新たな日常
二年になると、基本的なグループコミュニティは変わらないけれど、新たに変化を迎えるところもある。
すみちゃん達のグループもその一つ。どうやら一人、新たに入ったらしい。
「依吹ちゃん、移動教室行こ」
「うん。行こう」
あゆちゃんと話しながら理科室に行っていると、背中に衝撃が走った。
後ろを振り向くと、新たにすみちゃん達と行動を共にし始めた宇河弥唯さんが、対して反省してない声でごめーんとだけ言った。
「ちょっと! ちゃんと謝りなよ!」
「え、いやでも今謝ったし。そんな大袈裟に捉えないでよ。そもそも邪魔なところにいたのが悪いと思うし」
宇河さんはそう言って、走っていってしまった。
「はぁ〜まじうざ。同じクラスとか最悪」
「宇河さんの事知ってるの?」
「うん。去年あいつと同じクラスの子が注意した方がいいって言ってたの。人に優劣つけて、自分は大したことないくせに下だと決めつけた人には強く当たって、上の人には媚びるらしい。たぶん依吹ちゃん、下だと思われてる。ほんとうざい」
「まあ、そういう子もいるだろうね。庇おうとしてくれてありがとねあゆちゃん」
あまり宇河さんみたいな人と関わったことないからどういう感じになるか分からないけど、多少なりともすみちゃんに変化を与えてくれるなら特に気にする必要ないかな。不快にするだけならちょっと考えものだけど。
「何か言われたりしたら頼ってくれていいからね」
「うん。すごく頼もしい。でも、それであゆちゃんが悪く言われるようになるのは嫌だな」
あゆちゃんは足を止めると、首を左右に高速で振った。
「どうしたの?」
「な、なんでもないよ。大丈夫だよ。わたしはたぶん、若干ステータス下がったように見られてるだろうけど、それでもわたしに強く出る勇気はないだろうし。それより早く理科室行こう」
あゆちゃんは私の背中を押して、早足で理科室に入る。
出席番号順で男女三人ずつの為、私は白葉ちゃんと宇河さんと同じ班になる。
男子はあまり知っている人がいないけど、五十嵐君が一緒だからちょっと安心。
「藍川さんさ〜、入雲と一緒で平気? せめて俺らの方に来る?」
実験道具を取りに行くと、後ろから五十嵐君に声をかけられた。
「ううん。大丈夫だよ。気を遣ってくれてありがとう」
「そ? じゃあいいけど。なんかあったら俺らの方に来な」
「本当に大丈夫だけど、何かあったら頼りにさせてもらうね」
「大いにしてくれ」
五十嵐君と話していると、ほんの少し女子からの視線が刺さった。
五十嵐君はかっこいいと評判らしく、女子からの人気が高いらしいのが原因だと思う。
道具を机に置いて準備している間、私と白葉ちゃんの間に会話はない。でも、それでも一緒に準備を進める。
宇河さんは、廉君。と、五十嵐君に構ってあまり進めていない。
男子に注意はされているけど、あまり気にしていない様子。むしろいじりの一つだと思っている節がある。
実験が終わって片付けをしていると、早く終わったあゆちゃんが私の元に来た。
「依吹ちゃんへいきー? いじめられてないー?」
白葉ちゃんの方を見て言った言葉を、白葉ちゃんは無視して片付けを進めていた。
相変わらず五十嵐君に構っている宇河さんに手伝うように強めに言う以外はいつも通りにしている。
「大丈夫だよ。側に来てくれてありがとう」
「……うん」
あゆちゃんはほんの少し俯き気味に微笑み、息を漏らすように言葉を吐いた。
「あ、片付け終わったみたいだね。じゃあ一緒に帰ろう依吹ちゃん」
あゆちゃんに引っ張られて歩き出す時に、ほんの少し白葉ちゃんの肩にぶつかったけど、お互い特に何も言わない。でも、ほんの少し白葉ちゃんは深く呼吸をした。
すみちゃんと会う目もすぐに逸らし、あゆちゃんの顔を覗き見て、なんてことない会話を始める。
これが私の新たな日常になった。




