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白銀の豚姫  作者: 空暮
5/11

1-5

 次の更新まで少し空くかと思われますが、遅くとも来週の日曜には更新したいと考えています。出来れば一度、間に一回載せられたら、などと。

 閉じられていた屋敷の扉へ、鉄球は投げつけられた。木板と金具を吹き飛ばし、血の臭いを纏った鉄球が踊る。崩れかかった扉を蹴散らし、純青は進む。

 屋敷の入り口付近に弓を手にしたエルフが六人、突然爆ぜた扉に驚き、腕で顔を防いで身を背けている。誰もまだ純青には気付いていない。

 それを好機と受け取った純青は鉄球をそのまま、エルフたちに襲い掛かる。

 「な……ガッ!?」

 助走を付けて突き出された右拳は、男の端整な顔を砕いた。最早二度とは見れぬおぞましい肉塊に形を変え、床に伏せる。

 男たちの輪の中へ飛び込んできた重装の騎士に、彼らの反応は一瞬遅れた。拳から血を滴らせ、俯くその姿は現実のものとは思えない。

 ぶっきらぼうに振り回された左腕は、裏拳気味にまた一人、男の顔面を叩き潰した。歯と手甲がぶつかる音は、肉の潰れる音と混ざり合い不協和音を奏でる。

 気泡の爆ぜるような音とともに、潰れた顔面から血飛沫が噴き出た。それは純青の白銀の鎧を朱に染めた。

 「……こいつァ!!」 

 激昂によって我を取り戻した一人が矢を番えると、他の三人も思い出したように弓を構える。四人に囲まれた純青、両手は真紅、男が崩れる音と同時に――動き出した。

 「シッ!」

 至近距離から放たれた矢。その数は四。彼らの狙いは本能的に頭部へ集中していた。

 当然、純青の兜を突き破る事など出来ない。矢は撓み、あらぬ方向へ飛んでいく。

 純青は、絶望の表情を浮かべている男二人の頭を鷲掴みにした。メキリ、と骨が軋む音は彼女の指が頭蓋にめり込んでいる事を表わしていた。

 「ひっ、ひっ、ひっ、ひっ、ひ……!」

 笑い声にも聞こえるソレは、恐怖に顔を歪めた男の口から洩れる嗚咽だった。彼女はそれを気にも留めず、力の限り――振り回した。

 鉄球にそうするように、エルフ二人を振り回す。その回転に巻き込まれた者は壁に叩きつけられ、掴まれている二人も最後は顔から地面に叩き落されて絶命した。

 壁に凭れている者も屠殺するようにくびり殺す純青、その動きには一切の無駄がない。まさに『殺すべく、殺す』、彼女は息を乱さずさくりさくりと殺していく。

 また少し、白銀の鎧を赤く染め、彼女は廊下に立つ。長い長い真直ぐ続く廊下の奥に階段、壁には扉、床は木で出来ているとは思えぬほどのっぺりとした造りになっている。その床を汚すようにして純青は進む。

 目に付く扉を片っ端から開けていく。まず一つ、思い切り開け放つ。そこには簡素な机と椅子、そして弓と矢が無造作に掛けられているだけで、誰も居なかった。

 二つ目、開けるとそこには料理が並んでいた……が、またしても誰も居ない。湯気立つ料理は食べ掛けであり、恐らく先ほどのエルフが摂っていた物なのだろう。

 「……料理、か」

 部屋には朝の光が差し込み、暖かな色を放っている。それと対照的に、廊下の暗がりに身を落とし、血に濡れた純青。何故か彼女は、それが無性に悲しく感じた。

 「私は…………」

 凍える鎧の中で、純青は一度目を閉じた。



 「そんなに美味いか?」

 飴を転がす純は、永青の隣に座ってニコニコと嬉しそうに笑っている。手には身に余る大きな木刀。少しばかり手垢で汚れ、黒ずんでいる。

 「うん!」

 元気良く返され、「そうか……」と永青も腰掛ける。空は夕暮れ、鴉が遠くの寝床へと帰路を急いでいる。山に沈む赤い太陽、差し込む光は並んで座る二人の影を何処までも伸ばす。

