好意の差
私はあゆちゃん達を追いかけるように戻ってきた宇河さんを呼び止める。
「ねえ宇河さん。少し話せないかな?」
前を歩いていたあゆちゃん達が凄い勢いで振り返ってきて、何か言いたげに口を開いたが、かと言って厄介ごとに巻き込まれるのも嫌なのか、口を閉じて見てるからみたいなジェスチャーをして、すみちゃんの机周りで集まっていた。
「何? 何か用?」
宇河さんからしたら私は陽キャに付き纏っている陰キャ判定なのか、明らかに面倒そうな態度を示している。
「宇河さんから見て七木さんってどんな感じかな? 私、去年同じクラスだったんだけど、七木さんとだけはいまいち仲良くなれなくて。宇河さん、よく七木さんに話しかけているの見るから教えてくれたら嬉しいなって」
宇河さんは片方だけ口角を釣り上げて、優越感を感じているのか少々偉そうな態度に変わった。
「ああ〜いいけど。純蓮ちゃんは結構静かな感じだけど、決定権ある感じだね。割と冷酷なところあるし。まあ、純蓮ちゃんに嫌われたら結構きついと思うよ。純蓮ちゃんが嫌うって、あゆちゃん達全員に嫌われるのと同義だし。藍川さんあんま純蓮ちゃんと仲良くないんだっけ? ちょっとやばいかもね。嫌われてるんじゃない? あゆちゃん達優しいからさ、表では優しくしてあげてるけど、それ別に藍川さんだからじゃなくて、藍川さんみたいな、まあ、カースト的に言うとちょっと可哀想な子に話しかけて好感度あげてるだけで、裏では結構言われてると思うよ。親切心で教えてあげるけど、実際そういう話題何度か上がってるし」
「あ、うん。そうなんだ。ありがとう宇河さん」
大した話聞けなかったな。すみちゃんの好意消えた想像、嫌われている宇河さんなら有益な話聞けるかと思ったのに。嫌われすぎてるのもダメなのかな。
考えてみると、好意ってあくまで恋愛感情のみだよね? じゃあ普通にすみちゃんと交流ある人に聞けばいいのかな。
「純蓮の印象〜?」
大澤さんが一人でいたタイミングがあったので、丁度いいと話を聞く事にした。
「喧嘩でもしちゃった?」
「ううん。そうじゃなくて、私七木さんとはいまいち距離があるから。大澤さんから見た七木さんの話も聞きたいなって」
「つまり仲良くなりたいってことね。改めて印象を聞かれるとそうだね〜。割とさっぱりしてる。そもそも純蓮が何かに熱中してるイメージあまりない。結構聞き専だし。何か出かけようとかの提案もしたことないし。だから話題作りは難しいかもね。部活も入ってないし」
私もすみちゃんが好きなものあまり知らないし、大澤さんも知らないってことは元からすみちゃんはあまり好きなものないのかもしれない。
「ありがとう大澤さん」
「どーも」
今度は日南さんに話を聞いてみた。日南さんはよくすみちゃんといるから、割と有益な情報が得られそうではある。
「純蓮の印象? そうね、毒があるわね」
「毒?」
「ええ。言葉が強く感じる時はあるわね。笑いながら正気? とか、やると思ったけど面白そうだから何も言わなかったとか言ってくるのよ。面白いわよね。そんなだから気を使わなくていいから気楽ね」
あまりすみちゃんがそんな感じで人に言っているイメージないから少々驚きがある。
「ありがとう日南さん」
「ええ」
今度はあゆちゃんに声をかける。あゆちゃんは気づくともう誰かと一緒にいるから、一人を狙うのはちょっと難しかった。だから、あゆちゃんだけ呼び出す事にした。関わりがあったから、あゆちゃんを呼び出すのにあまり違和感はないと思ったから。
「あゆちゃん。ちょっと話いい?」
「いいよ〜。どうしたの?」
「できれば二人で話したくて」
「おっけーおっけー。ちょっと行ってくるね〜」
階段横で話していたけれど、あゆちゃんは流石に顔が広くて、すれ違うたびに挨拶されたり話しかけられていたりと、中々に話を切り出すタイミングがなかった。
「ごめんね〜。それでなに? どしたの? 宇河になんか言われた? 〆ようか?」
「ううん。違くて。あゆちゃんから見た七木さんのイメージってどんな感じかなって」
「面倒。これに尽きる。いつもは別になんともないんだけど、ほら、一年の終わりみたいにどこにあったのか分からない地雷踏むとさ、めっちゃ関わりづらくなって。押しても引いても意味なくて。まじでめんどくさーって感じだったね。あとはまあ、怖いかな。怒るとちょー怖いんだよ。言葉強くないし、入雲みたいに手が出るわけでもないのに、とにかく怖い。まあそんな感じかな〜。でもまあいい子だよ。普通にしてれば」
「そっか」
あゆちゃんの言っている印象は私も若干巻き込まれたのもあって結構想像しやすいけど。
なんだろう、皆から見たすみちゃんの印象って……。
「総じて面倒な子って感じ?」
「まあそんな感じだね。純蓮多分、元々一人でもいける子だと思うし、そこまで誰かといる事に固執しないから、ある種自我出せるんだと思うよ。あまり合わせるタイプじゃないし。だからその自我が時折面倒になることはあるかな。まあ、逆にわたしらは裏がなさそうだから付き合いやすくて好きだけどね」
「そっか。ありがとう」
「どいたまして〜。また一緒に出かけようね依吹ちゃん」
「うん。遊ぼうね」
あゆちゃんの後はすみちゃんと関わりのあった男子からも話を聞いたけど、こっちは割と、ニコニコしてて愛想良くて、可愛げがあって優しくて大人しい良い子だけどしっかりしてるって感じだった。
やっぱりあゆちゃん達といる方がすみちゃんは素を出せるのかな。そして私にはあまり素を出せていないんじゃないかって、今回話を聞いて思った。やっぱり、皆が見るすみちゃんと私が見るすみちゃんには差があって、そこには明確に好意の差がある。
私がすみちゃんを自信持って好きだと思えないのは、きっとこの好意の差で埋め尽くされたすみちゃんの素を見ていないからだろう。
白葉ちゃんの言った、すみちゃんから好意を除いた姿を想像できる、もしくは体感できれば、きっと私はすみちゃんへ抱いている気持ちがはっきりするんじゃないかって。そう思える。




