって」

そう聞いてきたのはオオノバルキヨトだ。

 オオノバルも私と同中で、中3の時はクラスも一緒だった。中3の時のクラス会はゴールデン・ウィーク中にあって、それは本物のクラス会だった。一昨日のキタガワと二人きりのウソっこクラス会とは違う。

 うなずくと、ニコッとオオノバルは笑ってから言った。

「仲良かったもんな中学の時も。万田小出身のやつらは」

うんまぁ…本当は私とキタガワだけだったんだけどね、そのクラス会…

「なぁヤマカワも来た?」

「え?」

「ヤマカワタケト。万田小だったろ?オレ、ヤマカワと今でもたまに遊ぶから。ラインも結構やり合ってる」

「…そうなんだ…なんか、ほんのちょっとだけ、内輪で集まっただけだったから」

「へ~~。じゃあキタガワと中田は小学ん時は結構喋ったりしてたんだ?今あんま喋んねえから…」

「え、と、まあうん同じクラスだったりしたから」

 マズい…バレるよね。こういう安直なウソはすぐバレる。



 そう心配しながら教室の廊下側の端の方をチラッと見ると、ちょうどクラスの女子のヨシダさんに話しかけられていたキタガワもこっちを見て、私はなぜか先週までの、「何コイツ、女子と調子よく喋りやがって」と思いながら見ていた時の癖が出て、目が合うとぱっと反らしてしまった。

「ヤマカワ君は来てなかったけど…」気まずい気持ちでオオノバルに答える。

オオノバルがヤマカワに確認したら、1発で嘘だってバレてしまう。

「そっか」とオオノバルはニッコリと笑って言った。「オレらのほら、中3の時のやつやったじゃんクラス会。夏休みにまた集まろうってもう言ってるやつが何人かいるみたいでさ」

「そうなの?」

「そんときはまた中田も行くよな?連絡回ってきたらまた回すから。…お?キタガワ、クラス会やったんだって?なんか女子がいろいろ言ってたけど」

振り向くと私の真後ろにキタガワがいた。


 「何の約束?」とキタガワが私に聞く。

「え…」

「今中田も行くかって聞かれてたの何の話?」

「え…と夏休みに中3の時のクラスでまた集まる話があるってキヨト君が教えてくれて…」

「へ~~」

聞いてきたわりに抑揚のない、どちらかというと機嫌悪そうな声で答えるキタガワ。

「お前らのクラスはないの?」とオオノバルがキタガワに聞いたところで、キタガワが教室のドアの所から呼ばれた。

「カナエく~~~ん♡」よそのクラスの女子だ。「ごめ~~ん地理の資料集貸して~~~♡」

少し茶色ぽい髪をお団子にして目のクリっとした女子。



 「持ってない」

素っ気なくそれだけ答えてまた私たちの方を向くキタガワ。その子はちょっとビックリした顔をしている。それでももう1回、「カナエく~~~ん♡」とさっきよりもっと可愛らしい感じで呼びかける彼女。

 「持ってない。悪い」

悪いって言いながら素っ気無く答えるキタガワ。

「…え~ヤダ~~~困ったな~~~」

可愛い感じでそう言っている女子はまだキタガワを見ている。強いな。

 

 でも、もし自分が持っていなかったら「誰か貸してやれるやついる?」って、いつもなら周りに聞いてあげてるよねキタガワ。それにうちのクラスも、今日5時間目に地理があるから資料集持ってるはずなのに。

「…キタガワ忘れたの?」と、こそっと聞いてみる。

「何が?」

「資料集」

ちっ、と私に舌打ちするキタガワ。

 舌打ちされた!

 好きだって言ったくせに!私の事ずっと気にしてたって言ったくせに舌打ち!


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