 「……何かが美味い、と思えるのは幸せな証拠だな」

 ぼやく永青に、首を傾げる純。

 「えーせーは、飴嫌い?」

 「甘い物は、好かん」

 「じゃあ煎餅は?」

 「そもそも間食は、苦手だ」

 無愛想な返事が純には面白くなかったらしい。彼女は永青をじっと睨み付ける。

 「……ん?」

 少し経って恨みがましい目線を感じた彼は、純が頬を膨らませて睨んでいる事に気付いた。一体何を怒っているのか、彼には全く分からなかった。

 「どうした?」

 頭を撫でようと手を伸ばすも、身を捩られて逃げられる。両手を伸ばすと立ち上がって逃げられる。

 「……………………」

 「……………………」

 ついに永青も立ち上がり、純を追い掛ける。そうすると嬉しそうにふざけながら逃げ出す純。飛んで、跳ねて、夕闇の地を駆ける。それを追う永青は、口を真一文字に結び、優しさを目に湛えてゆっくりと駆ける。掴まえる気は無いようで、ただ、はしゃぐ純を追い掛け回す。

 「……掴まえたぞ」

 陽の光が消えかかる寸前、彼は純の脇を掴み、持ち上げた。脇腹を揉まれ、彼女は口を大きく開けて馬鹿笑いする。身悶えるが、それをお構いなしに永青は純をくすぐり続け、息が絶え絶えになったところで地面に降ろした。

 「ひぃ……ひぃ、くひっ、くひ……」

 地面に倒れ伏して、笑顔のまま痙攣する純は少し不気味に見える。純が落とした木刀を拾うと、

 「今日はうちで食べていくか?」

 問いかけた。その言葉に目を輝かせ、純は起き上がる……が、すぐ俯いた。

 「お母さんが怒るし……」

 「俺が口利きしてやろう」

 「えっ、本当!?」

 再び彼女の目に光が宿る。

 「よく頑張ったからな」

 「やったーっ。やった、やった!」

 ぴょんぴょん跳ねる純は、永青の手を握ると道案内をするように先へ急ぐ。

 永青も、その小さな手を振り払うことなく付き従う。伸びた影はゆらゆらと揺らめき、交じり合っていた。その影は、何処までも続いていた。



 目を開けると、殺意が更に強固に、濃厚になった気がした。絶対に殺さなければ、私が殺さなければ……。

 その部屋を後にし、次の扉を開ける。すると――

 「――放てッ!!」

 矢が四本、同時に兜へ命中した。脳に火花が散るような衝撃が奔る、揺れる視界で捉えたのは、四人のエルフが膝立ちでこちらを狙っている光景だった。奴らは脂汗を額に滲ませ、次の矢を筒から引き抜いている。

 頭は仰け反るが、身体は前へ勝手に動く。無意識に近い状態で、私は奴らに近づいていく。

 「……くっ、放てェ!!」

 悲鳴のような声が響く。またしても頭。だが次は衝撃を予期していたので大した障害でにはならなかった。

 (さすが、高い金を払っただけある……!)

 偏屈婆ではあったが、これだけ頑丈な鎧を作って貰えるなら文句は無い。生きて帰れたらお礼の一つでも言ってやろう。

 「こいつ、化け物か……!?」

 怯える男の頭を掴み、嗤う。

 「化け物は、お前らだ」

 そのまま垂直に地面に組み伏せる。男は歪な赤い花となり床に咲いた。その惨状に、一人が吐瀉物を撒き散らす。あまりに鼻につくので、思い切り顔面を拳でカチ上げてやった。そうすると更に赤い汁を吐き出しながら後ろへ仰け反っていった。

