塀の街
灰色の壁の近くまで行くと、いくつか扉が見えてきました。
1人と1匹はそのうちの一つをくぐると紺色の制服らしき服装の男の人が声を掛けてきました。
「やあ少年。この街へ、ルーオウへは初めてかい?」
「はい。キイマに向かっていたのですが途中の道が進めなくて。この街で新しい地図を調達できればと思ったのですが。」
メリィが答えるとその人はにっこり笑っていいました。
「そうか。ようこそルーオウへ。ここにはいくつも本屋があるからな、それは心配ないと思うぞ。もしよればこの街の地図をあげよう。」
メリィたちは入ってすぐの小さな木造の建物へ案内されました。
どうやらこの街の自警団の詰所のようです。壁にはこの街全体の地図や、消防団への伝達の手順、非常時の案内心得など様々な物が貼ってあります。
持っていた荷物を床に置き、クレドと一緒に早速地図に目を通していると別の自警団員が意外そうにメリィを見てこう言いました。
「その荷物は全部絵を描く道具かい。いやぁ自分も少し油絵をやるんでね、絵描きさんですか。」
「ええ。僕は王国絵師なんです。王の命令で色々な国や地域を旅してまだ見たことのない物を描いて回ってるんです。」
「そしてオレが連絡係兼コイツの保護者のクレドだ。」
ふふん、と得意そうにクレドは尻尾を振りました。
「へえ、王国絵師の付き人は精霊や妖精だけだと思ってたけど。」
「ああ、それは貴族出身の方や王族と関係の深い絵師の場合がほとんどです。」
「精霊がなんだよ。急ぎの絵を届けるのが少し速いだけだろ!オレだっていちおう未来の精霊の聖獣様だい。」
「仕方ないじゃないか、まだお互いかけだしなんだし。」
「いや、しかしその若さで王国絵師とは大したものだよ。」
「ありがとうございます。」
「そうだ、メリィせっかくだしここでも何か描いていこうぜ。ねえ、この街に珍しい物って何かないのか。」
クレドの問いに少し考えて、
「珍しい物か、ひとつはこの街を囲っている塀だろうけど。しかし、この街で誇れる物といったらひとつしかない。」と言いました。
「なになに?」
彼は部屋の本棚から冊子を取り出すとメリィに手渡しました。
その表紙を見ると
「防衛博物館、ですか。」
「最近新館ができたんだ。そこにいけば街の塀の意味も、街自慢の最新鋭の技術を知ることができるよ。ああ、その冊子にも街全体の地図が載っているから旅人さんには役立つと思うよ。」




