見せてほしい
いつものように小夏を膝に乗せて戯れていると、すみちゃんに肩を叩かれた。
「藍川さん。ちょっといい? ごめんね小夏、ちょっと藍川さん借りていい?」
「おう! いいぞ!」
小夏が膝から退くと、すみちゃんは引っ張るようにして、屋上前まで私を連れてきた。
「どうしたのすみちゃん?」
「どうしたもこうしたも、最近いぶ、私の事嗅ぎ回ってたりする?」
「ん? いや、別にそんなことしてないよ」
「沙雪達からいぶから印象聞かれたって言われたの。どうしてそんなことするの?」
怒っているとか、恥ずかしいとか、そんな感じではなく、本当にただただ抱いた疑問を解消したがっているように見えた。
「私が今まで見てきたすみちゃんって、私に好意を持っている姿のすみちゃんだけだったから。好意を持たないすみちゃんって、どんな子か気になったの」
「そんなに、変わらないよ」
「すみちゃんは、決定権があって、さっぱりしていて、毒があって、面倒で怖い。そして、可愛くて、優しくて、大人しくて、いい子で、しっかりしている。最初が女子からの評価で、後が男子からの評価だった。私の持つすみちゃんのイメージは男子のイメージに近いの。ねえ、すみちゃんからすみちゃんへのイメージは、女子と男子、どっち寄り?」
すみちゃんは口を閉じて、言いたくないと拗ねているように見えた。
「ねえ、すみちゃん」
すみちゃんの頬に指、手の順で滑らせ、その小さな頬に収まり切らなかった指を髪に差し込む。
「すみちゃんは私にギャップを感じたって言ってたよね。じゃあ、私にもそれを感じさせて。私は、すみちゃんの全てを知って、すみちゃんの全てを愛したい」
「どうしてそこまで……」
「私はね、多分もう、すみちゃんに恋してる。だからすみちゃんの為だと思うと一生懸命できるの。でも、自信がないの。すみちゃんに好きだって言われたから私も好きになったんじゃないかって。だったらこの気持ちはいつか色褪せてしまう。私はね、言われたからじゃない。本心から好きだって確証が欲しいの。その為に、すみちゃんの全てを見せてほしい。好意で飾られていないすみちゃんと接したい」
すみちゃんの顔は真っ赤になり、手は汗ばんでいるのか何度もスカートで拭っている。体は膠着して、吐かれる息はとても荒く熱い。
キスしたいか、できるか。今で言うなら、多分私はしてみたい。面白い反応が見られそうだから。
でも実際はフリだけで、お互い息を掛け合っただけで触れることはなかった。
すみちゃんは力が抜けたように地面にへたり込み、上目遣いで私を見る。
──ああ、可愛いな。
「それって、告白……」
「どうだろう。私はまだ、すみちゃんと付き合いたいとは思わないから。すみちゃんには危機感があった。私が誰かのものになるかもって。でも、私にはそれがない。すみちゃんはずっと、私を選び続けるって自信があるから。だから、一度でいいから、この自信を揺らがせてみてほしい。できる?」
「自信は、ないよ。いぶがね、私がいぶに対しての好意を持っている姿しか見ていないように、私もいぶに好意を持たない私を想像したことがないの。いぶは特別だから、他の人と一緒になんてできない。でも、それでもやってほしいなら、私の側にきて。いぶの相手、雑にしてあげるから」
「…………それって小夏と白葉ちゃんも一緒でいい?」
「私が嫉妬するからダメ」
この回答は今日一の速さだった。
「また急に、グループを抜けるわけにはいかない。小夏にはずっと、無理させていたから。だから、一時的にグループを作る時があったらその時にお願いしたい」
「……分かった」
「ありがとう」
すみちゃんを立たせて、真っ直ぐと前を見る。
「ねえ、すみちゃんは私とキスしたいかできるか、どっち?」
「私はしたいよ」
「そっか」
すみちゃんの唇を摩った後、額同士を合わせる。
「私は未だに分からない」