 「う、うわああああああああっ!!」

 残り二人は怯えた表情で弓を構えたが、適当に腕を振り、足裏で踏み潰すとその顔は無くなった。肩透かし、と評価できるほど簡単に。

 「……こんなものか」

 こんな弱く、脆く、愚かな者たちにあの人は殺されたのか。村の皆は殺されたのか。両親は殺されたのか。酷い、酷過ぎる。あんまりだ。

 胸の中で疼く虚無感と僅かな悲哀。だがそれをすぐさま怒りと憎しみで塗り潰す。そうでもしないと――自分を保てない。きっと、全て殺し尽くさないと私は……。

 「――うおおおおおーッ!!」

 突然の雄叫び、そして身に降りかかる重量。兜で狭まれている視界では何が起きているのか把握できない。

 「やれェェェェェェ!!」

 男が二人両肩に絡みつき、両腕の動きを封じようとしているのだ。強引に首を捻って振り返ると、目を血走らせたエルフがナイフを腰溜めにして走り寄ってきていた。

 「……っ!?」

 「死ねエエエエエエエッ!!」

 刹那。兜の隙間から喉元へナイフが摺り込み、抉ってきた。男の歓びに満ちた顔……だが。

 「……なっ!? ウソだ、ろ……?」

 帷子がナイフを受け止めた。非力なエルフでは鎖を断つことなど出来はしない。……もっとも、私の筋肉すら裂く事は敵わないと思うが。

 「もう、いいか?」

 両腕を交差させ、肩にしがみつく男たちを掴む。握るだけで軋みを上げる細腕、手を滑らさないように万力を込め、目の前の男へ振り下ろした。

 肉と肉が爆ぜ、押し潰される不快な音。ナイフを持っていた男の首はおかしな方向に折れ曲がり、振り下ろした男たちの腕は捻られた手羽の関節の如く捥げかかっていた。

 「ひーっ! ひっ、ひっ、お、俺の腕っ」

 「が、ぐぞぉ、ごろじて、ごろじてやる……!」

 即死したのは一人だけだったらしい。金の頭髪が肉ごと剥がれてしまっている。

 恨み言を垂れながら這いずる回る二人が喧しい、下ろしていた鉄球を持ち上げ、顔面に叩き落した。何故、と言う奇妙極まりない顔をしながら飛び散っていく顔の断片。

 不思議と鼓動が高まる。だが、それと反比例するように頭の中は鮮明に、そして冷静になっていく。まるで、私が、私の手から離れていってしまうように。

 部屋を出ると、ばったり一人のエルフとあったので撲殺した。まだ若そうであったが、体が勝手に動いた。先ほどから掛かる血が、心にまで染み込んでくる。

 (――何を考えている!? 殺せ、殺すんだ!!)

 自分に言い聞かせて、歩を進める。進まなければ、私は存在する必要が無い。

 ズル、ズル、と引き摺る鉄球。木の床を抉り、玄関から伸びる傷跡。先に見える階段の上へ向かうべく先を急いでいたが、途中で十字路になっている事に気付いた。真直ぐは階段、左右は渡り廊下……いや、これは最早木へと掛かる橋だ。木を刳り抜いて離れのように使っているのだろう。

 木の洞の中は薄暗く、人が居るか分からない。だが、一人も逃すつもりは無い。まずは左の渡り廊下を渡ろう。

 廊下の中頃まで来ると、少し撓んだ気がする。見た目は木で丁寧に作られているが、それほど丈夫な造りではないのかもしれない。

 暗い洞の中で何かが煌いている……火だ。橙色の火が立ち並び、何かを煮出している。

 部屋の中では白衣を着た二人のエルフが机に向かって熱心に書き物をしており、私に気付く気配は無い。室内には今までに見た事のない硝子の丸い鍋や壷が所狭しと置かれており、それを火が煮出していたのだ。

 鍋に満たされた液体は緑や紫に染まり、この世の物とは思えない程禍々しい色をしている。それも、火に熱されて緑から鮮やかな青に変わり、そして朱へ転じる。今まで、このような光景は見たことがない。

 (そう言えば聞いた事がある。科学とは袂を別ち、胡散臭い魔術に傾倒した学問がエルフに伝わっている、と……)

 その名は、”錬金術”。まさか本当に存在するとは思っていなかった。

 (だが、やる事は変わらないが)

 鉄球を引き上げ、掌に乗せるとその音で二人が立ち上がった。一人は壁に掛かった弓を取ろうとしたが――

 「残念だった……なっ!」

 上半身を捻って掌を突き出し、鉄球を撃ち出す。あまり遠くまで飛ばす事は出来ない投法だが、この距離なら委細問題無い。

 「あっ」

 鎌首を擡げた蛇が獲物に喰らい付く様に、エルフの腹を噛み千切った。抉られた男の身体は倒れようとするも、壁にめり込んだ鉄球から伸びる鎖に支えられ、力なくぶら下がっている。

 「おま……っ、誰だ……!?」

 答える必要は無い。身を回転させ、鎖を引き絞る。その動きに呼応して、鉄球は木片を散らしてもう一人の男へ襲い掛かり……その棘で顔の皮を薄く剥いだ。

 「……! 外したか」

 そのまま顔面ないし上半身を砕こうとしたのだが、紙一重で躱されてしまった。と、言っても顔の中身が外気に触れた激痛で男は悶えているが。

 (外した? 私が?)

