わかんねえわ
「あ~~~もう~~」とフルカワさん。「もう帰ったら速攻でツイートする。てか教室戻ったらみんなに言う」
「いや、」とキタガワが言う。「フルカワ、それは止めといて。付き合ってるつったけど、そう思ってんのオレだけだから」
「は?」眉間にしわを寄せるフルカワさん。「どういう事?」
いや、今私も全く同じ質問を心の中でキタガワにした。
私を見て、キタガワがちょっと笑いながら言う。「中田はまだそんな感じじゃない。みんなにバレるのも嫌だからって言うから」
キタガワ!それをフルカワさんに言ってどうする!しかも笑いながらってどういう神経してんの?
「え、でも好きなんでしょ!?」
キタガワを指して私に促すフルカワさんだ。恥ずかしいのでちっちゃく頷くと、「じゃあなんでよ!?」とムキになってさらに聞かれる。だから、こういう風に問い詰められたりするのも嫌だからなんだって。
私はキタガワを睨んで言った。「自分が言ったんじゃん!だんだん仲良くなろうって」
「何それ!?」ひと際大きな声を出したフルカワさんだ。「何それ?当てつけ?おのろけ?意味わかんない!!じゃあカナエ、ナカティのどこが好きなの?ちゃんと言ってみて」
ハハハ、とその再度の質問にキタガワは笑って答えた。「わかんねえわ」
え~~~~~~~!?
「じゃあ行こ、中田」キタガワが私の腕を掴む。
キタガワに腕を掴まれたまま階段を下りる私は心の中でまだ、「え~~~~」と叫んでいた。
わかんないってどういうことよ!?
階段を降りながらキタガワに聞く。「ねえ!…お弁当食べ終わったの?」
今のわかんねえわってどういう事!?と問い詰めたいのだ本当は。
「食い終わった。お前弁当机に置いたままだったじゃん」
「うん、すぐ戻るつもりだったから…やっぱ今もう戻る」
そう言って私はキタガワの手を振りほどいた。
「…なあ…もしかして…朝のアレ、オレが受け取ると思ってお前知らんぷりして先に行った?」
思って先に行ったよ。ていうか『わかんねえわ』ってどういうことよ!?それに…
「うん…まあ…でも…」と言い淀む私。
「でも?なに?」
「いや、いい」
「なにって」
「…なんでもない」
「なに、気になんじゃん」
どんな風に断ったの?他の子からも貰った事もあった?って聞きたいけど聞かない。フルカワさんに余計な事言うし!フルカワさんがもう教室に戻ってみんなに言ってるかも…どんな顔して教室戻ればいいんだ。なのに『わかんねえわ』ってどういう事!
「私、お弁当途中だったから帰る」
「飲みもんは?」
「やっぱ水筒あったからいい」
「ふうん。…なあ、明日!明日部活ないから一緒帰ろ」
今どこが好きかわからないって言ったのに?
「でもそしたら朝キタガワ、バスに乗るの?」
「あ~そうか」
「朝練あるのに大変だよ」
「うん。まあな。じゃあ…どっか寄って…っていうのもな…じゃあ図書館、明日は取りあえず図書館二人でちょっと寄って帰ろ」
…あ~~キタガワがフルカワさんに言った事に腹を立ててるのに、図書館に誘われたのは嬉しい。なんだろう、このつじつまの合わない心。
「なんで付き合ってるって言うの?」しかもフルカワさんに。
「オレちゃんと言ったじゃん。めんどくせえから聞かれたら言うって」
めんどくせえからって…わかんねえとかめんどくせえって何だよホントに!
睨む私にキタガワが言った。「お前『誰にも言うな』って言ったけど、女子がそういう時は言って欲しいって事だって」
「はあ?何言ってんの?それ誰に言われたの!?」
「妹」
妹~~~~~。小学生のくせに!ていうか、小学生の妹に私が言った事を話すな!
が、結局そのキタガワとの図書館デートの話は無しになった。
キタガワのバスケ部が翌週の土曜日に急遽練習試合が設定されて、基本部活のないはずの水曜日の放課後も部のミーティングがある事になったのだ。夜にそうラインで教えてくれた。
「試合終わったらまたゆっくりどっか行こ」とキタガワが送ってくれたので、「わかった、頑張って。けがしないようにね」と送る。
でも心はずっとモヤっとしてるのだ。
好きな所がわからないってどういう事?やっぱ小学校でのやりとりと、私がこれ見よがしに、キタガワがくれたネックレスを変形させたキーホルダーをずっと付けてたから、なんとなく惰性でずっと私を気にしててくれたって事?いや、それだったら中、高もっとガンガン、アピールしてくる目立つ女子が何人もいたじゃん。しかもそのうちの一人のフルカワさんに私と付き合ってるっていうし、私の好きなところを聞かれてわからないって言うし。
フルカワさんは、キタガワが頼んだ通り誰にも私たちの言わないでくれたみたいで、教室に戻っても誰も何も言わなかった。フルカワさんのそういうところもわかっててキタガワは私たちの事を教えたのかもとも思えた。…ところにフルカワさんが私に近付いて来て言ったのだ。
「今んとこ仲良いってだけだよね。どこが好きかわかんないって言ってたし。クラス会があって盛り上がっただけだよね。そうとしか思えないし」
そう言って笑うフルカワさん。「まあ仲良いのはしょうがないよ。小学から一緒だったら。まあまあまあまあ…それは許す。ナカティが浮かれないで慎重なのが偉いよ」
いや、私浮かれまくってましたけど?
でもキタガワはやっぱり、『付き合ってる』って事で自分は良いと思ってるって事だよね?私のどこが好きかもわからないのに。
意味がわからん!
そしてやたらモヤつきながらも、約束に未練を残して帰り際、体育館の前を少し遠巻きに通ってみると、体育館の入口の所に女子の塊。今日はミーティングだけのはずじゃないの?
バスケ部の2、3年生にもカッコ良くて人気のある先輩が何人かいるからキタガワ目当ての子ばかりじゃないってわかるけど、みんなバスケ部が臨時に部活ある情報得るのが速過ぎない?
他の部活が休みの水曜日だから余計にギャラリーが多いのだ。私はとっとと帰ろう。
今日も昼休みに他のクラスの女子がキタガワの所に来てたし。その時フルカワさんが『ホラホラ~~』みたいな感じで私を見て来て笑ってたし。それがすごくうざいんだけど、ちょっと可愛くも思えてしまう。
「「ナカちゃん!」」
あれ?と思いながら振り向くとやっぱりアイちゃんとユウミちゃんだ。ユウミちゃんもアイちゃんも方向は違うが電車で通っている。
寄って来た二人が「「キタガワと一緒に帰んないの?」」と聞いてくる。
ううん、と首を振ってわけを話す。
「え~~」とアイちゃん。
「気になって、教室からつけて来ちゃったよ」とユウミちゃん。「二人バラバラに出るしさ」
「じゃあ行こ!」とアイちゃんが少しどんよりしている私に言う。
行こ?
「そっか…」とユウミちゃんも。「行こ!ナカちゃん。アイちゃんの彼氏来てるから」
「そうなんだよ。今うちの彼氏校門の外のとこで待ってくれてんの。ナカちゃん、うちの彼氏まだ1回も本物見た事ないでしょ。だから一緒に行って?ナカちゃんの事も見せたいんだ」




