キイマ
五日後、予定より一日遅れたものの最初の目的地だったキイマに二人はたどり着きました。
静かな雰囲気の街だと訪れたことのある絵師から聞いたことがありましたが、キイマは喧騒に包まれています。
「号外、号外!ついに始まった百年作戦の続報です。」
新聞社の人なのでしょうか。あちこちで号外を配っていて、そこに人が蟻のように群がり、また号外を手にした人々は食い入るように読んでいる、そんな風景が広がっていたのです。
「何かあったのかな。」
「落ち着いた歴史しある街。って言ってなかったっけ。」
あっという間に配りおえてしまったらしく、号外を配る人はもうほとんど姿を消しています。
メリィは号外を道の真ん中という事も気にせず読んでいる女の人に声をかけてみました。
「あの、今しがたキイマに着いた者なのですが、何かあったんですか。」
この問いかけに女の人はたいそう驚いた様子でした。
「連日こんな大騒ぎになってるっていうのに知らないなんて。ルーオウとの戦争が始まったんだよ。だからみんな戦況が気になっているのよ。」
「戦争って。」
「大丈夫キイマ軍は最強よ。この国が誇る科学者たちが発明した新型爆弾を積んで空爆作戦をしたんだけど大成功だそうよ。高い壁があっても空からじゃ意味ないものね。」
女の人は意気揚々とそしてやや興奮気味に、にっこりと教えてくれました。
「どうして戦争なんか始めたんだよ。」
「どうして?って、だってキイマはやっと百年の恨みを晴らしたのよ。」
「ここは昔ルーオウの植民地だったんですね。」
「そうよ。しばらくはルーオウもおとなしくしてたみたいだけど。世界中から破壊兵器を買うのをやめることはしなかったわ。なぜ?いつかまた攻めてくる気でいるからよ。そうでしょう?だからキイマを含め三国が協力して悪を倒すのよ。」
女の人は勇ましく、そして満足げです。
「ルーオウが戦争の準備をしているという情報でもあったんですか。」
メリィは聞きました。
「もちろんよ。ここ数年ルーオウで頻繁に爆発の光や煙が確認されたの。これは爆弾か何か破壊兵器を開発してるってことでしょ。しばらく様子を見ていたけど不安を抱えたまま暮らすのはもう限界だったわ。やっとそれから解放されるのよ。これは喜ばしいことだわ。」
女の人は力強く締めくくるのを聞き届けるとメリィは引き留めたことを詫びるとその場を後にしました。
しばらくしてクレドは前を歩くメリィにたずねました。
「で、次はどこに行くんだよ。地図は見なくていいのか。」
「必要ないよ。」
前を行くメリィは急ぎ足で、短くかえします。
「クレド、僕は同じ場所へ行くことはまずないんだけど、」
言いながらメリィは荷物を持ち直しました。
「ルーオウに行こうと思う。」
「何しにさ。」
今度はクレドが短くかえします。
「けして美しいものではないだろうけど、今まで見たことのない風景が広がっているだろうから。それを描きにだよ。」
描きにいこう、
まだ見ぬ風景を求めて
世界はこんなにも広いのだから。




