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三題噺集

喫茶店、手紙、和菓子

作者: シュウ

探偵をやっている俺の元に一通の手紙が届いた。

依頼主は喫茶店のオーナーで、なんでも最近になってお客さんに流れ始めたらしい不評をなんとかしてほしいとのこと。俺のことを便利屋かなにかと勘違いしているフシがある。この店の不評よりも、俺の情報をなんとかしたいものだ。

とはいえ、探偵としては特に仕事が舞い込んでくるわけではないので、この仕事も嫌々だったが受けることにした。

こう見えても探偵なので、情報には詳しい。

調べてみると、この店の不評の原因はネットの店舗紹介に書かれた一つのレビューが原因だと思われた。


『この店のコーヒーは薄い。豆から入れずにインスタントコーヒーを使っているような味がする。』


問題のレビューを簡単にまとめるとこんな感じだ。

外部から書き換えることはできないため、削除することはできない。

ではどうするか。

簡単なことだった。


『この店はコーヒー豆の仕入れには厳選に厳選を重ねた上での豆しか仕入れていないらしい。間違ってもインスタントなんて使っていない。これで薄いと思うなら、舌が麻痺しているとしか思えない。』


そう書き込むだけで、簡単に解決だ。前のレビューを打ち消す効果のレビューを書いて、無力化させる。

たったそれだけのことだ。

しかし一つ新たな問題が起きてしまった。


『濃い目のコーヒーが好きな私だが、それでも薄い。普段インスタントを飲んでいる人間からしてみればちょうどいいかもしれないが、豆にこだわっているだけなら素人でもこだわれる。』


きっと最初に書かれたレビューの人が、俺のレビューを見て反論してきた。

まさか反論されるとは思わず、俺は少し驚いた。しかしこのままでは自分がエセ情報を流したと思われてしまうため、俺は慌てて返事代わりのレビューを新しく書いた。







そして一ヶ月後。


喫茶店は大繁盛し、夕方には学生やサラリーマンで狭い店内が埋まるほどだった。

あのあと、何度かわからないレビューのやりとりがあり、だんだんとレビューでの返事も強みが増してきた。そのレビューを見た誰かが、ネットの掲示板にそのやりとりを晒したらしく、俺はまんまと笑いものにされてしまった。

しかしそのおかげか、レビューを見た人が喫茶店に味を確かめにやってくるようになったのだ。そこから美味しいと思った客は時々来るようになり、果ては常連へとなった。

俗に言う炎上ということになったのだが、店側としては知名度を上げる以外の何物でもなく、『いい宣伝』になったのだとオーナーは俺に感謝の意を伝えてきた。

なんとも複雑な思いだったが、少し弾んでくれた謝礼を受け取り、おまけで付いてきた和菓子の詰め合わせをお茶うけにして、パソコンで今も小さく続いている素人たちの『インスタントなのか、豆なのか』というレビューのやり取りを見ていた。

俺はもう書き込まないことにした。レビューは見るものだ。





おしまい。

下手なことを書いたらダメですね。

これだからレビューを書くのは難しいのです。

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