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誰にも言わないで!  作者: 山吹カオル
2/22

一緒に来たの?

 「なぁ」とキタガワ。「すげえオレ不安だったんだけど」

「…」

不安?

 不安だったの私ですけど!?何の連絡もくれないから。

 そう思って思い切り顔を覗き込んだら向こうに顔を逸らされた。

「…お前」と向こうを向いたままで言うキタガワ。「ほんとは待ってねえんじゃねえかと思って」

ぽっ、と赤くなってしまう私。

「そんなの」と私も言う。「私だって、あんなに言ってたけど来てくれないんじゃないかと思ってたよ。…だって…あの後…夕べとかも全然連絡くれないし…」

「今朝したじゃん」

「うん。…でも昨日連絡あるかなって思ってたし」

言いながら恥ずかしい。…なんか言ってる事が彼女クサくない?

「なんかな」とキタガワ。「おとといの事思い出したらすげえ、もうものすげえ恥ずかしくなって…昨日とかも、連絡入れようかって思ったけどもうほんとなんかすげえ恥ずかしくて…」

「…」

「お前も何もよこさねえし」

「…だって…」

「だから!」とちょっとムッとしたように言うキタガワ。「今も恥ずかしいって事だよ!」

「…うん。…私も」



 なんだろう…

 ド恥ずかしいけど温かな、とても幸せな感じ。今朝のキタガワからのラインを見るまでものすごく不安だった分、ふわぁ~っと心が軽くなった。

 なんて言ったって…小学生の時にすごく好きだった、そしてその当時は私の想いなんか通じてないって思ってたキタガワも、ずっと私の事を気にしてくれていたんだから。

 でも中学で他の子といろんな噂も流れて、それからずっと嫌だなって思っていたのに、ずっと気になっていたんだって言われたとたん、私もずっと気にしていたのは、ずっと好きだったからだったんだなってすぐ思っちゃったところが私の安直なとこだよね。

 それで今ものすごく幸せだと思って、本当に浮かれてるなって自分でも思うけど…でもやっぱりどうしたって嬉しいと思って顔がにやける。気を抜くとニヤニヤして赤くなってしまう。




 うちから最寄りのバス停まで並んで歩いている時も、何だか一緒に歩いている事が信じられない気持ちと、嬉し恥ずかしい気持ちでソワソワしてほとんど話す事も出来ず、バスに乗り込んだら、何人かすでに乗り込んでいた同校の女子にチラチラ見られ、でもまあキタガワ目立つから仕方ないのかと思いながら、後ろの方の席へキタガワが先に行くので後をついて行く。空いている二人掛けの椅子の窓際の方へ先に座るようにキタガワがさりげなく促してくれて、当然キタガワは私の隣に座る。


 …だめだ!…恥ずかしい!

 でも嬉しいどうしよう…座ってしまえば他の人には見られないよね。

 いやマジで浮かれ過ぎだと自分でも思う。つい先週の金曜日までは、いや土曜の朝、キタガワに告白されるまでは、キタガワの事を女子に良い顔し過ぎだって、調子良過ぎるって嫌な目で見ていたくせに。



 それでもバスが走り出したら、隣にキタガワがいる事に少し慣れてきて落ち着いて来た。

「はあ~~」と大きく息を吐くキタガワ。「今やっとちょっと落ち着いてきた」

「私も!」勢い込んで言ってしまう。

 キタガワは一瞬驚いたが、すぐハハっと嬉しそうに笑って、「うん」とうなずいてくれた。

 そっか。そっかそっか。キタガワも恥ずかしいけど一緒にいたいって思ってくれて、それが慣れない感じなんだな。

 私と一緒の気持ちでいてくれるんだと思うと、さっき少し落ちついて来た気持ちが、抑えようと思ってもまたフワフワソワソワと舞い上がりそうになる。



 「姉ちゃんが」と隣のキタガワが言う。「お前の事、また家に連れて来いって言ってんだけど」

「ほんと!?…すごく嬉しいな」

「でもあいつがいるときはダメだから。あいつぜってぇ余計な事ばっか喋るから」

「お姉さん綺麗だよね。お母さんに似てる。妹も可愛いいね」

「あ~~あれでチハルは姉ちゃんの言う事しか聞かねえからな。チハルもまた連れて来いって言ってた」

「妹、チハルちゃんていうのか…お姉さんは?なんて名前?」

「あいつはミハル。いいよもうあいつの事は」

ミハル、カナエ、チハルか…「いいなキョーダイがいて」

 私は兄弟姉妹がいないから羨ましい。


 「だから」とキタガワがちょっと目を反らして言った。「…あいつがいない時にその…またうちに来たらいいじゃん」

ばばばばば、と赤くなる私。

「…うん」と私も目を反らして答えた。




 そんな他愛もない、軽いバカップルみたいな会話をしながらバスに揺られ、キタガワの隣に座って話をしている嬉しさと、位置的に窓際の方だった事もあってあまり誰の視線も感じずにすんでいたが、今思えばこの辺りが今朝の、というか私の今までの人生の幸せのマックスだった。

 学校前のバス停に降りた時にはまた、バスに乗り込んだときのようにチラチラ見られていて、なんかちょっとイヤだな~~~と思っていたのが、だんだん道行く子たちのチラ見の度合いが高くなり、あれ…と思う。…なんかマズいかもどうしよ…

 キタガワの後をちょっと離れてから教室に入る。



 「カナエ~!おはよ~~~」と寄ってくるフルカワさん。

 フルカワさんはキタガワの事を好きなちょっと強気の女子だ。休み時間やお昼にもしょっちゅうキタガワに絡んでいる。クラスでも目立っていて、今日も綺麗に肩下10センチくらいの髪を緩く巻いている。化粧も先生に注意まではされないくらいに、それでもきちんとしてきましたよ、っていうくらいにはまつ毛もクルンてなっているし、唇は薄い色のグロスでツヤツヤぷっくりしている。

「どうしたの?」とフルカワさん。「今日、いつもより早くない?」

「あ~~今日は朝練なかったから」

「朝練無い時にはもっと遅いじゃん」

細かいとこ見てるな…

「あ~…と、バスで来たから」

そう言ってちょっと私を振り返るキタガワ。






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