席の決め方
最初は三、二、二で並んで歩いていたけれど、いつの間にか二、一、二、二で歩くようになり、もう前の人達の会話なんて聞こえなくて、急に前から話題を振られても何も返せないのに、返した前提で話が続くみたいな状況に陥っていた。
「眠い〜、おんぶ〜」
「小夏昨日寝なかったの?」
小夏が服を引っ張って強請るので、フラペチーノを小夏に預けて腰を屈める。
少しよろめきそうになりながら小夏をおぶって立ち上がり、少し先に行かれた皆を早歩きで追いかける。
「財布無くして探してたんだ〜。なかったからお年玉持ってきた〜」
「別に私が出すからいらなかったのに」
「白葉っちも本気で奢ってくれなんて言ってないぞ。あたしも思ってないぞ。だから皆で来たんだ」
「じゃあ、改めて今度ジュースでもあげるね」
「あたしオレンジ〜」
「了解しました」
皆に追いつく頃には小夏の瞼は重くなり、手からフラペチーノが落ちそうだった。
「よっと。こら沙雪〜、自分の物は自分で持て〜」
私達が遅れている事に気付いていたのか、追いつくと同時に大澤さんが後ろに来て小夏の手からフラペチーノを取っていた。
「それあげるわ」
「帰りだったら喜んで飲んだけど、これからカフェ行くのにわーいありがとう〜とは簡単に言えないね〜。いいから自分で飲め」
「仕方ないわね」
日南さんは大澤さんから受け取って、フラペチーノを飲み干した。
「頭が痛くなるわ」
「一気に飲むからだよ」
「あなたが飲めと言ったのよ」
「誰も一気にとは言ってないよ」
「屁理屈ね」
「あんただよ」
日南さんはさりげなく私の方に空になったカップを向けたけれど、小夏で両手が塞がっている私はもちろん受け取れないので、いつまでもずっと手元にあるカップを不思議に思ったのか、日南さんは振り返ってきた。
「あら、両手が塞がっていたのね。いつの間に」
「藍川に渡そうとするな」
「別に私は強制してないわ」
「だとしてもさりげなくゴミ押し付けない。自分で持つ」
「持ってるじゃない」
「もうやだ。助けて藍川」
「コンビニならゴミ箱あるんじゃないかな?」
「そうね。捨ててくるわ」
そう言って日南さんは目についたコンビニに向かっていったので、私達の足は自然と止まった。
「なんかごめんね。それよりも、なんで小森おぶってるの?」
「小夏が眠いって言うから」
「相変わらず甘いね〜」
「そうかな?」
「そうだよ。うち──私はやんないもん」
「……大澤さんの言いやすい一人称でいいと思うよ」
「うっかり出ちゃったな〜。気が緩むとね。今後の為に今から私にしようと思ってたんだけどね」
「うちも良い一人称だと思うよ。大澤さんの気さくさが全面に出ている感じで」
「ありがとね」
日南さんが戻ってきて、私達は前のグループに追いつくように少し早く歩く──なんてことはしなかった。意識はしたけれど、会話をしていると自然と足の速さは落ちていった。
「遅いよ〜!」
「ごめんって。沙雪がコンビニにゴミ捨てに行ったから」
「あら、私のせいかしら? そもそも依吹さんと小夏さんが少し遅れていたじゃない」
「ちゃんと追いついてたでしょ。人のせいにしない」
「ならあなたがペラペラと話していたからね」
「全員悪いってことでいいと思うよ。ごめんね、待たせちゃって」
「まあいいよ。予約時間遅れたわけじゃないし」
白葉ちゃんがカフェに入って名前を言うと、私達はU字型のソファ席に案内された。
「小夏〜着いたよ〜」
「ん〜」
小夏は私の肩に頭をぐしぐしと擦り付けて、睡魔と葛藤しているっぽい。
「あたし支えるからこなっちゃん下ろしちゃっていいよ」
「じゃあ離すね」
腰をゆっくりと下ろしながら、少しずつ小夏から手を離して白葉ちゃんに託す。
「起きないと小夏のケーキないよ〜」
「やだ〜」
あゆちゃんにおしぼりで顔を拭かれながらそう言われて、ようやく少し目が覚めたよう。
「沙雪奥行きな」
「どうしてかしら」
「あんたどうせ手前に座ったところで奥の人に皿回さないでしょう」
「仕方ないわね」
「こなっちゃんも眠いなら奥行きな」
「ん〜。行くぞ依吹っち〜」
小夏を真ん中にし、奥の席に座る。
私の真後ろに素早くついたのか、あゆちゃんが角に座る感じで私の横に座った。
端っこはそれぞれすみちゃんと白葉ちゃんという形になっている。
すみちゃんは若干悔しそうにあゆちゃんを睨んでいるけれど、私と目が合うと急いで逸らしてメニューに目を移した。




