小夏離れ
ここ最近、小夏は死んでいる。
この前、小夏になんで勉強してるんだ? と聞かれたから、期末テストが近いからと言うと、知らなかったのか、衝撃を受けた顔をした後、いつもの元気をなくし萎れていった。
「小夏さん、これじゃあ勉強できないよ」
小夏は手と足で私の体をしっかりとホールドし抱きついている。
「だめだー! 依吹っちはあたしと補習受けるんだー!」
「それは心の底から回避したいんですけどね。小夏も勉強したら?」
「小夏さんは生涯の勉強を受験に捧げてしまったのでした。ちゃんちゃん」
「困ったな〜」
小夏に勉強を教えたこともあった。けど、いつの間にか寝てしまい、手に涎を垂らされたこともしばしば。
「小夏が補習受けちゃうと一緒にいられる時間減っちゃって私は悲しいよ」
「あたしも依吹っちとの時間減っちゃって悲しい。だから一緒に補習受けよ」
「受けない方向で考えよう。そうだね、勉強するっていうのはどう?」
「依吹っちはあたしをいじめたいの⁉︎」
「そんなことしたくないよ。うーん」
一対一だからダメなのかな。大勢で勉強会したら、小夏も寝ずに勉強できるかもしれないし。
私は離れない小夏を抱いたまま立ち、クラスで一番人だかりができている輪に入っていく。
「七木さん達、勉強会する予定あったりする?」
すみちゃん含めた男女八人が、会話を止めこちらを見てきた。
「そういえばもうすぐテストだったな。お前らちゃんと勉強やってんのか〜?」
「あんたに言われたくないわまじで。ね〜」
「そうそう。中間赤点取ったんでしょ」
「掘り返すなよまじで〜」
「まあこんな感じなわけで、そういう予定は今のところ未定」
「僕らは塾行っている人も多いしね」
「そっか〜。ごめんね、ありがとう」
自分の席に戻ろうとすると、瀬野君が呼び止めてきた。
「勉強会してほしかったのか?」
「うん。小夏、私と一対一だと勉強教えても毎回寝ちゃって。皆でワイワイやったら楽しく勉強できるかなって」
「藍川さんまじ小夏の保護者〜」
「まあ、そういうことなら開いてもいいんじゃない? 純蓮勉強できるし」
「私だけに頼られすぎると困っちゃうけどね」
「僕もある程度なら教えられる」
「あたしは勉強しないぞ!」
「しないと補習で一人で勉強することになるよ」
「こいつもいるから大丈夫」
「中原と一緒は嫌だ〜!」
「勉強会開くなら流石に勉強するわ! てか小森酷いな⁉︎」
こんな感じの空気なら、小夏も楽しく勉強できそうで安心する。
「藍川も参加するか?」
「いいの?」
「企画者藍川さんみたいなところあるしいいっしょ〜」
皆が歓迎ムーブなので、お言葉に甘えようとしたけれど、私が返事をする前にすみちゃんが口を開いた。
「藍川さんは参加しない方がいいと思う」
「なんで純蓮。別に良くない?」
「藍川さんいると、小森さん藍川さんに甘えて集中できないと思うから」
皆口には出さないが、納得という空気を出している。正直私も反論はできない。
「それじゃあ、小夏だけ預けようかな」
「依吹っちいないのやだー!」
「そろそろ藍川離れしなさい小夏は」
くすぐられて力を緩められた小夏は、女子三人によって私はから離された。
「うわーん、依吹っち助けて〜。いじめられる〜」
「今だ藍川! 離れろ!」
「え、あ、うん。補習回避できたらご褒美あげるから」
「依吹っち〜」
小夏が必死に手を伸ばして私を掴もうとする姿に少し心が痛んだ。同じクラスの人に勉強を教えてもらうよう託しただけなのに。