 少しばかりだが動揺する。この日の為に己の腕は高めに高めてきている。あらゆる状況を考えて訓練を重ねてきた。それなのに、この距離で外すだなんて信じられない。

 (……理由を考えるのは止そう。今は先へ)

 男の顔もしっかり踏み潰し、来た渡り廊下を引き返す。引き摺っていた鉄球には肉片がへばりついているが、気にする事ではない。

 肩を落として歩く。少し疲れてきているのか? それもあるが、どちらかと言うと気力が僅かだが削がれつつある。

 (一人、一人、と殺すたびに心に重油を浴び掛けられるような……。これが、修羅道か)

 思いがけず自嘲気味の笑みが洩れてしまった。それも当然だ、どこの世界に人を殺して心を闇に堕とさない者がいるだろうか。そんな者は破綻者か獣か神ぐらいなものだろう。

 「心持たぬ者に、復讐など出来るものか。この感覚こそ、復讐を執行している証なのだ」

 これまで、人を殺した事は確かにあった。初めての殺人も、「強くなるため」と己に言い聞かせると震えも起きなかった。この日は私にとっての終着点、特別な「殺人」なのだ。なればこそ、こうして心動く事もあるだろう。

 「私は、全てを撃ち砕く!」

 それだけだ。何があろうと、それだけ見据えて行動すれば良い。失う事など怖くない、ただ、この気持ちが枯れ果てて、何もせずに安穏と暮らしてしまう事が怖いのだ。

 引き摺っていた鉄球を引き戻し、掌に乗せて歩く。

 「――む?」

 胸辺りに矢が当たり、跳ね返って天井に突き刺さった。前を見ると、反対側の渡り廊下の向こう、木の洞から何人ものエルフが弓を手にこちらを狙っていた。彼らも先ほどの連中のように白衣を着ていた。それを見るに、反対側でも錬金術の研究を行なっていたのだろう。

 次々と矢が飛んでくる。流石に邪魔臭いので鉄球で顔を隠して渡り廊下を駆ける。矢は容赦なく浴びせ掛けられるが、歩みを止めるほどのものではない。

 廊下を駆け抜け、元の一本道の廊下へ戻ったその時、あることに気付いた。

 「成る程な。賢しいエルフらしいやり方だ」

 木の洞へ向かう渡り廊下が……落とされていた。

 安全な場所から矢を放たれる。痛みなど全く無いが、その状況は気に食わない。非常に、だ。これ以上的になってやる必要も無いので横へ引っ込む。

 それでも矢は飛んでくる。壁を貫き、私を殺そうとしているのか。

 (だが実際にどうする。鉄球は届くが、殺し漏らしが起きそうだ)

 地面への距離は知らぬうちに随分と高くなっていた。エルフなら木を伝って逃げられるだろうが、私には酷な高さだ。

 思案に耽っていると、目の前の扉が開いた。男が一人、酒を煽って現れる。私の姿を捉える目はトロンとしていて、逃げる気配も無い。

 男の肩越しに見える部屋にも誰も居ない。どうやらこの男は、この騒ぎに気付かず、今の今まで酒を飲んだくれていたらしい。

 「あ!? あぁ……んだ、おう、ぅん?」

 酔っ払ったエルフなど滅多に見れない、別に見たくもないが。だが……その酒にはひどく惹かれる。

 その酒は味こそ悪いが、火を着ければよく燃える。部屋の奥には丁度良い具合に蝋燭が燃えている。一応、確認の為に壁の強度と木への距離を確認する……良し。

 「大丈夫だな。問題無い」

 男には悪いが、首を掴んでへし折った。手から離れた酒を受け取り、床に置く。

 「さて、と。少し暴れるとするか」

 エルフたちには怯えてもらったほうが何かと良いだろう。鉄球を何度か試すように縦に回し、腕力だけで壁へ叩きつける。思いのほか壁が薄かったのか、簡単に壁が壊れた。地に落ち行く金具に付き従うようにして、板切れも軒並み崩れていった。

