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カフェ

 あゆちゃんと小夏とメニューを眺めていると、皆はもう既に決めたのか次々と食べたいものを口にしていく。


「私フルーツタルト」

「あたしはシフォンケーキでいいかな〜」

「うちプリンアラモード」

「カツカレーにするわ」


 日南さんがそう口にした瞬間、方々からおいっ! とツッコミが炸裂した。


「ケーキが美味しい店なのに」

「仕方ないじゃない。さっき甘い物飲んだのだから」

「だから帰りに買えばいいのに。言ってくれれば誰かしら覚えててくれたでしょう」

「言うのを忘れるかもしれないじゃない。それに、あなた達からもらうから問題ないわ」

「もらう気満々だと一気にあげる気なくなる。沙雪メロンとか取りそうだし」

「純蓮はブルーベリーしかくれなさそうね」

「ブルーベリーでももらえるだけいいじゃん!」

「落ち着いて七木さん」


 すみちゃんにそう声をかけると、一拍置いてふんっ! とそっぽむいて腕を組んだ。

 それは流石に子どもっぽすぎるんじゃないかとちょっと思った。


「依吹ちゃんこれにしたいとかある?」

「うーん。悩むね〜」

「じゃあ依吹ちゃんチョコレートケーキにして。わたしショートケーキも食べたいから、ちょっとちょうだい」

「いいよ。小夏は何にするか決まった?」

「ん〜。パフェにするかな〜」

「どのパフェがいい?」

「いちごだな!」

「決まったね。じゃあ店員呼ぶよ」

「飲み物どうする?」

「まあ店員来たら各々言えばいいんじゃない? そこまで把握できないから」


 白葉ちゃんが店員さんを呼び、全員分の注文と取り皿をお願いした後、私達も飲み物を言っていく。


「純蓮〜紅茶頼むなんて何大人ぶってんの〜。純蓮ちゃんはココアがいいんじゃないの〜?」

「ケーキが甘いと苦味も欲しいでしょ。あゆは私をなんだと思ってるの」

「子ども舌」


 ムキになったすみちゃんはあゆちゃんをくすぐって精一杯の反撃をしていた。


「ちょっ、くすぐったいよ純蓮」

「そこ〜うるさいよ〜」


 あゆちゃんは私の膝に倒れるように頭を乗せ、すみちゃんも気づかぬうちに私に接近していた。

 すみちゃんの肩を叩いて、止まった手をあゆちゃんから離す。


「他のお客さんもいるから、ほどほどにしようね」


 すみちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめ、何も言わずに定位置に戻って座り、水を啜っていた。


「あゆちゃんも」

「うーん。わたしはまだこのままでいいかな」

「どうして?」

「膝枕なんて中々してもらえないから」


 あゆちゃんはそのまま手を縦に伸ばし、日南さんのところにまで伸びた右手は日南さんに叩かれていた。


「いった〜」

「行儀悪いぞあゆっち」

「小夏に言われると若干傷つく」

「なんでだ!」

「日頃依吹ちゃんにしている行いをよーく思い返してごらん〜」

「でもここではしてないぞ!」

「小森若干行儀悪かった自覚あるんだ」

「ない!」

「ないんかい!」

「まあまあ。あゆちゃん起き上がれる?」

「依吹ちゃんがちゅーしてくれたら起きれるかも〜」


 あゆちゃんはそう言って、私の方に手を伸ばす。


「そんなに言うなら私がちゅーしてあげようか?」

「純蓮のは求めてませーん」


 私はあゆちゃんの伸びた片手を握り、背中に手を回してあゆちゃんを起き上がらせる。


「起きてくださいお嬢様」

「強引〜。お嬢様ならもっと丁寧に起こして〜」

「次からは善処します」

「しなくていいよ。藍川さんはあゆを甘やかしすぎ」

「甘やかされていませんよ〜」


 あゆちゃんは取り出した鏡をすみちゃんに持たせて、崩れた髪を直していく。言い合いしながらも鏡を持つのも託すのも、中々面白い光景だ。


「依吹ちゃん、可愛い?」

「うん、可愛いよ」

「大して変わらないわよ」

「まあ私元から可愛いから」

「自分で言うなんて悲しいわね」


 日南さん、この前自分で喋らなければ美人と言われるとか言ってたのに……。


「沙雪がいじめる〜!」


 あゆちゃんが私の腕を掴んで自分に寄せると、対抗して小夏も私の腕を掴んで自分に寄せる。

 あゆちゃんと小夏が見合っている中、私の視線は、漫画やアニメならばハイライトを無くして描写されるであろう、水を啜りながら、いや、啜ってもいない。ただコップを口に当てながらこちらをじっと見ているすみちゃんしか目に入らなかった。

 このドキドキは緊張なのか恐怖なのか、はたまた別の感情なのか。今分からなければきっと後になっても分からない。


 しばらくしてそれぞれ頼んだ物が届いて、シェアしながら皆で食べた。先ほどまで纏っていたすみちゃんのおどろおどろしい雰囲気も、タルトを前にした瞬間、ただ普通に良いことのあった少女くらいになっていた。

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