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少しの特別

 今日は日曜日。少し特別な日曜日。仲を取り戻して最初の日曜日だから、すみちゃんが家に来るか分からない。

 でも、来るものとして、今日も迎える準備を済ませて、部屋で自分のベッドに寝そべってスマホをいじる。


 しばらくしてチャイムが鳴り、下に降りると手土産を携えたすみちゃんがそこにいた。


「いらっしゃいすみちゃん」

「お邪魔します」


 特に私達の関係性に特段変化が起こったわけではない。それでも、今日の日曜日は少しだけいつものようにが難しかった。

 主にすみちゃんが。


「すみちゃん。そんな遠くにいないで、ここに座っていいんだよ」


 すみちゃんは部屋に入るや否や、部屋の隅に丸まるように座った。

 どこか座敷童子のような風格を感じるくらい。


「…………」


 すみちゃんは私の側に座り直すと、そっと耳元に口を近づけた。


「もっと、近づいてもいい?」

「いいよ」


 すみちゃんは膝を折って座っている私の足を伸ばし、向き合う形で私に跨って腰を下ろした。


「あの、ね。いぶが罪悪感のないキスならしていいって言ってたの覚えてる?」


 そんな事を言われて、少し勝手に時間をもらって思い返してみると、確かにそんな事を言った覚えがある。


「うん。覚えてる」


 そう言うと、すみちゃんはぱあっと、内に秘めていた喜びを露わにしたように、嬉しそうに頬を綻ばせていた。


「えっと、これはお家デートってことで、その、キスしてもいい?」


 だからすみちゃん、今日の服は過ごしやすさよりもオシャレに気を使っているのだと少し納得した。


「いいよ」


 そう言うと、すみちゃんは顔どころか全身を真っ赤にして、俯きながら静止した。

 でも、すみちゃんが重ねるように握る私の手は段々と熱を帯びて、内で激しく変化が起こっているのは明白だ。


「よ、喜びのあまりその、止まらなくなって襲っても大丈夫?」


 冗談を言うような雰囲気でない場に投下される冗談とは思えない口調の冗談のような言葉を、すみちゃんは焦っていたのかそのまま吐いていた。


「それは、具体的にはどこまで」


 すみちゃんは少しの間静止すると、私の手を離し、代わりに私の両肩を掴んだ。


「一応、下着の上下揃えてきたの……」


 あまりにも真剣な目で、なんて言えばいいのかよく分からなくて、なんて反応を返せばいいのかよく分からなくて、自然と苦笑いが生まれて、私も脳を通していない脊髄の言葉を口にしていた。


「すみちゃん、大胆になったね」


 すみちゃんはようやく現状に理解が追いついたのか、顔の赤さが引いたと思ったら今度は青くして、転ぶようにして私から退いた。


「ご、ごめんねいぶ! 違うの! その、変に舞い上がっちゃって。本当に違くて。ご、ごめんね。その、忘れて……」


 今にも帰りそうなすみちゃんの手を握って足を止めて、振り向いたその頬にキスをする。


「えっと、積極的なのは良いことだけど、そういうことは流石に付き合ってからにしようね」


 手を離して、いるも帰るも自由にしてあげようと思ったら、急に首に重みがかかり、口は塞がれ息は上手くできなかった。

 自分の吐いた息の代わりにすみちゃんの息が口に入って、ほんの少し舌同士が触れ合うと、すみちゃんは慌てて距離を取った。


「えっと、私の言ってるキスは、口にするものだから」


 そう言って、すみちゃんは逃げるように帰っていった。

 数十分後。バッグを置いてきたことに気づいたすみちゃんが取りにきた。少し気まずそうにしているすみちゃんにバッグを渡す時に、言えなかった一言を告げる。


「次からは、心の準備をさせてね」


 すみちゃんはバッグを奪い取るようにして、走って帰っていった。

 その後ろ姿はあまりにも転びそうで、思わず並走したくなった。

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