10話 再会 by仁
夏休み、太陽が照り始めた朝。
むくっと俺は起き上がる。
静かな部屋で、玄関前に置いたボストンバッグを見つめる。
久しぶりに故郷に帰る。
かなり、嬉しい。
俺は弾む足で、洗面所へ向かった。
支度をして、俺は重いボストンバッグを持ち上げた。
「行くか」
ドアを勢いよく開けた。
目の前にある駅に向かって駆ける。
定期券を手に、俺は心を躍らせホームに。
新幹線を降りて、俺は見慣れた町を前に改札口へ向かう。
しかし、前を懐かしい2人が遮った。
「お、お前ら…」
「よっ」
「久しぶり」
俺は思わず目が潤んだ。
目の前に、あの懐かしい隆起と洵が…っ!!
「おぉぉぅ…会いたかったぞ~…友よ!」
抱きつこうと飛ぶと、洵が俺の頭を掴む。
「落ち着け」
「…はい」
俺は思わず素直に答える。
そして、懐かしさに頬が緩んだ。
「はは。ほら仁。下で他のメンバーが待ってるから」
隆起が、俺の肩を軽くたたく。
他のメンバー?
「3人で行くんじゃないのか?」
「まあな。で、彼女は連れてこなかったの?楽しみだったのに」
隆起は残念そうに眉を顰めた。
「はぁ!?俺、3人で行くんだと思って連れて来る気さらさらなかったよ。てか、もう別れたし」
「「は?」」
2人はひょんな声を出す。
隆起は溜息をつく。
「やっぱ、お前を旅行に連れてきて正解だったよ」
少しづつ歩んで、俺達は改札口まで来ていた。
そして、隆起は、改札口を指差した。
俺は目を疑った。
「………」
俺がしばらく沈黙していると、向こう側にいる愛しい姿はこちらを見て口を手で覆う。
あぁ。
やばい。
本当に泣きそうだ。
今まで我慢していたものが溢れてくるように
いや。だめだ。
俺は足を踏み縛り、隆起の胸倉を掴んだ。
「どういうことだよ?」
「どういうこともなにも、現生徒会と旧生徒会のメンバーで旅行行く予定だったんだよ」
「お前なぁ…そんな口実言って、恋を狙うつもりだろ?」
「だったらどうする?守れよ。恋チャンを」
隆起は余裕な表情を浮かべて俺を上目見る。
俺は仕方なく胸倉を離した。
「恋に余計なことしたら、たとえお前だとしても許さねぇから」
「そう怒るなって。楽しもうぜ?」
隆起は、恋に手を振る。
「お待たせー!!メンバーそろったね」
計8人で円を作る。
少し恋のほうを見てみると、恋の手は横にいる奴と恋人繋ぎで結ばれていた。
拓海だ。
やっぱり、付き合ってるのか。
覚悟はしていたけど、やっぱり辛い。
すると一瞬、恋と目が合う。
俺は、バッと目を逸らした。
あぁ…
何やってるんだ…俺は
かっこわりぃ。
「じゃあ、これから貸切のレンタカーで行くから」
洵の指差した方向に、一般の車より少し大きめの車があった。