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誰にも言わないで!  作者: 山吹カオル
12/22

単純

 トモちゃんからは、「なんか私がいろんな子からウザいくらい聞かれてるんだけど、ナカちゃんもしかしてキタガワカナエと付き合い始めた?」。

同中の3人もキタガワと付き合い始めたのかというライン。

 なんで!?なんで知ってんの?いや付き合い始めてはいないけど…

 なんでそんな情報他校の子に漏れてるの?しかも漏れるの早っ!今朝初めて二人で学校行ったとこなのに。



 差しさわりなくトモちゃんに聞いてみる。

「なんでトモちゃんがそんな事聞かれるんだろ」

「ツイートされてたって。朝二人でバスに乗って学校行った事。二人で座って二人で喋ってたって」

マジで!?誰に!?私はツイッターやってないからな…


 実際スマホの画面を見ながら「マジで!?」と本気モードで叫んでしまった。

「さすがにナカちゃん本人に聞けないのか、私が聞かれてんのかも」とトモちゃん。「なんかみんな信じられないのかも」

 …そうだよね…私自身が信じられないもんね…

 これはでも、朝フルカワさん達に言ったように私がクラス会で忘れ物してそれをキタガワが届けてくれたって言ってしまったら、すぐウソがばれる。

 トモちゃんは万田小出身ではないけれど、万田小出身の友達がたくさんいるのだ。


 それにトモちゃんにそういうごまかしをするのは嫌だな。今でも仲良くしてくれる友達なのに。

だからちゃんという事にした。

「まだ付き合ってはいないけど、高校入ってからもあんま喋ってなかったんだけど、先週ちょっと小学校の時の話とかして、今朝はキタガワの朝練がなかったから一緒に行く事になったんだよ」

「ふうん」というトモちゃんのそっけない返事。あれ?と思っていたらトモちゃんからすぐに電話が来た。



 「やっほ~~久しぶり~。みんなウザいよね!!人の事あれこれ言ってさぁ」

いきなりなトモちゃんだ。

「トモちゃん久しぶり」

久しぶりと言っても喋るのが久しぶりでラインは結構頻繁にしている。

「学校一緒に行くってすごいじゃん」とトモちゃん。

「うん…まあ…」

「キタガワって今でもモテてるんでしょ?」

「うん…まあ…」

「ちょっとナカちゃん!勢い込んで聞いてんのに『うん、まあ』って止めてよ」

「ごめん。でもみんなに大げさに騒がれたら嫌だな~~って思って」

「あ~まあね!でもなんかさ」とトモちゃん。「中1の始めの方はキタガワとナカちゃん、なにげに仲良い感じがしてたよ。仲良いってか、こう…取り立てて仲良いわけじゃないんだけど、なんだろう…ちょっと付き合い長いんですよ、みたいな感じ?良くわかんないけど。私、キタガワがナカちゃんの給食、たまにわざとちょろまかして食べてんの見た事あったよ。みんなにバレないように。ナカちゃんがちょっと目で『こら♡』みたいな。ちょっとうらやましかったもん。喋る時だってナカちゃんとの時はキタガワちょっと雰囲気違ってたし」

 いや、そんな可愛い『こら♡』はやってないけど。そっかトモちゃんにはバレてたのか…

「なんかさぁ」とトモちゃん。「だんだん回りの女子がうるさくなって来てさぁ」

「あ~~うん…そうだねぇ」

二人で中1から中2の頃に飛んで行った。


 が、「あれ?え?」とトモちゃん。「まだ付き合ってないって言ったよね?序盤で」

「うん。付き合おうとかは言われてないし、私もまだそんな…」

「じゃあまだ、高校一緒だし、一緒に学校行こうか~みたなノリ?」

「…いや…なんていうか…」

「もしかして好きだとか言われたの?」

言われたよね。

 でもそれを言うのはもちろん恥ずかしい。恥ずかしいけど相手はトモちゃんだ。ちゃんと教えたい。

「…小学校の時からずっと気になってたって言われた」

「マジで!?」

トモちゃんの声が大きくてビクッとする。

「それで?ナカちゃんは?」

「…私も…気になってたって…言っちゃった感じ」

「マジで!?」

耳に響いてまたビクッとした。

「付き合うの?」

「…まだ。まだっていうか…あの…これ、他の子に教えたりしちゃダメだよ?…だんだん仲良くなっていけたらいいなみたいな…感じっていうか…」

「そっか~~~可愛いじゃん。よしわかった!他の子には黙っとくよ!適当に言っとくから。今度また会った時に詳しく聞かせてよ!」




 トモちゃんとの電話は凄く嬉しかったけど、でもマズいよね。

誰がそんなのひろめてるんだろう。

 …きっと他の男の子といたらこんな目には遭わないのに。キタガワだから騒がれるんだ。約束したライン一つ寄こせないあんなヤツ…



 そう思っていたところへキタガワから電話が来た!

 わ~~と思う。電話!キタガワから初めての電話!

「なあなあ」といきなり呼びかける声が笑っている。

「お前オレに、オレとの事黙っとけって言ってたけど、一緒に学校行ったのがなんかちょっと広まってるらしい。お前知ってた?」

なに笑ってんのコイツ。

「…知ってた。今トモちゃんが…トモちゃんて中学の時に仲良かったスギモトトモちゃん。知ってる?」

「知ってる」

「その子が他の子に聞かれたって電話くれた。朝バスで一緒に行ってたの、見た子がツイートしたんだって」

「バカみてえだよな」

「…」

「なんでそんな他人の事、他のやつに広めなきゃいけねえんだよな。意味わかんねえ」

やっぱりキタガワも嫌だよね。とは思いながらも、あんたのせいじゃん、とも思って言ってしまう。


 「…いやぁ…なんていうか…私がこんな事言うのもなんだけど、それはキタガワだからだと思うけど」

「…」

「女子がほら、キタガワの事好きな女子がやっぱそういうの気になるからしょうがないっていうか…」

「ハハハ」とキタガワが急に笑うのでびくっとする。「お前無駄だったじゃん、オレに誰にも言うなって言ったてたの」

そうだよね…バスに一緒に乗っただけで、その場にいなかった他校の子にまで話が広がるってすごいっていうかもうおかしいよね! でも…


 「キタガワも嫌でしょう?騒がれたりしたら」

 しかも相手がそこまでパッとしない私とかだったらたぶん、女子の反発も強そうだけどな。私は嫌だ。女子からあれこれ言われるの。目立たずに、ごく普通に、出来るだけ誰とも波風立てず何事もなく学校生活を送りたい。

 キタガワが言う。「そういう他人の事にいろいろ言うやつの事気にすんのは、嫌っていうかめんどくせえけど。でも中学の時の別に好きでもねえヤツとの事あれこれ広められるのは腹立ったけど、お前との事言われても実際一緒にバスに乗っていったわけだし。乗りたくて乗ったわけだし一緒に」


 うわ…もうなんだろうな、ほんのちょっとのこういう言葉で、一瞬ですごくぱあっと嬉しくなる私の単純さ!

「まあオレんとこにもうざいライン来てたけど」

「え?女子からってこと?たくさん?」

「全部スルーしたけどな」

「…」



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