5話 告白 by拓海
生徒会のメンバーは無事、その後に決まった。
会長、3年鈴野 恋
副会長、3年白高 拓海
会計、2年仲内 和樹
書記、1年美川 梨乃
みんな、ちゃんと生徒会の仕事がどれだけ大変か納得し、入ってくれた。
恋も女子が生徒会に入り、満足しているようだった。
これで、少しは気分を楽にしてほしい。
と思っている。
その次の日にあった、委員長会議では、これからの学園の繁栄に向けてやる気が漲っていた。
新学年初の行事、3学年合同の宿泊研修も後1ヶ月と迫っていた。
「ねえ、拓海」
生徒会室での仕事中、恋が俺に話しかける。
「何?」
「宿泊研修の予算が、合わないんだけど…どれを抜けば良いと思う?」
「ん~…和樹、梨乃。何か、生徒から不評のイベントとかないか?」
すると和樹がハッと思い出したかのように拳を手のひらに打つ。
「そういえば、去年夜にあるレクレーションは、あまり面白くないと不評でした」
「あ~…ビデオを見る奴か…」
拓海は考え込み、頷く。
「じゃあ、夜のレクは失くそう。その時間には夜の山歩きとかで肝試し的なのでも面白いかもな」
「わぁ~それ良いです!!拓海先輩!」
梨乃は瞳を輝かせて立ち上がった。
「さすが拓海だね。じゃあ、それ決定ってことで…」
恋はパソコンに文字を打ち始める。
どうやら、俺は役に立ててるようだ。
この調子で、恋の心の中からアイツへの気持ちも消えたらいいけど。
なんて、すぐ消えるものじゃないよな…。
俺は一人苦笑する。
「どうしたの?拓海」
恋が俺の顔を覗き込む。
「いや、別になんでもないよ」
「そう?」
また恋はパソコンに視線を戻す。
少し、胸が痛んだ。
もしかしたら、俺。
自分の気持ちに我慢が効かなくなってきてんのかも。
「3年の皆さんは部屋で待機しててくださーい」
俺がそう叫ぶと、恋が俺に向かって手招きする。
俺は恋のところへ駆けていく。
「どうした?」
「ね。ちょっとだけ時間あるから、展望台行ってみない?」
恋が指差す先には青いタイルで包まれた展望台があった。
「おう」
山の中にある合宿所は、とても綺麗だ。
展望台に昇ると、向こう側には海が広がっていた。
「すごい気持ち良いね」
恋は真っ直ぐな眼で海を見る。
風に注がれた長い髪。
恋こそ、綺麗だな。なんて思ったり。
そんな事考えていたら、口に出た言葉。
「仁先輩のこと、もう吹っ切れた?」
恋は目を見開いた。
そして、俺を見て微笑する。
「ううん」
首を横に振った。
沈黙が続き、恋は儚げな表情を見せる。
「私を捨てて、私は仁を物凄く恨んでるはずなのに…全然嫌いになれないの」
そう呟く恋は、少し目が潤んでいた。
今すぐに抱きしめたかったけれど、俺は拳を握り、我慢する。
「この展望台。去年、仁と一緒に来たんだ。思い出の、場所なんだよね」
そして、恋は涙を流した。
「もう、仁が東京に行って2ヶ月もなるんだね…早いなぁ」
不謹慎だが、少し泣く恋が綺麗に思えた。
その涙も仁のためなんだな。
俺は無意識に恋を抱き寄せていた。
「拓海…っ」
「ごめん…恋。俺…」
もう、俺は止められなかった。
「お前が好きだ」