 「風通しは良くなったな……おっと」

 姿を現そうものなら矢が飛んできた。身を隠し、部屋の奥にある蝋燭を取りに行く。

 私自身、火の扱いにはさほど自信があるわけではないが別にこの屋敷が燃えてしまっても構わないし、私が燃えてしまってもあまり構わない。淡々と廊下に投げ出されている鉄球へ酒をぶちまけた。

 クン、と酒の臭いが立ち昇る。まったく臭くて敵わない。記憶の彼方の父も美味しそうに飲んではいたが、こんなものを体内に入れるなんて正気じゃない。

 頼りなくたゆたう蝋燭の火を、打ち棄てるようにして放り投げる。火は酒に引火し、鉄球に染み付いた脂を焦がして勢い良く燃え上がった。

 鉄球は炎の中でもドス黒く、ぶすぶすと焼けた肉の臭いを臭わせる。その臭いは獣油と言うよりは香木に近かった。

 鎖にまで火は絡み付いてきたが、短時間ならさして問題にはならない。軽く手で鉄球を回してみたが火は消えない……よし。

 「溜めに溜めた怨みを燃やすには、今日という日が相応しいか」

 くるくると鉄球を回しながら、対岸の木の洞の前に立つ。矢が鎧に当たって跳ね返り、足元に累々と積まれていく。

 まず一度、大きく頭上で円を描く。炎の軌跡が風景をぼやかした。

 次の回転は上半身を使って回す。鉄球に遅れて火は舞い踊った。

 そして三度目の回転では既に右足を軸にして旋風と化していた。

 もはやその回転は目で追えぬほどの迅さとなっている。轟々という音と、妁炎の渦。その二つは離れたエルフたちを怯えさせるには充分な威力だった。

 矢は知らぬうちに降るのをやめていた。水の零れた絵画の如く滲む風景はもはや見慣れたものだ、もうこの状態になっても私は目測を見誤る事は無い。

 「――ッ、ァア!!」

 左足を杭として廊下に穿ち、上半身を投げ出すほどの万力を込めて鉄球を投擲した。掌にビリビリとした衝撃を這わせながら鎖が流れていく、その先にあるは炎を纏った鉄塊。それは半円状の陽炎の線を描きながら飛んでいき――木の横っ腹へと突き刺さった。

 木片を吐き出して木は鉄球を飲み込むと、数瞬と待たずして……爆発した。

 「なん……だ、これは!?」

 この鎧が震動するような爆発だ、小さいものではない。木の洞から噴き出した爆炎、その圧力に屈したのか木は膨らみ、内側から爆ぜた。

 逃げ出そうとしたエルフたちは火に煽られてあっという間に炭と変わった。半身を乗り出していた者も炎に舐められ、断末魔を上げて地へと墜ちていく。予想だにしない状況に、私はぶら下がった鉄球を引き戻すことも忘れて眺めていた。

 (あれだけの爆発は火薬でも無い限りは……)

 まさか。彼らが傾倒する錬金術によって火薬ないし火薬に準ずる物が作られていたのではないだろうか。閉鎖的なエルフ、錬金術の内容は分かっていない事のほうが多い。その彼らが火薬に近いものを有していてもおかしくない。もう一方の部屋にも、不可思議なものはたくさん在った。

 (しかし、一体ソレは何なのだろうか。火薬として用いるために作ったのか、それとも……)

 「詮無きこと、か」

 引き戻した鉄球には煤けた何かが付いていたが、廊下に落とした拍子に砕けて落ちた。生木であるように見えるのに、木は良く燃える。時折小さな爆発を繰り返しているが、あの火がこちらに燃え移るとは考えがたい、無視していいだろう。

 これほどの騒ぎになっても廊下を駆けてくる者はいない。何処かで待ち伏せしているのか、隠れてしまったのか、どちらにせよこの道を往き、扉を開けていけば解決するだろう。先へ急ごう。

 戦闘に主眼を置いているため、何とも書き心地が重たいです。もっと執筆速度を上げて行きたいです。

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