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新たな証拠

 先生はあゆちゃんはともかく、私と徳永さんが入ってきたのは意外だったらしく、関係ない人は外に出てねと言ったけれど、それでも構わずドアを閉める。


「先生、相談がありま──」


 私の声が先生に届く前に、視界を手で遮る徳永さんの声が全体に届く。


「な、なんですかこの眩しい空間は。まるで朝日を直視したような気分です。美少女の集まりというだけでも破壊力が凄まじいといいますのに、皆さんから漂う陽の気配がわたしの視界だけでなく心までも着実に侵食していきます。せめてこの場にサングラスがあればこの輝きを抑えられるとは思うのですが。もちろん皆さんが実際に発光しているわけではないので、性能的な意味はないのでしょうが、サングラスをしているという事実だけである程度この眩しさを抑えられるのではないかという心理的安心感への希望といいますか。一体わたしは何を言っているのでしょうか。あまりの唐突な場に唐突な状況に少々頭がおかしくなってしまいます。サングラスで思い出したのですが、眼鏡を外せばいいんですね。気づくのが大変遅かったです。眼鏡さえ外せば皆さんのお顔はモヤが掛かるので対美少女にはなりますね。──ありがたいことに皆さんカラフルな髪色をされていますのである程度の区別がついて助かります。とは言いましても藍川先輩と七木先輩以外は存じ上げないのですが。ちなみに可能であればこの眼鏡をケースに入れたいところですが、生憎同好会の教室に忘れてしまったものですので、落とさず持っています。もし仮に落としてしまいましたら拾っていただけると助かります。わたしでは見つけられないので。お話を遮ってしまって大変申し訳ありません。私は緊張のあまり逆に口が回ってしまう特性を持っていますので、少々お喋りになってしまいますが、元が無口な方なのでおそらく普通の人くらいの量にはなっていると思います。それはそれとしてまたも先輩方のお話を遮ったのは良くないですね。改めて謝罪いたします。ところで私は一体──」


 大澤さんが徳永さんの前で指パッチンをすると、電源を落としたかのようにようやく徳永さんの口が止まった。

 聞いているだけで息継ぎが分からなくなって舌を噛みそうだというのに、スラスラと詰まらず言えるのは本当に凄いと思う。それはそれとしてもう少し抑えたほうがいいとは思うけれど。


「あの、先生。相談があってきたのですが」


 徳永さんに圧倒されていた先生が、ハッとして私の方に視線を向ける。


「えっと、後日聞くから。今は──」

「いえ、当事者がここに全員揃っているので今言いたいです。あ、彼女だけは第三者視点として力になってくれるかと思って同席してもらっているだけです」


 徳永さんにあらぬ疑いがいかないように、そこだけは補足しておく。


「相談って……」

「私は宇河さんにいじめられています」


 徳永さんのマシンガントークで一瞬緩んだはずの空気がより一層張り詰めた。ただでさえ空気が少なくなっていたエアーポケットで蝋燭をつけたかのような息苦しさが漂っているように感じる。


「私は二年に上がってから、よく宇河さんにあまり耳心地の良くない言葉を何度も投げかけられました。要領が悪い。愛想が悪い。コミュニケーション能力が低い。つまらない人間。友達いなさそう。寂しい人生。橋野さん達は同情で一緒にいるだけ。私なんかに付き合わされて橋野さん達可哀想。今まで宇河さんから言われたことの一部です。八つ当たりで私の机を蹴られたこともあります」


 私の言葉に真っ先に反応したのは宇河さんだった。宇河さんもこの場で今までのことがバレると不利と分かっているのか、焦りを露わに私の側まで移動してくる。


「ちょっと待ってよ、大袈裟に言っているだけですよ先生。ただ藍川さんのこともったいないなって思ったから、もっとこうすればいいのにって思ってアドバイスしただけで、別に今みたいな言い方してないです。悪い方に飛躍されすぎですよ。どうせ藍川さんも、あゆちゃん達に肩入れして立場を守ろうと私を陥れているだけです。藍川さんも加害者ですよ。酷くないですか先生? 私、ただ皆と仲良くしたいって言っただけでここまでされるんですよ。先生だって、皆が私を無視しているの見たことありますよね?」

「そう……ですね」


 宇河さんは涙の出ない嘘泣きを見せて、先生の同情を誘っている。

 先生も先生で、何でこんなに大人数が同じ証言をしているのに、宇河さん一人に肩入れしているのかと思えば、あゆちゃん達が宇河さんを避けようとしている場面を何度か見ていたからなのだと納得がいった。


「島ちゃん、わたし達の証言を信頼できないっていうのは不服だけど納得する。たしかに島ちゃんからしたら、わたし達は好き勝手騒いでいるように見えると思う。口裏合わせて嘘だって平然と吐く想像もしやすいと思う。でも、依吹ちゃんがこんな場面でわざと人を陥れようと嘘を吐く人だと思いますか?」


 あゆちゃんの言葉を聞いて、先生は黙って、一人ずつの顔を見ていく。


「わたしらが宇河をいじめてないって確証は、宇河がいじめを訴え続ける限り取れないって分かってる。島ちゃんも疑わしい場面は目撃しているようだし。でも、宇河が依吹ちゃんをいじめてるって証拠は出せますよ」


 あゆちゃんは持っていたルーズリーフを先生の前に出した。


「休んでる人と帰っちゃった人の署名はもらえなかったけど、残っている人の署名は全員分もらってきました。宇河が依吹ちゃんをいじめてるって証人は、ここに名前が載っている人達とわたし達がなる。もし足りないって言うなら、皆がいる時に聞けばいいです。だって、島ちゃん含めた先生以外、クラスメイトや遊びにきてた他クラスの子達は見ているんですから」


 先生は、藍川依吹が宇河弥唯にいじめられている事についての告発と書かれた紙に、クラスメイト四十人中十六人の名前が直筆で書かれた紙を、複雑そうにじっくりと読んだ。


「二回戦といきましょう。インターバルもらった分、全力で頑張りますよ」


 あゆちゃんは絶対に負けられないと真剣な顔で、先生と宇河さんをしっかり見据えた。

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