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誰にも言わないで!  作者: 山吹カオル
19/22

どう違うか

 雰囲気的に私だけ帰ると言い出せない。

 6人で移動するがぞろぞろ歩くのは苦手だ。

 例えば小学校の遠足みたいな大人数で移動するのはどうもない。楽しいと思える。でもこれくらいの人数で、しかも初対面の人が入って、それでも顔や話は前もって知っている、みたいな集まりでぞろぞろ歩くのは、間の取り方がわからなくてソワソワしてくる。なら行かなきゃいいんだよね。今なら、『ごめん、私用事あった』ってあからさまなウソをついても許されると思う。

 が、彼氏と歩くと思っていたアイちゃんが、ユウミちゃんと並んで歩いていた私の方へ寄って来た。

「ごめんね。急にこんな感じになって」

ニコニコ謝るアイちゃんは可愛い。彼氏と一緒だから嬉しいんだね。結局先に帰ると言い出せなくなった。


 「アイス食べたいけど」とユウミちゃん。「私はやっぱり日曜日みたいにそこまで話弾まないからね。ただアイス食べるだけだからね」

「どう?うちの彼氏」と私に聞いてくるアイちゃん。

「うん。カッコいいと思うよ。柔らかい雰囲気出してるけど、すごいしっかりしてそう」

「そうなんだよ!」


 喜ぶアイちゃんも可愛いけど…私は今キタガワの事を考えている。

 先週もこのグループで出掛ける約束をしかかって、それを止めさせようとしたキタガワに嘘のクラス会に誘われて、お互いの気持ちが確認できたのに…私は今ここにいる。こうして一緒にアイス屋に行くのを知ったら、キタガワは行くなって言うかな。行ってくれるよね。だからあの時も止めてくれたんだよね…

アイちゃんの彼氏がちょいちょいと手招きしてアイちゃんを呼ぶと、アイちゃんは嬉しそうに彼氏の横に。私はアイちゃんの彼氏がキタガワで、アイちゃんが私として…と妄想する。

 行くならやっぱりキタガワと行きたい。今日はタイミング逃したけど次はちゃんと断ろう。

 でも男の子と1対1っていうわけでもないのに、そこまで気にするのは可笑しいのかな…自意識過剰かな…でもキタガワが他の女の子たちとこんな風にアイス食べに行ったりしたら私だって絶対嫌だし…

 


 そうこうしているうちにタカムラ君が、私とユウミちゃんの間にスルッと入り込んで、恐ろしいくらいすんなりとユウミちゃんの横を持って行ってしまった。

 あれ?と思う間に私の横にはヨシノ君だ。

「ねえ、何好き?」といきなり聞いてくるヨシノ君。

「なに?」

「アイスアイス」

アイスの事か。「マシュマロとアーモンドが入ってるチョコのやつ」

「あ~うまいよね。僕くるみが入ってるキャラメルのやつ」

「あ~おいしいよね。それも好きかも」

「果物系は苦手なんだよね」

「私も甘酸っぱいのはあんまり好きじゃないよ」

「そっかそっか」



 なんか初対面なのに普通に話せてるな。ヨシノ君がくったくなく話しかけてくれるからだけれど、顔が女の子っぽいし背も私とそんなに変わらないから、普通にアイちゃん達と喋る感じで話せてる。

 ヨシノ君が横に並んで歩きながら、ちょっと私の顔を覗き込む。

「どんな感じ?ヒロちゃんの彼氏。ってかまだ彼氏ではないんだっけ」

ハハ、とヨシノ君がちょっと笑う。

 どんな感じ?

 改めて聞かれたらどんな感じだろう。今は目立って女子人気高いけど、私が好きになった頃の小学生のキタガワは私よりちっちゃい、あんまり目立たない男子だった。私はキタガワの何がそんなに好きになったんだろう。カナエと言う名前がクラスメートのお母さんと同じ名前で、それでずっといじられていたりもしたけれど、そんなのなんともない感じで淡々としていた所とか、それが誰に対してもそうで、ヘアピンの事で女子に責められてた私を助けてくれたところとか、ビーズのネックレスもらってもう完全に好きになったけれど、それは私にそうやって優しくしてくれてたのが嬉しいと思ったからかな…

 もし他の子が同じ事をしてくれていたとしたら、その子の事を好きになっていたのかな…


 

 「日曜日、ヒロちゃんが来れないって聞いて、」とヨシノ君。「僕も行くの止めようかと思ったんだけど」

うん、とも、ごめん、とも言えずにあやふやに笑うしかない。

「なんか写真見せてもらった時に、ヒロちゃんのはいつも『写真撮ってます!』って感じじゃなくて、なんか仕方なく写った~~みたいな感じで写ってたのが可愛かったから、だから一度会ってみたかったんだよ」

わ~~~と思う。初対面の人にそんな事言われるとは。


 …私言われたっけ?今までキタガワに『可愛い』って言われた事あったっけ?ないよね?ないないないない…ブスって言われた事はあったね…しかも先週言われた…

「ヒロちゃんの彼氏…じゃなかった、そのヒロちゃんの…めんどくさいから彼氏って呼ぶけど、その人はヒロちゃんのどこが好きだって言ってんの?」

横を歩くヨシノ君の可愛い顔をまじまじと見てしまう。

「いや」とヨシノ君。「僕が思ってるヒロちゃんと、そいつが思ってるヒロちゃんはどう違うんだろうって思って」

「…」

「もう」とヨシノ君。「そんなにガン見しないで。前ぶつかるよ?」

「…ごめん」

「すごい目の形が綺麗だな」

は?

 いやガン見以外の何が出来るって言うの?ちょっと褒められたら恥ずかしがって下とか見たりしてはにかめるけど、初対面の同学年の男子に、しかも女の子みたいに可愛い男子にそんな事言われても…


 

 なんか…ヨシノ君すごいな。たぶんこういう恥ずかしい感じの事を、キタガワだったら絶対言わない。

 たぶん女の子から『綺麗?』って聞いてきたら、『あ~うんうん、綺麗綺麗』って答えるだろうけど、自分からは言わない。はず。そうであって欲しい。

「どうしたの?」と聞くヨシノ君。「どこが好きとかそういうの言われてないの?小学からの子なんでしょ?ずっと好きでした~~とか言われただけ?でもすごいね、小学からなんて」

「…」

 言葉を濁すしか出来ない。

 チラッとユウミちゃんとタカムラ君ペアを見ると、あれ?以外に話弾んでる。

 

 


 駅ビルにたどり着いてアイス屋に入ると、一般人より学校帰りの女子高生の方が多い。うちの高校の子たちもいる。知り合いはいないけど。キャピキャピ言いながら、そしてスマホをいじりながらアイスを選ぶ様々な制服を着た女の子たちだ。女の子たちは私たちと一緒に入った男子3人をチラチラとチェックする。

 爽やかな青に白い線の入ったセーラー襟の短いワンピースが制服のアイス屋の可愛い店員さんに、ニコッと笑いかけられて、同じくらい可愛い笑顔でニコッと笑い返すヨシノ君。来る途中で言っていた通り、クルミ入りのキャラメル味のアイスを選んでいる。

 店は人がいっぱいで、空いている席は入口近くの4人掛けの席と、お手洗いに近い2人掛けの席だけだ。

 当然2人掛けの席はアイちゃんと彼氏。残りの4人で4人掛けのテーブルへ移動した。



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