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決断

 大澤さんは宇河さんに絡まれて、逃げるように教室から出ていき、すみちゃんとあゆちゃんは涼しい顔をしている日南さんに文句を言っている。


「わたしの気持ち知ってるくせに! この泥棒猫!」

「あら失礼ね。私は盗んでないにゃ。あゆが一方的に好きだっただけじゃない。私の場合は勝手に外堀が埋まってしまっただけよ」

「意味がなくても否定するだけしなよ。したとしなかったじゃ後々の印象が違うでしょ」

「しないわ。気にしているみたいじゃない。私は別にどうでもいいもの。したいならあなた達が勝手にしなさい」

「好きじゃないのに付き合う事にするなんて、藍川さんに不誠実だよ」

「そうだそうだー! 言ったれ純蓮〜!」

「あら、私はちゃんと依吹さん好きよ」


 すみちゃんは少々ムキになったのか、日南さんの机を強く叩く。


「そもそも、藍川さんに好きな人いるの知っててそんなことするなんて信じられない!」

「別に寝取りや浮気の趣味なんて私にはないわ。もし彼女が付き合い出したら面倒になる前にすぐやめるわよ」

「何その自分勝手! それに、藍川さん言ってないだけでもう付き合ってるかもしれないでしょ⁉︎」

「それは普通にわたしにもダメージいくんだけど。想像させないでよ純蓮」

「ごめんあゆ。でもそんなこと今気にしてる余裕ない」

「もしそうならぜひともどんな人か見てみたいわね。それに関してはしっかりと口は閉じるもの。また怒られてしまうから」


 すみちゃんとあゆちゃんが何を言おうと蛙の面に水で、全く改善の兆しが見えない。


 白葉ちゃん達と過ごしながらそんな状況を見せられると、溜め息が止まらなくなる。


「ねえ、白葉ちゃん。どうすればいい?」

「その依吹っちが好きな人と付き合えばいいんじゃないか? そしたら沙雪っちはやめるんだろ?」

「それができたら苦労はしないんだけどね」


 付き合うというより公表の方だけど。


「まあなにより、大澤にも言われたと思うけど、それじゃあいぶっちゃんが悪者になっちゃうからね」

「なんでだ⁉︎ 依吹っちいい奴なのに!」

「いぶっちゃんのこと知ってる人が少ないからね。知らない人より知ってる人を庇うのが人間の心理なんだよ。もちろん、日南が分かりやすいクズだったり、橋野みたいに取っ替え引っ替えしているような感じだったら、特に問題はなかったと思うけど。運の悪い事に日南美人でしょ。しかも表面的な付き合いだとクールな印象抱かせるから、人格面でも人気あるんだよ」

「じゃああたしが依吹っちはいい奴だって言い回ってやる!」


 小夏が今にも私から離れて実行しそうだったので、思いっきり抱きしめて離さないように力を入れた。


「余計なことしないのこなっちゃん。少なくとも、いぶっちゃんの顔は割れていないから、そういう意味では平穏に過ごせるよ」


 そう、白葉ちゃんは言っていたのに、恐るべき学校社会。ものの二日で私の事が出回っていた。


「ねえねえ! 日南と付き合ってるってまじ⁉︎」


 廊下を歩けば面識のない子達に挨拶の二言目にはそんなことを聞かれる。

 上手く誤魔化してさっさと教室に避難するけれど、どっと疲れる。


「はぁ……。どうしよう」


 屋上前の腰壁に腕をついて黄昏れながら、何度もため息を吐く。


「ごめんねいぶ。沙雪、何言っても聞かなくて」

「大丈夫だよ。すみちゃんは本当に頑張ってくれたと思う」


 今回の件、一番の被害者はどう考えてもすみちゃんだ。無関係のことに奔走させられて、無駄なストレス抱えさせて。


「ねえ、すみちゃん。日南さんとは別れたって事にしてもいい? たとえ悪く言われようと私は気にしないし、そもそも大澤さんが言う通りになるかも分からないし。皆巻き込んでこんな悩むくらいならって」


 すみちゃんは後ろから抱きついて、私の手を握り込む。


「友美奈の言うこと、きっと合ってる。誰にでも悪意ってあるの。正義という建前がある悪意ってね、人は大好きなの。だから人ってどんな話題でも叩くの。可哀想って言葉を盾にして、作り上げた悪者でストレスを発散するの。私ね、いぶが悪者になるの嫌だよ。いぶが平気でも私が耐えられない」

「でも私、すみちゃんが傷つくの嫌だ」

「いぶが悪く言われたら、それはそれで私は傷つくよ。大丈夫。私は耐えられるから、いぶは悪者になろうとしないで」


 私はあまり、すみちゃんの強さも弱さも分からない。私の中のすみちゃんは、自分の気持ちに押しつぶされそうになって泣いている女の子だから。でも、それはそれとして、すみちゃんは自分を罰する強さも持っていた。

 すみちゃんは私が思うより強くて、私が思うより脆いのかもしれない。


「一つ、考えがあるの」


 分からない。分からないなら、今必要な方を信じるべきだと私は思う。

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